バイクの爽快さに憧れを抱いても、二輪免許と立ちゴケの不安が壁になる。その点、前2輪・後ろ1輪のカンナムのリバーストライクなら身一つで爽快な走りが楽しめる上に、止まっても倒れず、クルマの免許で走り出せる。なかでもAT限定免許でも乗れる「ライカー」は、2027年モデルで全車3気筒となり、ステアリングまわりの剛性も高めた。価格は税込187万円からだ。

文: 石川順一
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あの爽快さは、二輪だけのものなのか

山あいの道の駅に、ツーリング中のバイクが何台も並んでいる。ヘルメットを脱いだライダーたちの晴れやかな顔を横目に、少しうらやましい気持ちでクルマに戻った。クルマにも走る楽しさはあるし、オープンカーなら風も浴びられる。ただ、車体にまたがってハンドルバーを握り、風も匂いも体で受けとめながらコーナーを抜けていく感覚は、またがる乗り物ならではのものだ。とはいえ、そのためには二輪免許が要る。教習所に通い、信号待ちのたびに足で車体を支え、立ちゴケにも気を配る。

そうした不安までを考えて、憧れのままにしてきたドライバーは多いことだろう。ところが、クルマの免許のままで、あの爽快さに手が届く乗り物がある。カナダのBRPが「カンナム」のブランドで送り出している、リバーストライクだ。

画像: カンナムの3輪シリーズ。先頭を走るのがライカーだ。日本に導入されるライカーのカラーはブラックのみで、写真は海外モデルとなっている。

カンナムの3輪シリーズ。先頭を走るのがライカーだ。日本に導入されるライカーのカラーはブラックのみで、写真は海外モデルとなっている。

倒れない安心はトライク共通。前2輪だから、曲がるのが楽しくなる

リバーストライクは、前に2輪、後ろに1輪を置いた3輪車である。トライクと聞いて思い浮かべる前1輪・後ろ2輪の形を、前後ひっくり返したレイアウトで、BRPは2007年の初代「カンナム・スパイダー」以来、この形を磨き続けてきた。

まず、3輪であることの美点はトライク全般に共通する。止まっても車体は自立したままなので、足を着いて支える必要がなく、足が届くかどうかも立ちゴケも心配の種にならない。曲がるときも車体を傾けず、曲がりたい方向へハンドルを切ればいい。こうした3輪車は日本では普通自動車免許で運転でき、法令上はヘルメットの着用義務もない。ただし体をさらして走る乗り物だけに、安全面を考えればヘルメットをかぶっておくに越したことはないのは言わずもがなだ。

そのうえで、リバーストライクならではの強みは、2輪を前に置いたことから生まれている。走っている乗り物はブレーキをかけると、車体の重みが前輪にのしかかる。コーナーの手前で減速しながらハンドルを切り込む場面では、止まる力も曲がる力も前輪が受け持つ。その負担の集まる場所に、左右に踏ん張る2本のタイヤを置いているから、1本で受け止めるよりタイヤに余力があり、外へ倒れ込もうとする車体も2輪の幅で支えられる。つまり、減速しながら曲がるときの安定感では前2輪に分があり、コーナーを楽しむならこの形が向いているというわけだ。

軽さと手軽さで走りを楽しむ「ライカー」

そんなカンナムのリバーストライクのなかで、走る楽しさを一番味わいやすいのが、2018年に初登場した「ライカー」だ。シリーズでもっとも軽量でコンパクトな車体は、加速にも減速にも、コーナーで向きを変えるにも余計な力が要らない。操作に車体がすぐ応えてくれるから、速度を上げなくても操る楽しさを濃く味わえる。

操作も簡単だ。変速機はアクセルをひねるだけで走り出せるCVTで、クラッチもシフト操作も要らないから、AT限定の普通免許でそのまま運転可能。ブレーキは足元のペダルひとつで3輪すべてに効き、後退用のリバースギアも備わっている。後輪はシャフトドライブで回すので、チェーンやベルトの手入れも要らない。ハンドルとステップの位置は工具なしで動かせ、体格に合ったポジションがその場で決まる。

こうした敷居の低さは、乗り手の顔ぶれにも表れている。米国ではこの1年、新しくライカーのオーナーになった人の半数近くがバイク未経験者で、3分の1以上を女性が占めた。そのライカーが、登場以来もっとも大がかりな進化を遂げたのが最新となる2027年モデルだ。

画像: ライカーのスタンダードモデル、900ACE6。カスタマイズ性の幅広さも魅力だ。

ライカーのスタンダードモデル、900ACE6。カスタマイズ性の幅広さも魅力だ。

エントリーモデルも3気筒に。曲がる手応えを鍛え直した

進化の柱のひとつがエンジンだ。エントリーモデルは、これまでの600cc2気筒から、新設計の900cc3気筒「ROTAX 900 ACE-6」に置き換わる。排気量は1.5倍に増えたのに、最高出力は52馬力と従来並み。増えた排気量をパワーではなく余裕に振ったのだ。低い回転から十分な力が出るので、発進や上り坂でも高回転まで回さずに済み、そのぶん音も振動も穏やかになる。3気筒は2気筒より燃焼の間隔が細かく、回転そのものも滑らかだ。実際、騒音と振動は大幅に抑えられ、低回転域のトルクも厚くなった。それでいて価格は従来と同等のままというのはうれしい。上位グレードはもともと3気筒だから、これで全車が3気筒でそろう。

それ以上に手が入ったのが、ハンドリングにかかわる部分である。ハンドルバーの動きは、ステアリングコラムという軸から、ピットマンアーム、タイロッドといった腕や棒へ受け渡されて前輪に届く。途中には関節にあたるボールジョイントや、ゴムの緩衝材であるブッシュも入る。こうした部品は強い力を受けるとわずかにしなり、ハンドルを切ってから前輪が向きを変えるまでに遅れやズレを生む。2027年モデルのライカーは、この一連の部品とシャシーの一部を強化して変形しにくくした。剛性が高まり、ハンドル操作が遅れなく正確に前輪へ伝わるから、コーナリングはよりシャープになる。車体のロールも従来より抑えられ、乗りやすくなった。

電子制御にも手が入った。タイヤの滑りや車体の乱れを検知すると、ブレーキとエンジン出力を自動で調整して姿勢を立て直す車両安定化システムで、ボッシュとの共同開発品だ。2027年モデルでは介入の仕方をより自然で段階的なものに改めることで、走りの気持ちよさを損なわない方向へ仕立て直した。

夜道も荷物も得意に

装備の進化は、使う場面で効いてくる。ヘッドライトはハロゲンからLEDに替わり、照射幅が30%広がって明るさも増した。日が落ちてからの帰り道でも、カーブの先や路肩まで見通しやすい。メーターは5インチのカラーディスプレイに大型化し、シートも立体縫製の上質なものに改められた。

積載力もアップ。アクセサリーを手早く脱着できるLinQシステムの取り付け点を4か所に設け、SHAD製の拡張式サドルバッグは容量が従来の2倍以上に。日帰りの峠道だけでなく、荷物の多い泊まりがけの旅にも連れ出しやすくなった。これまで設定されていた豊富なアクセサリー44点もそのまま使える。外観もボディパネルとシグネチャーライト、ホイールのデザインを一新した。

187万円から選べる3グレード。置き場所だけは先に考えておきたい

日本には2027年モデルとして3グレードの導入が予定されており、カラーはいずれもブラック。エントリーの「ライカー 900 ACE 6」が187万円、KYB製のサスペンションで足まわりを引き締めた「ライカー スポーツ」が243万5000円、未舗装路まで視野に入れた「ライカー ラリー」が275万円だ。

ひとつ心づもりが要るのは、置き場所である。全幅は2026年モデルで1522mmあり、軽自動車の規格である1480mmより広い。前に2輪を張り出したこのかたちこそが安定感の源なのだが、バイク用の駐輪スペースには収まらないので、クルマ1台分の場所を用意しておこう。

道の駅でバイクの列を眺めるだけだった休日が、カンナムのリバーストライクさえあれば、自分も風の中を走って帰ってこれる休日に変わる。カンナムの正規販売店では試乗の予約を受け付けているので、足を着かずに止まれる安心と、風を切って曲がる楽しさを、まずは体感してみよう。

画像: ライカーの最上位モデル”ラリー”。シリーズ随一の走破性を誇る。

ライカーの最上位モデル”ラリー”。シリーズ随一の走破性を誇る。

画像: ライカーの上位モデル”スポーツ”。KYB製の足回りやワイルドなラジエーターパネル等細部がスタンダードモデルと異なる。

ライカーの上位モデル”スポーツ”。KYB製の足回りやワイルドなラジエーターパネル等細部がスタンダードモデルと異なる。

BRP カンナム ライカー(2027年モデル) 主要諸元

・エンジン:ライカー 900 ACE 6=ROTAX 900 ACE-6 3気筒 900cc、最高出力52馬力/上位グレード=ROTAX 900 ACE-9 3気筒 900cc、最高出力79馬力
・変速機:CVT
・安全装備:ABS、トラクションコントロール、スタビリティコントロール
・メーター:5インチカラーディスプレイ
・ヘッドライト:LED
・ボディカラー:ブラック
・価格:ライカー 900 ACE 6=187万円/ライカー スポーツ=243万5000円/ライカー ラリー=275万円(いずれも税込)

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