なんと欲張りなモデルだろうか。多くの荷物とともに快適に長距離移動をこなし、いざとなればサーキットも走れる。さらにサイズ感もほど良い。そんな2台だが、両車の成り立ちはまったくと言っていいほど異なる。その似て非なる2台の味比べをしてみた。(MotorMagazine2024年10月号より再構成/文:大谷達也/写真:永元秀和)

どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる

そうしたもともとの出自を考えると、CLA45 SもRS 4もスタイル優先の「クーペライクなワゴン」と位置づけられていると言えなくもない。

画像: 荷室開口部の広さは見るからにRS 4に軍配が。地上から下端も、CLAの方がずいぶん高い。後者はシルエット的にも「クーペ感」がより強いゆえなのだろう。

荷室開口部の広さは見るからにRS 4に軍配が。地上から下端も、CLAの方がずいぶん高い。後者はシルエット的にも「クーペ感」がより強いゆえなのだろう。

とりわけCLA45 Sは「シューティングブレーク」と銘打ってスタイリング重視のワゴンであることをはっきりと打ち出しているし、アウディがいうところのアバントには「スタイリッシュなワゴン」という意味が明確に込められている。

一方で、どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる点は特筆すべきだろう。

たとえばボディサイドを見たとき、CLA45 Sはルーフがなだからに下降するクーペライクなスタイリングに仕上げられているように思えるけれど、実際に下降しているのはウインドウグラフィックスだけで、ルーフそのものはある程度の高さを保ちながらテールゲートまで伸びきっている。

このため、後席のヘッドルームは日本人男性の平均身長を少し超える私が着座した状態で拳ひとつ半と、Cセグメントのハッチバックを大きく凌ぐ広さを実現している。

スタイリッシュなスタイリングと室内スペースの確保に関して優れた評価を確立しているRS 4も後席ヘッドルームは拳ひとつ分と、こちらも十分な広さ。荷室容量にしても、CLA45 S:505L、RS 4:495Lとワゴンの名に恥じないスペースを確保している(いずれも後席シートバックを立てた5名乗車仕様での状態)。

画像: CLA45 S。クーペスタイルのため開口部は小ぶりな印象。後席のヘッドレストが大きく、倒す際は前席の位置を気にする必要がある。

CLA45 S。クーペスタイルのため開口部は小ぶりな印象。後席のヘッドレストが大きく、倒す際は前席の位置を気にする必要がある。

画像: 開口幅が広くラゲッジスペースへのアクセスがしやすいRS 4。写真には写っていないが、別途セパレーションネットも備わる。

開口幅が広くラゲッジスペースへのアクセスがしやすいRS 4。写真には写っていないが、別途セパレーションネットも備わる。

ヘッドルーム、荷室容量ともにCLA45 SがRS 4を微妙に上回っているのは、前者がスペース効率の点で有利なエンジン横置きレイアウトを採用しているからだろう。

いずれにせよ、2台とも「デザイン上の格好良さ」が実用性を損なっていないわけで、その点でもドイツワゴンの良き伝統は受け継がれているというべきだ。

非なるようで通じる部分もあるCLA45 SとRS4

では、2台を走らせたときの印象はどうだったのか?

画像: RS 4は改良を経てインフォテインメント画面が拡大された。ベロア素材のハンドルは滑りにくく操作しやすい。シフトレバーは小ぶり。マニュアルモードの切り替えはレバーでもパドルでもできる。

RS 4は改良を経てインフォテインメント画面が拡大された。ベロア素材のハンドルは滑りにくく操作しやすい。シフトレバーは小ぶり。マニュアルモードの切り替えはレバーでもパドルでもできる。

まずはRS 4で一般道を走る。低速域でさえゴツゴツした印象を与えず、ソフトな当たりの乗り心地に仕上げられているのはアウディRSモデルの伝統というべきもの。私は個人的に同じ世代のA4アバント 35 TDI アドバンスドを所有しているが、当たりのソフトさだけでいえばRS4のコンフォートモードのほうが、はるかに快適なくらいだ。

もっとも、その代償としてフラット感が薄いのはやむを得ないところ。とりわけ高速道路ではピッチング方向の動きがわずらわしく感じられるほどになる。ただし、そんなときはオートモードに切り替えれば、タイヤの当たりをソフトなレベルに保ったまま、アウディらしい快適なフラットライドを味わえるようになる。

こうした傾向は、ワインディングロードではさらに顕著になるようで、積極的なコーナリングを楽しもうとすると、オートモードでもピッチングは過大で、ダイナミックモードを選択したくなる。

こう書くと、なんだか消去法的にダイナミックモードを選択しているように思えるかもしれないが、ワインディングロードでの走りは目が覚めるほどに素晴らしい。操舵初期のレスポンスが鋭すぎず、ドライバーの自然な感覚にマッチした反応を示してくれるのは、いかにもアウディらしいところ。

しかも、わだちなどで路面が荒れていても進路は乱されないため、ハンドルを1度切ったら、その舵角を保ったままでコーナーをクリアできる理想的なハンドリングを示してくれる。ロールが小さく抑えられていて、ロードホールディング性能がバツグンに優れていることを含め、この種のスポーツモデルとしては120点を献上したくなるほどの完成度である。

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