ラリー開始前からの悪天候で路面は泥だらけ
これまで何度も惜しいところで優勝を逃してきた勝田に、ついに気まぐれな勝利の女神が微笑んだ。
ここ数年で最も厳しいコンディションとなったサファリで、まず主導権を握ったのはオリバー・ソルベルグ(トヨタ)だった。木曜夕刻のSS1で2番手スタートという好位置を活かし、視界不良に悩まされたチームメイトのエルフィン・エバンスに30秒、悪化した路面を走ったセバスチャン・オジエに1分9秒の差をつける好スタート。勝田貴元はスタート早々にインターコムのトラブルでペースノートが機能しない状況で1分15秒差の4番手と出遅れた。
同様のコンディションとなった金曜日、追い上げたい勝田だったが、SS7でダブルパンクが発生。5番手に後退したばかりか、その後の3ステージをスペアタイヤなしで走らざるを得ない苦境に陥ってしまう。続くSS8では首位を快走していたソルベルグも右リアタイヤをパンク。徐々に遅れを取り戻していたオジェが1秒差の2番手に迫り、エバンスが5.7秒差で続く展開となる。勝田はこの日最後のSS9でコースオフも喫し、7番手まで後退してしまった。

上位を争うドライバーにアクシデントが続出する中、勝田もデイ2金曜日には、2本のタイヤがパンクしたほか、コースオフも喫するなどのトラブルに見舞われた。
サバイバル戦を制し、勝田がついに悲願達成
だが、本当の波乱は土曜日に待っていた。まずオープニングのSS11でオジェがパンクを喫して5番手に後退。そして午前中最後のSS13ではエバンスがリアサスペンションを壊してデイリタイアとなる。
このステージではソルベルグもワイパー不調で大きくタイムロス、ヒョンデ勢もトラブルを抱えており、ステージフィニッシュ時点で、首位はソルベルグ、2番手には42.6秒差でオジェが浮上し、勝田は1分33秒差の3番手に復活してきた。
そしてこの直後、サービスに向かうロードセクションで信じがたいアクシデントが起きる。オジェのGRヤリスが、オルタネーター内に泥が入り込んだことが原因でストップ。さらにソルベルグも同様のトラブルとギアボックストラブルを併発して動けなくなり、ともにデイリタイアとなったのだ。
これで首位には勝田が浮上。2番手に浮上したフルモーとの差は1分以上開いており、残るステージは初優勝を目指して、リスクを避ける走りに徹することになる。
4つのステージを残した最終日。勝田は午前中の3ステージをそれぞれ7番手、9番手、8番手で走破。フルモーとの差は42秒に縮まったが、「ただ安全に走っているだけ」と焦る気配はない。
そして迎えた運命の最終ステージでも勝田は冷静だった。刻んだタイムはベスト24秒遅れの9番手。だが、どうしても開かなかった扉の向こう側に立つには、これで十分だった。最終的タイム差は27.4秒で、勝田は1992年の篠塚建次郎以来となる日本人ふたり目のWRCウィナーとなった。
ついに悲願を達成した勝田は「この瞬間まで本当にたくさんの厳しいことがありました。でもコドライバーのアーロン、チーム、家族が支えてくれました。(今年から個人的なアドバイザーを務める)オィット(タナック)さんは僕よりも早く起きて、いろんなメッセージをくれました。感謝です。(豊田)章男さん、ついにやりました!」と涙ながらに関係者たちに感謝の言葉を述べた。

優勝した勝田貴元(右)とコドライバーのアーロン・ジョンストン。2025年には最終ステージでロールオーバーしていたが、今年はその因縁のステージで優勝を決めた。
次戦第4戦クロアチア・ラリーは、4月9~12日、同国西部のチャヴレを起点としたターマック路面で開催される。
2026年 WRC第3戦サファリ・ラリー・ケニア リザルト
2026年 WRC第3戦サファリ・ラリー・ケニア 結果
1位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)3h16m05.6s
2位:A.フルモー(ヒョンデ i20N ラリー1)+27.4s
3位:S.パヤリ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+4m26.1s
4位:E.ラッピ(ヒョンデ i20N ラリー1)+6m07.3s
5位:ヴィルヴェス(シュコダ ファビアRS ラリー2)+11m38.7s
6位:G.グリーンスミス(トヨタ GRヤリス ラリー2)+12m09.0s
7位:F.ザルディバール(シュコダ ファビアRS ラリー2)+12m20.0s
8位:A.ミケルセン(シュコダ ファビアRS ラリー2)+12m30.7s
9位:D.ドミンゲス(トヨタ GRヤリス ラリー2)+13m28.4s
10位:O.ソルベルグ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+16m44.5s
2026年 WRC第3戦サファリ・ラリー・ケニア スーパーサンデー 結果
1位:O.ソルベルグ(トヨタ GRヤリス ラリー1E.エバンス)33m28.9s
2位:S.オジェ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+3.6s
3位:S.パヤリ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+17.5s
4位:E.ラッピ(ヒョンデ i20N ラリー1)+26.8s
5位:A.フルモー(ヒョンデ i20N ラリー1)+38.4s
2026年 WRCドライバーズランキング(第3戦終了時)
1位:E.エバンス(トヨタ)66
2位:O.ソルベルグ(トヨタ)58
3位:勝田貴元(トヨタ)55
4位:A.フルモー(ヒョンデ)47
5位:S.パヤリ(トヨタ)32
6位:S.オジェ(トヨタ)26
7位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ)25
2026年 WRCマニュファクチャラーズランキング(第3戦終了時)
1位:トヨタ 157
2位:ヒョンデ 114
3位:Mスポーツ・フォード 23




