完全電動の専用オープンホイールマシンで速さと効率、戦略を競う新世代のモータースポーツ「フォーミュラE」は、2025年で11年目を迎えた。今や電気自動車レースという枠を超え、都市・テクノロジー・カルチャーを巻き込んだ、次世代の社会装置として再定義されつつある。

都市と文化を取り込むシリーズへ

2025年5月、フォーミュラEは東京で2度目となるE-Prixを開催。今回は初のダブルヘッダー形式で、さらに注目を集めている。舞台は東京ビッグサイト周辺。日本有数のコンベンションセンターの傍らで行われるレースは、まさに都市型モータースポーツの象徴だ。

画像: 2014年の北京でスタートを切った同シリーズ。初期はバッテリーのサイズや容量など発展途上であり、1レースでマシンを乗り換える必要があった。

2014年の北京でスタートを切った同シリーズ。初期はバッテリーのサイズや容量など発展途上であり、1レースでマシンを乗り換える必要があった。

日常生活圏の中で自然にレースが視界に入るという仕組みは、従来のモータースポーツでは実現し得なかった価値であり、特にモータースポーツ後進国である日本においては画期的と言える。

また、都市レースのメリットはアクセスの良さだけではない。電動モビリティが市民生活と共存可能であること、そしてエンターテインメントが都市の中で新たな意味を持つことを示す手段でもある。

事実、東京E-Prixでは地元企業や自治体との連携により、交通施策、EV導入促進、地域活性化など、レースがきっかけとなる社会的波及効果が数多く生まれている。

競技面では、地元勢の活躍にも期待がかかる。日産はフルワークス体制で参戦中であり、エースであるオリバー・ローランドは、現在ドライバーズランキングで首位に立っている。昨年2位に終わった日産とローランドにとって、東京E-Prixは最重要レースと言えるだろう。

画像: 昨年2位と優勝まであと一歩だった日産のローランド。今季はランキング首位で母国凱旋を果たす。

昨年2位と優勝まであと一歩だった日産のローランド。今季はランキング首位で母国凱旋を果たす。

レースそのものが持続可能なイベントを象徴する

また、今季からは名門ローラとヤマハがタッグを組んで参戦。さらに、俳優イドリス・エルバが支援する新興チーム「CUPRA KIRO」もデビューを果たすなど、企業や著名人がフォーミュラEの価値に注目している。もはや単なる自動車レースではなく、グローバルビジネスの接点でもあるのだ。

画像: 東京E-Prix初代ウィナーはマキシミリアン・ギュンター。表彰台までの動線では、多くの日本のファンがトップ3の選手を拍手で迎えた。

東京E-Prix初代ウィナーはマキシミリアン・ギュンター。表彰台までの動線では、多くの日本のファンがトップ3の選手を拍手で迎えた。

この背景には、フォーミュラEが環境面でも最前線を走っているという事実があるかもしれない。全チームがカーボントラッキングとオフセットを実施し、カーボンニュートラルを達成。バッテリーや車体のリサイクルにも積極的に取り組み、レースそのものが持続可能なイベントを象徴する存在となっている。

かつて「実験的カテゴリー」と見なされていたフォーミュラEは、「考える速さ」と「都市と共生する優しさ」を実現した、唯一無二のカテゴリーとなった。

テクノロジーと都市、人間の知性と文化が交差するレースの未来。音も煙も出さず、観る者の心を震わせる。それが、フォーミュラEだ。

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