新車時1億円弱から、今や3億円超のプレミア価格へ。超っ速ポルシェで知られるルーフの「CTR3 クラブスポーツ」は、わずか7台のみ作られた極上のハイパーカーです。グループCカーを凌ぐシャシーと777馬力のパワーが織りなす、偏執的なまでのクラフトマンシップとは?

文: 石橋 寛/写真: RM Sotherbys
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初期型CTR3とは段違いの性能

ドバイへ移住と聞くと、我々庶民は「宝くじでも当たったんかいな」などと思いがち。超っ速ポルシェで定評あるルーフもまた、ドバイに拠点を設けたこと(2005年)ご存じの通りで、こちらは控えめに言っても大成功を収めています。中東をはじめ、アメリカあたりから資本が集中し、フルカーボンモノコックまで自社一貫生産が可能となっています。とりわけ、CTRの頂点を極めたようなCTR3 クラブスポーツは世界中から熱視線が集中するハイパーカーにほかなりません。

画像: ミッドシップのCTR3は2008年に30台限定で発売され、そのうちクラブスポーツは7台のみが製造されたレアモデル。

ミッドシップのCTR3は2008年に30台限定で発売され、そのうちクラブスポーツは7台のみが製造されたレアモデル。

2012年に登場したCTR3 クラブスポーツは、ポルシェの伝統的なフラット6をミッドに積んだルーフ製ハイパーカー。ポルシェ911(997)のフロントセクションやコンポーネントをベースにしつつも、カナダのマルチマティック社と共同開発した独自のスペースフレームシャシーやカーボン・ケブラー製ボディを採用しており、中身は完全に独立したオリジナルマシンとなっています。

2007年に登場した初期型CTR3が3746cc、KKK製タービン2丁がけから691psを発生していたのに対し、CTR3 クラブスポーツは排気量を3799ccへと拡大。さらに、軽量かつ強靭な鍛造ピストンや強化コンロッドなど、ムービングパーツをより高強度なものへの変更とともに過給圧も上げています。最高出力は90psほど上乗せされ、777psを発揮するに至っています。

画像: ボディはフルカーボン、シャシーはアルミ、特殊鋼管を用いたスペースフレームで構築。まさにエンジンより速いシャシー。

ボディはフルカーボン、シャシーはアルミ、特殊鋼管を用いたスペースフレームで構築。まさにエンジンより速いシャシー。

また、クラブスポーツのアイコンともいえるルーフ上のエアスクープもいい仕事をしています。これは単なるデザインに終わることなく、超高速域で走行中、正面からの走行風を強烈に押し込む「ラムエア効果」を生み出し、シリンダー内により高密度な酸素を送り込むことに役立っているのです。

サーキットを視野に置いたシャシー設計

エンジンチューンに注目が集まるルーフですが、実はイエローバードと呼ばれた初代CTRから「エンジンよりも速いシャシーづくり」がなされていました。当時こそ強化ダンパーやブレーキ、スポット溶接増しによる剛性の向上に終始していたものの、クラブスポーツは異次元の進化といえるはず。

画像: 3.8リッターのフラット6エンジンは文字通りフルチューンユニットで、777ps/980Nmのマキシパワー。

3.8リッターのフラット6エンジンは文字通りフルチューンユニットで、777ps/980Nmのマキシパワー。

911オリジナルのアルミフレームをフロントに使いつつ、キャビンからリアにかけてのスペースフレームは前述のマルチマティック社と協業した特殊鋼管を組んだもの。さらにロールケージを一体化させた「IRC(インテグレーテッド・ロールケージ)」構造を構築し、もはや往時のグループCカーを大幅に上回る剛性を確保しています。

画像: ポルシェのPDKミッションは2018年からオプションとして追加されました。それ以前は、6速シーケンシャルMT。

ポルシェのPDKミッションは2018年からオプションとして追加されました。それ以前は、6速シーケンシャルMT。

また、サスペンションについてもリヤには完全オリジナルとなるマルチリンク+インボード・プッシュロッドとし、ダウンフォースを余すことなく駆動力に変換。コンセプトとしてはF1に通じるといっても過言ではないでしょう。

画像: カーボンのクラブスポーツシートをレザーとチェックの生地でコーディネート。レトロな柄を選ぶあたりがルーフのセンスです。

カーボンのクラブスポーツシートをレザーとチェックの生地でコーディネート。レトロな柄を選ぶあたりがルーフのセンスです。

実測された380km/hの最高速

フルカーボンのボディを架装するほか、ルーフお得意の軽量策が功を奏して、車重は1380kgと最近の軽自動車よりも軽く仕上がっています。777psの最高出力から導き出された最高速は380km/h、0-100km/hは3.2秒(オプションによっては3秒という説もあります)の速さを誇ります。

画像: フロント:255/35 ZR 19、リヤ:345/30 ZR 20は現代のハイパーカーに比べるとワンサイズ小さめな印象。

フロント:255/35 ZR 19、リヤ:345/30 ZR 20は現代のハイパーカーに比べるとワンサイズ小さめな印象。

今やハイパーカー界隈では0-100km/hを2秒くらいでこなすのがデフォルトですが、こちらは全輪駆動やEVというのがほとんど。クラブスポーツはトラクションコントロールこそ装備するものの、ローンチコントロールといったデバイスは搭載されないミッドシップカー。ポルシェご自慢のPDKをもってしても、スタンディングスタートで出遅れるのは致し方ないポイントでしょう。

7台のみの限定生産だったクラブスポーツ

画像: ルーフ上にあるダクトにご注目。クラブスポーツに加えられた装備で、ストックの90ps増しを実現したデバイスです。

ルーフ上にあるダクトにご注目。クラブスポーツに加えられた装備で、ストックの90ps増しを実現したデバイスです。

CTR3は初期型から30台が生産されたことが記録されていますが、クラブスポーツはそのうちの7台のみとされています。新車当時の価格は1億円弱でしたが、今回ご紹介しているオークション出品車両はプレミア価格となり、3億円前後が相場。ちなみに、2023年に発表されたCTR3 EVOは最終進化モデルと謳われ、20台限定でもちろん完売。新車価格は1億2000万円ほどでしたが、クラブスポーツの高騰を見たオーナーたちは「まだ上がる」と睨んでいるのでしょう。中古市場にはいまだ1台も出品がありません。

画像: ダクトはもちろん、エンジンのインダクションへ直結した設計。少し911GT1のそれに似ていなくもないかと。

ダクトはもちろん、エンジンのインダクションへ直結した設計。少し911GT1のそれに似ていなくもないかと。

なお、冒頭に記したドバイの拠点はあくまでブランチであり、ルーフの開発・製造拠点はドイツのまま。ルーフの偏執的なまでのクラフトマンシップを維持するためには、ドイツのファクトリーで熟練の職人たちが組み上げる環境が絶対に欠かせないのでしょう。

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