船外機を市販してきた。そのなかでも最新のフラッグシップであるV8エンジンの船外機を体感してきた。(モーターマガジン2025年月3号より)
VTECを採用する4ストロークV8エンジン
全世界の船外機市場規模は約90万台(2023年のデータ)で、最大市場は北米の37.7万台だ。次は欧州で14.5万台、そして中南米の9.3万台、アジアの8万台と続く。エンジン別では、4ストロークが全体の約80%を占め、北米と欧州では約99%にもなる。販売シェアは、北米と欧州で全体の58%を占めているため、そうした大市場が求める船外機を投入するのは、メーカーとして当然の流れだろう。そこでホンダが投入したのがV8エンジンの船外機「BF350」である。
あらためて60年を超えるホンダのマリン事業を振り返ってみたい。始まりは1964年である。
水上を走るもの、水を汚すべからず」という創業者本田宗一郎の信念のもと、環境にやさしい4ストロークエンジンの船外機「GB30」を発売した。1990年には最大出力45psの「BF45」、1992年にはもっとも厳しい欧州の排出ガス規制「ボーデン湖規制」に適合、1998年には独自技術PGM-FⅠの導入など、4ストロークにこだわり続け、現在は、全世界で2〜350psまで25モデルを揃え、累計生産台数は219万台を記録する。
さて、今回試乗した「BF350」は、新たに専用設計で開発されたホンダ初の市販V8エンジンである。最高出力は350ps、総排気量4952ccの4ストロークV8エンジンは、ボア89.0mm、ストローク99.5mmでホンダらしくVTECを採用する。
このエンジンの特徴は、全幅を狭くするためにVバンク角を90度から60度にしている点だ。大型船外機の需要は多機掛けが一般的で、船の幅は限られるため横幅を狭くすることが重要となる。実際に「BF350」の全幅は、バンク角90度の800mmに対して650mmと150mmコンパクト化された。