2011年10月、BMW AGは3シリーズのフルモデルチェンジを発表し、2012年2月より世界各国で順次販売を開始するとアナウンスした。日本導入が迫る中、Motor Magazine誌はスペイン・バルセロナで行われた国際試乗会に参加している。初代E21から数えて6世代目となる3シリーズ(F30)はどう変わったのか。3週にわたって、その国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年2月号より)

主力は4気筒へ、「想定外」だったエンジンバリエーション

7シリーズに5シリーズ、そして1シリーズと、ここ数年来にデビューを果たしたBMWの最新セダン。そのいずれもそうであったのと同様に、基本的には「想定内」の比較的「コンサバ」なルックスで登場した。しかし、逆に「想定外」だったのはエンジンバリエーション。これまでのBMW車には当然のように搭載された直6ユニットは、現時点ではトップグレードの『335i』にしか用意されていないのだ。

「罰金つきCO2排出量規制」の施行を目前としたヨーロッパを主戦場とする各モデルが、今やなりふり構わぬ燃費向上策に乗り出していることは承知しているし、そのためには「1気筒当たり400〜600ccの排気量を持つエンジンを搭載」が極めて効果的という話題も、当然耳にしている。なかでも、『エフィシェントダイナミクス』を謳うBMWが6気筒エンジンを、そんな方程式に則るかのように3Lユニットのみとしたのは、効率重視の姿勢からは「まさに正論」なのだろう。ガソリンユニットは3Lと2L、ディーゼルは2Lのみというラインナップを発表した新型3シリーズが、キャリーオーバーの3Lガソリンターボ以外はすべて4気筒ターボとしたのは、ある面「正義の選択」でもあろうというわけだ。

しかし、そうした時代の要請への回答を納得し、何よりも実際の動力性能面が絶対的にもフィーリング的にも何の不満もなくハイレベルなものであることが確認できた今の時点でも、正直なところ「ちょっと寂しいな」と思えてしまうのがこの直6エンジンバリエーションの大幅整理だ。

それは、これまでこのブランドが、フロントエンジン/リアドライブというレイアウトや50:50という前後重量配分とともに「直列6気筒」というすっかり少数派となったデザインの心臓を、「これぞBMW車らしさの一因」として自ら強力にプロモーションをしてきたことにも由来する。BMW車=直6エンジンを搭載というイメージがこれまで余りに強く打ち出されてきたからこそ、そうした動きには実際の「効用」以上に一抹の寂しさを感じてしまうというわけだ。

現実にも、前述のようにダウンサイズされた直4ターボエンジンの実力がいかに素晴らしいとはいえども、フィーリング面ではやはりそれなりの違いは否定できない。新エンジンのそれが雑で安っぽいといった印象はコレっぽっちもないのは事実だが、それでもより緻密な回転フィールと独特のサウンドを演じていた自然吸気直6エンジンのテイストを懐かしむ人は、(自分以外にも)間違いなく存在すると思う。

画像: 試乗はカタロニアサーキットでも行われたが、タイヤのグリップを失う領域まで攻めても腰砕けすることなく、安定していてコントロールしやすかった。

試乗はカタロニアサーキットでも行われたが、タイヤのグリップを失う領域まで攻めても腰砕けすることなく、安定していてコントロールしやすかった。

Cクラスと双璧を成す素晴らしい仕上がり

そしてもう一点、今度の3シリーズにちょっと残念な思いを感じたとすれば、それはかつての3シリーズで得ることができた絶妙なる「小ささ感」が、最新モデルからはついにほとんど潰えてしまったことだ。それはもはやスペックを見ても当然と納得するしかなく、ホイールベースが2.8mをオーバー(!)し、最小回転半径も5.5mを超えた今度のモデルでは、ボディサイズも全長が15cmほど短い以外は全幅や全高がE39型4代目5シリーズに迫るほどにまで成長しているのだ。

半ばちょっと無理やりにネガティブと思えるポイントを拾い出してはみたものの、今度の3シリーズ=F30はプレミアムコンパクトセダンとして、やはりメルセデス・ベンツCクラスと世界の双璧を成す、素晴らしい仕上がりの持ち主だと納得せざるを得なかった。

常に滑らかかつ上質なフィーリングを味わわせてくれるステアリングは、やはり「FRレイアウトの賜物」と思えるものだし、4輪が均等に仕事をこなすフットワークや、どこまでも自然で軽快なハンドリングの感覚は、何ともBMW車らしい。

願わくば、1シリーズクーペを「カッコいい4ドアセダン」へと進化させた、よりコンパクトで5ナンバーサイズ枠に収まるような“2シリーズ”が欲しいと言ったらそれは贅沢というものか? あ、偶数ネームの4ドアは、BMW車には有り得ないのか……。(文:河村康彦)

画像: インパネには6シリーズ同様の大型ディスプレイを採用。ATはすべて8速。

インパネには6シリーズ同様の大型ディスプレイを採用。ATはすべて8速。

BMW 328i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4624×1811×1429mm
●ホイールベース:2810mm 
●車両重量:1530kg〈1505kg〉
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:180kW(245ps)/5000-6500rpm
●最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1250-4800rpm  
●トランスミッション:8速AT〈6速MT〉
●駆動方式:FR●最高速:250km/h〈250km/h〉
●0→100km/h加速:6.1秒〈5.9秒〉
※EU準拠、〈 〉内は6速MT

BMW 320d 主要諸元

●全長×全幅×全高:4624×1811×1429mm
●ホイールベース:2810mm 
●車両重量:1505kg〈1495kg〉
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:1995cc
●最高出力:135kW(184ps)/4000rpm
●最大トルク:380Nm(38.8kgm)/1750-2750rpm  
●トランスミッション:8速AT〈6速MT〉
●駆動方式:FR
●最高速:230km/h〈235km/h〉
●0→100km/h加速:7.6秒〈7.5秒〉
※EU準拠、〈 〉内は6速MT

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