2011年11月、フルラインナップのスーパーカーメーカーを目指し、その第一弾として開発されたマクラーレン MP4-12Cの国際試乗会が、イギリス・ロンドンン近郊の特設クローズドコースで行われた。2010年3月に発表されたMP4-12Cは、生産開始前から世界的に大きな反響を呼び、年間生産予定台数を大きく上回るオーダーが入るなど大人気となっていた。日本でも注目を集めていた新しいスーパーカーはどんな走りを見せたのか。今回はイギリスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年1月号より)

100%ピュアなマクラーレンオリジナルモデル

マクラーレンがこれまで手掛けたロードカーには、このMP4−12C以外にも「F1」や「SLRマクラーレン」といった事例がある。だが、それらと決定的に異なるのは、今度は「すべてをマクラーレンが白紙から仕上げた、他メーカーや他モデルから流用されたコンポーネンツが一切存在しない、100%ピュアなマクラーレンモデル」という点であるという。

高速での急制動時に大きく立ち上がり減速効果を飛躍的にアップさせるボディ後端のエアブレーキを含め、究極の空力性能を追ったエクステリアのデザインや1997年のF1マシン「MP4−12C」からフィードバックされたトルクベクトリングメカニズムのブレーキステア、そしていわゆるハイドロサスペンション構造を持つプロアクティブシャシーコントロールの採用などは、いずれも「F1マシン直伝のテクノロジー」と表現して良いもの。

いやそれ以前にボディの骨格素材がカーボンファイバー製であるという時点で、このモデルがすでにそうした素材を30年にわたり採用し続けているF1マシン直系のモデルであることを、色濃く人々に印象づける。

ちなみに、1981年にライバルに先駆けてF1マシンにカーボンモノコックボディを採用し、この素材を用いたボディに関してパイオニアを自負するマクラーレンでは、このモデルでそうしたボディの製法を改めて刷新。独自生産した試作品を参考にオーストリアのカーボテック社が生産性向上に取り組むという手順を踏んだ結果、かつての「F1」用では3000時間、「SLRマクラーレン」用でもようやくその1/10程度まで短縮させるのがやっとであったというロードカー1台当たりのボディ生産時間は、わずか4時間へと劇的に短縮した。

画像: 95km/h以上でのハードな制動時に動作する「エアブレーキ」。動作の最初はまず油圧ピストンで32度まで起き上がり、その後は流れる空気がウイング下端に当たる圧力そのもので最大角の69度まで起き上がる。制動時の荷重移動で不安定となりやすいリアを、そのダウンフォースで安定させる効果も高い。

95km/h以上でのハードな制動時に動作する「エアブレーキ」。動作の最初はまず油圧ピストンで32度まで起き上がり、その後は流れる空気がウイング下端に当たる圧力そのもので最大角の69度まで起き上がる。制動時の荷重移動で不安定となりやすいリアを、そのダウンフォースで安定させる効果も高い。

雨中で乗りやすさを実感、快適性の高さも感動的

こうしたカーボンモノコックの量産化体制構築があって初めて、「モデルレンジ全体で2010年代半ばに年間4000台の製造を見込む」というマクラーレンの意欲的な目標は成立していることになる。MP4−12Cは、このブランドを冠したロードカーの新たなる幕開けとなる1台でもあるのだ。

その「ピュアマクラーレン」となる初のロードカーであるMP4−12Cを、本拠地であるロンドン近郊を訪れてテストドライブしようというその日は、残念ながらあいにくの雨にたたられた。600psを発する3.8Lツインターボエンジンを背中に搭載したスーパースポーツカーのドライブとなれば誰だってドライ路面でそのパフォーマンスを味わってみたいのが当然。しかもその舞台として用意されていたのは、ロンドン郊外の一般道と共に、英国BBCが制作する人気番組「Top Gear」のロケに用いられている飛行場の滑走路と誘導路を用いての特設クローズドコースだったのだ。

「せっかくのクローズドコースでも、これではとても本領を味わうことは叶わないな……」という当初の落胆は、しかし実際に走り始めると、意外なまでの「乗りやすさ」に対する感嘆へと変わっていった。

確かにアクセルペダルを深く踏み込むと、さしもの大きな荷重が掛かったファットなタイヤもその巨大なトルクを路面に伝えきれず、隙をみては空転を起こそうとする気配が伝わってくる。だが、たとえそうした挙動がコーナリング中に起こってテールアウトの姿勢に陥っても、その修正は想像よりもはるかに楽。怒涛のパワーを備えたミッドシップモデルでありつつも、「その場でスピン」といった危なげな雰囲気はまったくなく、アクセルワークとステアリング操作によってたちどころの修正が決まる。

その裏側には、多少の姿勢の乱れは許しつつも、「イザ」というシーンではしっかりサポートを行ってくれるスタビリティコントロール機能が付いているという安心感も当然あるが、決して簡単にはトリッキーな挙動に陥らないマナーの良さにはいたく感心させられた。

それと同時に、一般道に乗り出して感じられた「フレンドリーさ」も、予想を覆された部分だ。ルームミラーも含めての全方位への視界は、想像していたものよりもはるかに優れるし、何よりも荒れた路面でも懸命にフラットな姿勢をキープし続けようとするサスペンションの働きと〝望外〟とも言える快適性の高さには、感心を通り越して感動させられるばかりだったのだ。

確かに今回、ドライ路面での限界挙動に迫ることはできなかった。だがその一方で、このような悪条件の中で示された、スーパースポーツカーとしては例外的なまでのドライバーフレンドリーな懐の深い走りは、またマクラーレンという当代一流のF1コンストラクターの作品だからこそ成せる業であるのだろうと、そうも深く印象に刻まれる結果となったのだ。(文:河村康彦)

画像: 中央にアナログの回転計とデジタルの速度計、左にインフォメーション、右にドライブモードのディスプレイを配置。重量わずか75kgのカーボンファイバーモノコックにアルミフレームやサスペンションが取り付けられ、シートはかなりセンター寄り。

中央にアナログの回転計とデジタルの速度計、左にインフォメーション、右にドライブモードのディスプレイを配置。重量わずか75kgのカーボンファイバーモノコックにアルミフレームやサスペンションが取り付けられ、シートはかなりセンター寄り。

マクラーレン MP4-12C 主要諸元

●全長×全幅×全高:4507×1909×1199mm 
●ホイールベース:2670mm 
●車両重量:1509kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:3799cc
●最高出力:441kW(600ps)/7000rpm
●最大トルク:600Nm(61.2kgm)/3000-7000rpm 
●トランスミッション:7速DCT(SSG)
●駆動方式:MR
●最高速: 330km/h
●0→100km/h加速: 3.3秒
※EU準拠

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