9月から生活道路の法定速度が30km/hに下がり、速度を確かめる場面が増えた。けれど純正のHUDを備える車はまだ限られる。日本精機の「LumieHUD」は、USBに挿してダッシュボードに置くだけで、約1.5m先に車速を映す後付けHUDだ。価格は2万2000円。

文: 石川順一
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30km/hの道では、メーターを見る回数が増える

2026年9月1日、改正道路交通法施行令が施行され、生活道路を走る自動車の法定速度が60km/hから30km/hに下がった。対象は、住宅街の中の道のように中央線や車両通行帯のない道路だ。標識で速度が指定されていれば、そちらが優先されるのはこれまで通りだ。

問題になるのは、子どもを学校へ送った帰りに住宅街を抜けるとき。30km/hを守ろうとすれば、速度計をのぞく回数はおのずと増える。そのたびに視線は道路から手元へ下がり、目は近くのメーターにピントを合わせ直す。ほんの一瞬でも、その間は飛び出してくる自転車や歩行者から目が離れてしまう。

前を向いたまま速度がわかれば、この往復はなくなる。それを可能にするのがヘッドアップディスプレイ、いわゆるHUDだ。とはいえ、HUDを積んでいるのはまだ新しい車や上級モデルが中心で、純正品を手に入れるには車ごと買い替えるしかない。いま乗っている軽自動車やコンパクトカーのまま、あの表示を足せないものか。その答えのひとつとして生まれたのが、日本精機の後付けHUD「LumieHUD」だ。

画像: 30km/hの道では、メーターを見る回数が増える

1.5m先に浮かぶ数字なら、ピントの合わせ直しも負担にならない

使い方は簡単、ダッシュボードの上に置くだけ。本体から立ち上がる透明な板、コンバイナに車速が映るのだが、数字は板の表面に貼りついて見えるわけではない。像を結ぶのは運転者の目からおよそ1.5m先、つまりフロントガラスを越えた車の前方だ。運転席から見ると、走っていく道路の上に速度が浮かんでいるように映る。これは純正HUDと同等の設計による遠視点表示だ。視線を下げずに済むうえ、ピントの合わせ直しも容易で、目の負担にならない。

画像: 丸みを帯びた形と、やわらかな色あいがLumieHUDの見た目の特徴だ

丸みを帯びた形と、やわらかな色あいがLumieHUDの見た目の特徴だ

開発で最もこだわったのが、この「奥に見える」表示だという。年齢を重ねると、近くと遠くのあいだでピントを切り替えるのに時間がかかるようになる。遠くに像を結ぶ表示は、そうした高齢のドライバーにとって特に助けになる。長く運転を続けたい人ほど、恩恵を感じやすい仕組みとなっているのだ。

表示するのは車速だけだ。速度は車両から読み取るのではなく、GPSやみちびきを含む衛星測位、GNSSで測っている。そのため車両側の配線やコネクターに手を加える必要がない。明るさは5段階から好みに合わせて選べ、そのうえで周囲の明るさに応じた自動調光が常に働く。一度決めておけば、昼と夜で設定をいじり直す必要はない。

画像: 1.5m先に浮かぶ数字なら、ピントの合わせ直しも負担にならない

衛星で測る方式ならではの癖もある。電源を入れてから衛星をとらえるまでに30秒から1分ほどかかり、その間は速度が出ない。車庫を出て最初の角を曲がるころに、数字が表示され始めるイメージだ。トンネルや立体駐車場のように空が見えない場所、ビルの多い都市部や山あいでは正しく測れないこともある。また純正メーターは実際の速度より高めに表示される場合があり、衛星で測るLumieHUDとは数字がずれることがあるのだ。

このずれについて、メーカーは改良で応えている。2026年7月3日以降の注文分は「Rev.2」となり、表示する速度を0〜20%の範囲で上乗せできるようになった。初期設定は2%で、実際に50km/hで走っていれば51km/hと表示される。純正メーターと見比べて差が気になるなら、自分の車に合わせて数字を寄せていけるのだ。

車内の温度変化に対しても、備えがある。動作可能な範囲は氷点下30℃から60℃まで。車内が熱くなると自ら表示を暗くし、範囲を超えれば表示を止めて本体を守るように設計されているのだ。

USBに挿して、ダッシュボードに置くだけ

取り付けも手間いらずで、スマートフォンの充電器をつなぐ感覚に近い。電源は車のUSB Type-Aの差込口からとり、Type-Cの口しかない車なら市販の変換アダプターを使うだけでOK。ケーブルは2mあり、ダッシュボードの上から足元近くの差込口まで引き回せる。届かなければ3mまでの延長ケーブルを足せる。注意したいのは差込口の出力で、1.32Aに届かないと表示が出ないことがある。車の取扱説明書でUSB口の出力を確かめておけば安心だ。

画像: LumieHUDの電源は車のUSB差込口からとる。工具はいらない

LumieHUDの電源は車のUSB差込口からとる。工具はいらない

本体は幅も奥行きも高さも12cm前後で場所を取らず、圧迫感もない。固定は両面テープを使うことになるが、傾きの違うダッシュボードにも合わせられるよう、角度の異なるスペーサーが2枚付属しており、取り付け車種をほぼ選ばない。運転姿勢で表示が見える角度を探してから貼るだけでよい。

自分の車に置けるかどうかは、買う前に確かめられる。公式サイトでは実物大の型紙をPDFで配っており、印刷して組み立てればダッシュボードに置いて、視界やフロントガラスとの干渉を試せる。届いてから「置けなかった」と困る心配を、紙1枚で先に減らせるわけだ。

純正HUDの大手が、あえて速度表示だけに絞った

作り手の日本精機は、1946年に設立された新潟県長岡市の計器メーカーだ。四輪車や二輪車のメーターを長く手がけ、同社によればHUDの世界シェアでも首位に立つ。2020年からはメルセデス・ベンツの新型Sクラスに、運転者の視点から約10m先に情報を重ねるAR対応のHUDを納めている。

LumieHUDは、その日本精機が一般の消費者向けに立ち上げたブランド「moado」の第1弾として、2025年5月に発売された。長岡に本社を置く同社グループが、設計から量産までを手がける。純正品で培った光学設計を、手のひらに載る製品に生かした格好だ。

狙ったのは、小型車や軽自動車に乗る人、女性など、これまでHUDに関心の薄かった人たちだという。そのために軽自動車やコンパクトカーの限られたダッシュボードにも置ける大きさにまとめ、機能は車速表示だけに絞り込んだ。多機能を追わなかった割り切りが、USBに挿して置くだけという手軽さを生んでいる。

見た目にも同じ考え方が通っている。ガジェットらしい無骨さを避けて丸みのある形とやわらかな色を選んだのは、軽自動車や小型車に乗る女性、運転を始めたばかりの人にも手に取ってもらうためだという。カフェのような内装にもなじむ質感を目指したつくりなのだ。

画像: 純正HUDの大手が、あえて速度表示だけに絞った

6色から選べて、価格は2万2000円

価格は2万2000円。公式オンラインショップでは、ブルー、グレー、アイボリー、オールブラック、スノーホワイト、さくらピンクの6色から選べる。このうちスノーホワイトとさくらピンクは同ショップだけの色だ。やわらかな色で車内を明るくしたい人も、落ち着いたモノトーンの内装に溶け込ませたい人も、自分の車に合う1台を選べる。

保証は購入から1年で、購入後にアンケートへ答えるとさらに1年延び、最長2年になる。故障した場合は修理ではなく、保証の範囲内で新品と交換する仕組みだ。初期不良以外での交換は1度に限られる。全国のカー用品店でも販売しているので、最寄りのショップを訪ねてみよう。

制限速度が下がった生活道路では、速度を気にかける場面がこれまでより多くなる。LumieHUDがあれば、その確認は前を向いたままで済む。車を買い替えなくても、純正HUDを作ってきたメーカーの表示を、いつものダッシュボードに足せる。視線を落とさずに済むぶん、眼前の危険や子どもたちの無邪気な動きも広い視野で捉えやすくなる、お役立ちアイテムだ。

画像: 6色から選べて、価格は2万2000円

日本精機 LumieHUD 主要諸元

・製品区分:後付けヘッドアップディスプレイ
・本体サイズ:幅121mm×奥行111mm×高さ113mm
・表示距離:1500mm(ドライバー視点から)
・表示内容:車速(km/h表示、0〜199km/h)
・速度検知:GNSS受信(GPS、みちびき等を含む衛星測位)
・明るさ設定:5段階(自動調光は常に有効)
・速度補正値調整:0〜+20%(Rev.2のみ。2026年7月3日10時以降の注文分から)
・電源:5V DC(USB Type-A)
・最大消費電流:1.32A
・ケーブル長:2000mm
・動作温度範囲:-30〜60℃
・保存温度範囲:-40〜85℃
・付属品:角度調整スペーサー(1.5度・3.0度)、両面テープ、ケーブル留めクランプ
・カラー:ブルー、グレー、アイボリー、オールブラック、スノーホワイト※、さくらピンク※(※公式オンラインショップ限定)
・価格:2万2000円(税込)
・発売日:2025年5月23日
・保証:購入から1年(購入後のアンケート回答で1年延長)
・販売:公式オンラインショップ、全国のカー用品店

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