EV業界全体に新たなスタンダードの構築を目指す
ICE(内燃機関)の自動車と電気自動車(BEV)にはさまざまな違いがあるが、とくに重要視されがちなのは「ICEのクルマなら3分くらいで燃料を満タンにできるけど、BEVは30分くらいかかってしまう・・・」という点。BYDでは、電気自動車の普及には充電速度を大幅に短縮することが必要と考えていた。

急速充電でも、エンジン車の燃料補給ほどの短時間でフルに充電はできない…(写真はイメージです)。
そこで今回BYDが発表したのが、BEVの充電速度をエンジン車の給油速度と同等にする「油電同速」の実現に向けた、革新的な新プラットフォーム「スーパーeプラットフォーム(Super e-Platform)」だ。このプラットフォームは、1秒あたり2kmの航続距離に相当する超高速充電を行う「フラッシュ充電」を実現し、5分間で最大400km分の充電を可能とすることで、EV充電に関するこれまでの課題を大幅に改善するという。
このスーパーeプラットフォームは、世界初の量産乗用車向け「全域キロボルト高電圧アーキテクチャ」を採用している。バッテリー、モーター、電源システムなど、車両全体で最大1000V級の高電圧に対応し、超高速充電が可能となる。

スーパーeプラットフォームのイメージ。
そして新たに導入した「フラッシュチャージバッテリー」は、正極から負極まで超高速イオンチャネルを備え、最大1000Aの充電電流と10Cの充電レートを実現した。これにより、従来のEVバッテリーよりも大幅に高速な充電を可能にした。
さらに、BYDは業界初となる量産型自動車用の「SiCパワーチップ」を開発した。これにより、最大1500Vの高電圧環境下で効率的な電力制御が可能となった。量産車としては最高水準の1メガワット(1000kW)の充電出力を達成し、1秒あたり2kmの航続距離に相当する充電を実現している。
しかも、スーパーeプラットフォームに搭載されるモーターは単体で最大580kWの出力を発揮し、最高回転数30000rpmを実現。これにより、中国市場向けの「HAN L(ハン エル)」と「TANG L(タン エル)」では、最高速度300km/h超を達成している。

スーパーeプラットフォームを採用した、中国市場向けの「ハン L」。
BYDは、このスーパーeプラットフォームの性能を最大限に活かすため、業界初となる「フル液冷メガワット級フラッシュ充電ターミナルシステム」を開発した。このシステムは、最大1360kWの出力を可能にし、既存の充電インフラをアップグレード可能な「デュアルガン充電」技術を採用している。さらに、BYDは中国全土に4000ヵ所以上のメガワット級フラッシュ充電ステーションを展開する計画がある。これにより、EVユーザーがガソリン車並みの利便性を享受できる超高速充電環境を整備し、充電に対する不安を解消することを目指す。
なお、このスーパーeプラットフォームは中国国内販売モデルに搭載予定で、現時点では輸出仕様には適用されないが、今後のBYDの展開が注目される。

スーパーeプラットフォームを採用した、中国市場向けの「タン L」。