だが、決して最速のマシンという訳ではない。そのスタイリング、ハンドリング、エキゾーストノート。そのどこに惹かれているのだろうか。どうしてアルファを駆るのだろうか?(MotorMagazine 2025年9月号より。文:嶋田智之/写真:永元秀和、佐藤正巳、ステランティス)
速さよりドライビングプレジャーを求めて
──なぜか。アルファロメオは、そんなところを目指してはいないからだ。そんな刹那的なものは、おそらく眼中にない。ならば何を見据えてクルマづくりをしているのか? 走るたびにドライバーの心に刻まれ、しかも恒久的に輝きを放ち続ける「ドライビングプレジャーというもの。それに尽きると思うのだ。そこそこあるいはそこそこ以上の「速い」も大切ではあるけれど、それを形づくるための要素のひとつに過ぎない。
2000年代半ば過ぎ頃までは、内燃エンジンのフィールやサウンドといった味の濃さで、ドライバーをむせび泣かせてきた。21世紀を前にして環境問題などの諸々から個性のあるエンジンが作りにくくなると、ハンドリングを徹底的に磨き抜くことでドライバーを歓ばせた。8Cなどの特別な例外を除けば、御家事情でとっくに前輪駆動のみになっていたが、ミト、ジュリエッタ、さらにトナーレMHEVなど、世界中の前輪駆動の中でピカイチといえる曲がる楽しさと気持ち良さを現実のものとした。21世紀に入ってからのグループ再編、ブランド再建の流れの中で、それをチャンスととらえ、ほぼ四半世紀ぶりに後輪駆動を復活させた。長いブランクの後の再参入にもかかわらず、2代目ジュリアはクラスを超えて最高! と評される操舵の気持ち良さと曲がりっぷりの楽しさで、ステアリングホイールを握る者の心を鷲づかみにし続けている。

現行フラッグシップモデルのジュリア・クアドリフォリオ。2.9L V6ツインターボは510psを発揮し、後輪を駆動する。アルファらしい気持ちいいドライビングが楽しめる。
そして今、本格的な電動化の時代を迎え、ジュニアの乗り味からはモーター駆動ならではの楽しさや気持ち良さを追求しようという強い意志がひしひしと伝わってくる。アルファロメオの歴史は、「快」の追求の繰り返しだったのだ。
時代は変わっても軸足にブレはなく、すべてのアルファロメオのモデルにそのフィロソフィのようなものがたっぷり注ぎ込まれている。それこそがアルファロメオのレゾンデートル。意識しているにせよ、無意識であるにせよ、アルファロメオを駆る人はそのことを知っている。だからどこかへ行こうとキーを手にした瞬間、心が「日常の中の非日常」へと向かい、歓びに胸が騒ぐ。そんなブランド、ほかにあるだろうか?

ジュリアGTAmはジュリア・クアドリフォリオをベースに大幅な軽量化を行いエンジン出力も高められている。サーキット走行の特性を高めつつ、公道も走れるモデルだ。



