JP4車両規定の下、BRZベースの新型ラリーカーを開発
全日本ラリー選手権の最高峰であるJN-1クラスは、トヨタGRヤリス ラリー2やシュコダ ファビアRS ラリー2など世界自動車連盟(FIA)ラリー2規定の競技専用車両のほか、日本自動車連盟(JAF)公認のJP4車両、各国の統括団体(ASN)の公認車両が参戦できるクラス。
それぞれの車両が同等に競技できるよう規定されたクラスだが、レーシングカーとしてコンパクトな設計で開発されたラリー2車両は想定以上に高いポテンシャルを持っていることから、当初から全日本ラリー選手権JN-1クラスの上位を独占する形となっている。
そんな中、ラリー2車両を持たないSUBARUはこれまで、市販車をベースとするJP4車両「WRX S4 JP4」で戦ってきた。しかし、狭くツイスティなステージでは大きくて重いボディがハンデとなり、それを挽回するべくパワーを絞り出したことでトラブルを発生させることもあった。
そこで新たに開発されたのが、より軽量コンパクトで重心の低いBRZベースの新型ラリーカー「SUBARU Boxer Rally spec.Z」。厳正な車両規定のもと、徹底的な軽量化、理想的な前後重量配分、低ヨー慣性モーメントを追求し、エンジンはFA24 DS4Sをベースにターボ化、直結式のAWD機構を組み込むなど、市販モデルとは大きく異なる、大幅なアップデートが加えられた。
この車両の正式な開発は昨年2025年11月にスタート、わずか6カ月あまりで実戦デビューとなったわけだが、これには「革新的で競争力のある商品を開発する」ために従来の組織を統合して商品革新本部を新設し、SUBARUが一丸となって開発を進められたことが大きかったという。

GRヤリス ラリー2と較べれば、まだ大きめのボディサイズとなるが、全高と重心の低さが特長。「WRX S4 JP4」とはまったく異なる俊敏な走りを見せるという。

距離の長いSSでは、終盤でパワーダウンの症状も見られたという。エンジンはレスポンスも含めて改善の余地がありそう。
早くもラリー2車両に迫るポテンシャルを披露
こうして迎えたデビュー戦「全日本ラリー選手権第3戦 YUHO Rally 飛鳥 supported by トヨタユナイテッド奈良」では、SUBARUがチーム新井をサポートする形で参戦、SUBARU Boxer Rally spec.Z(新井敏弘/安藤裕一)はいくつかのトラブルに見舞われながら6位でフィニッシュした。
はじめてとなる実戦で、競技スピードを保ちつつ本格的な林道を長距離走行することで、テストで把握しきれなかった要素や症状を経験。ドライブシャフトの破損、ターボチャージャーのエア抜け、パンク、熱ダレが原因と思われるパワーダウンやペースダウンなど、想定外のトラブルがさまざまあったが最後まで走りきった。こうしたトラブルを経験し、またこれらを解決・強化していくことで、マシンもチームも鍛えられていく。
優勝争いとはいかなかったが、トラブルのなかった区間でラリー2車両に迫るタイムをマーク。SUBARUとチーム新井の連携もよく、メカニックが迅速にトラブル対応することで走り切ることができたのも大きな収穫だった。

はじめての実戦でさまざまなことが起きたが、そうしたトラブルがマシンとチームを鍛え、育てていく。
SUBARU Boxer Rally spec.Zのデビュー戦を6位で走り切った新井は「本格的な林道を長い距離走ったことで色々なデータを持ち帰ることができ、クルマの長所や課題がわかりました。やはり、実際に競技で走ってみないとわからないことがたくさんあります。トラブルもありましたが、ポテンシャルを感じられた点はすごくポジティブです。これからSUBARUと協力しながらさまざまな対策を施してペースを上げていきます。SUBARUの体制が変更となり、ラリーでの経験やデータがこれまで以上のスピード感で車両開発に反映されるはずです」と手応えを感じているようだった。

SUBARU Boxer Rally spec.Zをドライブする新井敏弘。次戦「久万高原ラリー」までわずか1カ月。どこまでマシンを進化させるか注目される。
なお「ラリー飛鳥」は、初日全SSでベストタイムを並べた新井大輝(トヨタGRヤリス・ラリー2)がTC1(コントロールゾーン内)で作業を行ったため3分間のペナルティを受けて優勝争いから脱落。その後、勝田範彦(GRヤリス ラリー2)と鎌田卓麻(ファビア ラリー2)の戦いとなったが、終盤、勝田が鎌田を突き放してそのまま逃げ切った。
次戦全日本ラリー選手権第4戦は、2026年6月19日〜21日、愛媛県久万高原町を拠点とした「久万高原ラリー」が開催される。標高1400mを越える尾根を走るステージや高速・低速区間が複雑に絡み合うターマックの林道を舞台に行われる。
2026年 全日本ラリー選手権第3戦「YUHO Rally 飛鳥 supported by トヨタユナイテッド奈良」結果
1位:2 勝田範彦(トヨタ GRヤリス ラリー2)59m18.0s
2位:3 鎌田卓麻(シュコダ ファビア ラリー2)+18.0s
3位:4 奴田原文雄(トヨタ GRヤリス ラリー2)+46.0s
4位:6 福田修(シュコダ ファビア ラリー2)+1m04.5s
5位:12 山田啓介(トヨタ GRヤリス)+2m47.9s
6位:5 新井敏弘(SUBARU Boxer Rally spec.Z)+2m49.4s
SUBARU Boxer Rally spec.Z(ボクサー ラリー スペックZ)主要諸元
●全長×全幅×全高:4265×1820×1300mm
●ホイールベース:2575mm
●エンジン:FA24 BOXER DOHC 16バルブ デュアルAVCS+ターボ
●排気量:2387cc
●最高出力:280ps以上
●最大トルク:500Nm以上
●駆動方式:直結式4WD
●トランスミッション:6速シーケンシャル
●サスペンション形式:前ストラット/後ストラット
●ブレーキ:ENDLESS製 前4ポット/後4ポット
●ホイール:WORK製 18インチ×8J
●タイヤ:ADVAN製 210/650‐R18




