文:Motor Magazine編集部
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8速ATの採用と進化の著しいドライブアシスタンス機能
BMWグループのもとで新生ロールスロイスが、フラッグシップとして初代ファントムを発表したのは2003年だったので、かれこれ9年の歳月が流れたことになる。この間にロングホイールベースバージョンやドロップヘッドクーペ、クーペが順次追加され、シリーズの充実化が図られ、超高級車市場で盤石な地位をさらに強固にしたことは言うまでもない。そして順風満帆と言えるモデル展開は、9年目にして第2世代の投入となったわけだ。
パワートレーン系で進化のポイントはトランスミッションで、これまでの6速ATから8速ATになった。6.75LのV12自然吸気エンジンのパワースペックに変更はないが、燃費はEU総合モードで10%向上している。
また、ボディはこれまでどおり軽量アルミニウム製スペースフレーム構造だが、ブレースバーを追加して剛性を高めている。これによりサスペンションは従来とまったく同じにもかかわらず、機能をこれまで以上に使いこなすことができるようになり、結果的に乗り心地の上質感向上につながっている。

中国仕様はバンパー形状が異なり全長は6m以内に納めれているが、本来は全長×全高×全幅は6092×1990×1640mmだ。
ドライブアシスタンス機能やインフォテインメント系の進化は著しい。センターディスプレイは6.5インチから8.8インチへと大型化され、ナビゲーションの機能は大幅に高められた。また、そのナビや電話など主要機能のキーを周囲に配したロータリースイッチも新しくなり、操作性が向上している。さらにセンターコンソールにはスマートフォンとの接続端子やUSBポートが新設された。このUSBポートを介して大容量のハードディスクに音楽ファイルを保存することもできる。
エクステリアは超高級車らしく最小限の変更に留められているが、ヘッドライトがフルLEDとなったことは注目だろう。電力の消費が少ないことはもちろん、LEDの白色光は夜間走行でのドライバーの疲労を緩和する効果があるという。また、LEDの採用により照射制御がしやすくなったこともあり、カーブライト機能と走行速度によりビームのパターンを変化させるアダプティブヘッドライトシステムも装備された。インテリアデザインにも大きな変更はない。気がつくのはセンターディスプレイ下のスイッチの配置が変わったことくらいである。
ドライバーが運転しやすければリアシートの乗員は快適
さて、いよいよ試乗となるが、用意されたモデルはエクステンディッドホイールベースで、また中国仕様ということだった。と言っても左ハンドルで装飾がやや華美であるということ、そして税制への対応で全長を6mに収めるためバンパー形状が異なること以外、機能面に違いがあるわけではない。
ファントムの試乗はドライバーズシートだけで済ませるわけにはいかない。後席の印象も不可欠だろう。そこで目的地への往路は後席に座った。ファントムの後席は着座位置が前席より18mm高く設定されているために、前方の見通しがよく開放感がある。さらにこれは通常モデルよりホイールベースが250mm長く、それがそのまま後席スペースになっているのでとにかく広い。はるか前方にフロントシートがあり、ドライバーに話しかけるときは、つい大声になってしまうほどだ。
果たしてこれほど広い必要があるのだろうか、というのが正直なところだ。しかし、それは視点が間違っていると気づいた。本当のところ、必要なのは中の広さではなく外観の豪華さ(押し出し)、ただのファントムではなく、これはさらに高価なモデルであるという事実なのではないかと思った。

インパネまわりのデザインは従来モデルを踏襲。シフトレバーはコラム式でハンドルグリップが細いことなどにショーファードリブンを感じさせる。
乗り心地は極めてよい。ただそれはソフトライドということではなく、しっかり感がある中で滑らかであるという印象だ。「剛性の高いボディのおかげでサスペンションがよりよく働いている」という説明を実感として捉えることができた。
さて復路である。ファントムの場合、オーナーが運転することはほとんどないだろうが、どんな印象なのかは誰しも気になるだろう。まずエンジンフィールだが、さすが自然吸気の12気筒である。極めて滑らかな回転とともに、トルクが段付き感なくスムーズにどこまでも盛り上がっていく。この辺の味付けは見事だ。これならば後席の乗員に快適なドライブができる。
また、ハンドルのグリップは細く、その握り心地は新鮮なのだがこの形状だとなぜか運転がていねいになる気がする。太いグリップのものは一般にスポーツタイプということでもあり、グリップが細いとていねいになるというのは、あながち的外れな印象ではないように思う。そして、そのハンドルを切っていくとファントムは思いどおりのラインをトレースして行く。ドライブフィールにはファントムというクルマの性格がよく表れていることがわかり、実に興味深かった。
初代ファントムは2003年の発売開始以来、去年がいちばん販売台数が多かったそうだ。シリーズIIはこうした流れを受け継いで、さらに台数を稼いで行くことになるだろう。(文:Motor Magazine編集部)

高速道路をゆったりと流しているときの快適性は極めてハイレベル。
ロールスロイス ファントム シリーズII エクステンディット ホイール ベース 主要諸元
●全長×全幅×全高:6092×1990×1640mm
●ホイールベース:3820mm
●車両重量:2670kg
●エンジン:V12DOHC
●排気量:6750cc
●最高出力:338kW(460ps)/5350rpm
●最大トルク:720Nm/3500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:5640万円(2012年当時)
※EU準拠




