なんと欲張りなモデルだろうか。多くの荷物とともに快適に長距離移動をこなし、いざとなればサーキットも走れる。さらにサイズ感もほど良い。そんな2台だが、両車の成り立ちはまったくと言っていいほど異なる。その似て非なる2台の味比べをしてみた。(MotorMagazine2024年10月号より再構成/文:大谷達也/写真:永元秀和)

試乗車解説:アウディRS 4 アバント

日本デビューは2019年1月。翌2020年10月には一部改良を受けて、アウディクワトロをほうふつさせるフロントグリル部のスリットのほか、前後バンパーやエアインレット、サイドシルなどを専用デザインとすることで、精悍さを向上させています。インテリアでは10.1インチタッチパネルモニターを採用した最新のMMIが搭載されました。

画像: RS 4のタイヤサイズは前後同じで275/30R20。トレッドはCLA45 Sと同様フロントがリアよりもやや広くなっている。

RS 4のタイヤサイズは前後同じで275/30R20。トレッドはCLA45 Sと同様フロントがリアよりもやや広くなっている。

搭載される2.9L V6 ツインターボは450ps/600Nmを発揮。最大トルクは1900rpmから得られる一方で、最高出力発生回転域は5700〜6700rpmとトップエンドまでしっかりパワーを乗せるタイプです。

セルフロッキングセンターデファレンシャルを搭載したクワトロシステム4WDは通常時に前40、後60の駆動伝達となり、駆動状況やドライブモード設定に応じて最大で前に70%、後に85%の駆動力を配分します。

ボディサイズは全長4780×全幅1865×全高1435mmとCLA45 Sよりもやや大きめです。

なお日本市場向けには、2023年9月に限定車として「RSコンペティション」が導入されています。欧州市場向けとしては2024年5月には、誕生25周年を記念した限定車「RS 4 アバントエディション25 イヤーズ」が設定されました。(ここまでWebモーターマガジン編集部)

アウディ RS 4 アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1865×1435mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2893cc
●最高出力:331kW(450ps)/5700-6700rpm
●最大トルク:600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:9.7km/L
●タイヤサイズ:275/30R20
●車両価格(税込):1316万円

セグメントは異なるものの、好敵手であることは確かだ

メルセデスAMG CLA45 S 4MATIC+シューティングブレーク(以下、CLA45 S)とアウディRS 4 アバント(以下、RS 4)の直接対決なんて、ひと昔前だったら思いつかなかった企画だろう。

画像: RS 4、CLA45 Sともに、走行中は両車ともに迫力あるサウンドを楽しめる。しかし、停車中にアイドリング状態が続くと控えめな音に変化する。排気効率を高める必要がないときは排気系に設けられたフラップを閉じて排気音を抑えているのだ。

RS 4、CLA45 Sともに、走行中は両車ともに迫力あるサウンドを楽しめる。しかし、停車中にアイドリング状態が続くと控えめな音に変化する。排気効率を高める必要がないときは排気系に設けられたフラップを閉じて排気音を抑えているのだ。

なにしろ、CLA45 Sはエンジンを横置きしたCセグメントなのに対し、RS 4はエンジン縦置きのDセグメントと、本来属しているクラスが大きく異なっているからだ。

けれども、最近はセグメント分け自体があいまいになってきて、CLA45 SとRS 4の場合も全長の違いは8.5cmに過ぎない。エンジンの最高出力にしてもRS 4の450ps に対してCLA45 Sは421ps と、十分に比肩しうる範囲内。

駆動方式はどちらも4WDだが、本来、後輪駆動主体のメルセデス(AMG)が横置きで、どちらかといえば前輪駆動主体のアウディが縦置きという「逆転現象」が起きているのも興味深いところ。さらにいえば、実際に乗り比べても好敵手という印象だったし、本来であれば格下(失礼!)のCLA45 Sがずいぶんと健闘したことも事実である。

そんな話を始める前に、本特集のテーマであるドイツワゴンについて、私の思うところを少し記しておきたい。皆さんご存知のとおり、ドイツ車といえば質実剛健な作りが魅力的だが、同じ価値観はステーションワゴンにも貫かれている。

スタイリングよりも機能性、実用性を重視し、やや武骨ともいえるデザインのボディにたっぷりとした容量のラゲッジスペースを確保。しかも、セダン譲りの安心感溢れる走りを実現しているというのが、私自身が抱く「ドイツワゴン像」である。

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