文: 石橋 寛/写真: RM Sotherbys
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中古車が出回らない!

2020年デビューのパガーニ・ウアイラ・ロードスターは世界限定100台のハイパーカー。新車価格5億円ともいわれました。
クルマの絶対評価こそ数字に頼るべきかもしれませんが、ご存じの通り官能評価される部分こそクルマ好きの琴線に触れるもの。モデナの異端児と評されるオラシオ・パガーニもまた、そんな杓子定規な評価を頑なに拒んでいるひとり。彼が信奉するのは、「科学と芸術は手を取り合って歩むべき」というレオナルド・ダ・ヴィンチの思想そのもの。ボルト一本にまで美学を求めるその偏執的なアプローチは、自動車メーカーというよりは、もはや狂気を孕んだ「彫刻」の域に達しているかのようです。
一般的に、クーペの屋根を切り取ってロードスターを作る場合、ボディ剛性の低下を補うために重い補強材を組み込むのがセオリー。しかし、オラシオ・パガーニはこの妥協を一切許すことなく、独自の先進的複合素材「カーボ・チタニウム」と、さらに強度を高めた「カーボ・トリアックス HP52」を組み合わせたウアイラ・ロードスターを生み出しました。

カーボン繊維に糸状のチタニウムを編み込む超軽量新素材、カーボ・チタニウムを自ら開発して1280㎏という車重を実現。
カーボン繊維のなかにチタンの糸を緻密に織り込んでいくという、気の遠くなるような職人技が生んだこの骨格。クーペモデルと比較して「ねじり剛性を52%向上」させながら、逆に車重を80kg軽量化するという、物理・物性にことごとく反発してみせたのです。
ここに、メルセデスAMGがパガーニのためだけに生み出した6.0リッターのV12ツインターボ(M158)をミッドシップ。最高出力764馬力、最大トルク1000Nmというパワーは1280kgの車体には十分すぎる、というよりむしろマッドパワーに近いもの。

AMGがパガーニのためだけに仕立てた6リッターV12エンジン。車体中央の構築的な眺めもこのクルマの魅力のひとつでしょう。
トランスミッションは、Xtrac製の7速シーケンシャル。現代のトレンドであるデュアルクラッチ(DCT)を「重すぎる」という理由で切り捨て、あえてシングルクラッチの横置きシーケンシャルを選択したことからも、1グラムの無駄すら削ぎ落とそうという凄まじい執念が伝わってくるかと。

ボディの灼けや、効率性には首を傾げざるを得ませんが、スタイルだけはとにかくカッコいいマフラー。
マクラーレン・セナを1秒近く引き離す
さらに、この狂気のパッケージングを完結させるのが、前後に計4枚配された可動式フラップによる「アクティブ・エアロダイナミクス」。走行状況やコーナリングG、ブレーキングに応じて左右のフラップが独立して立ち上がり、空気の壁をダウンフォースへと変換してくれるのです。また、専用開発されたピレリ・P Zero Corsaとアクティブエアロにより、コーナリング時に発生する最大横Gはなんと1.80G。さらに2020年に並行してデリバリーされていた、わずか40台の過激派「ロードスターBC」に至っては、802馬力までスープアップされた心臓と1250kgへの減量により、1.90G以上というレーシングカー並みの異次元の旋回性能を誇ります。

創業者のオラシオ・パガーニの美意識はインテリアにも現れ、形状はもとより、カーボンやレザーの質感を最大限にいかしたスタイルが秀逸。
ちなみに、BCは2022年にスパ・フランコルシャンをテストドライバーのアンドレア・パルマによって、2分23秒081を記録。コースは部分的にウェットパッチが残るコンディションだったにもかかわらず、当時の最速ラップを樹立したのでした。なお、同年にアタックしたマクラーレン・セナはドライコンディションの中で2分24秒082と、1秒近く離されてしまいました。パガーニはとかく色眼鏡で見られがちですが、芸術点だけでなく実質的なスコアもしっかりマークしているという証左にほかなりません。

ホイールもまた軽量化を目指し、マグネシウム合金を使って自社製造というこだわりっぷり。
5億円以上でもまあ…お買い得…か…
世界限定100台といえば、現代のハイパーカー市場では少ない台数とはいえません。が、意外と中古車市場に出回らないことでもパガーニは有名です。手放す人が少ないというわけでもなさそうで、どうやらパガーニ専門ブローカーのような組織があるとかないとか。
とはいえ、少ないながらこれまで中古市場で売られたウアイラ・ロードスターは300万から800万ドル(約5億~11億円)とさまざま。仕様やオプションによるとのことですが、美術館に飾られる彫刻を大いに凌ぐものであることは確かでしょう。しかも、時速300kmで走れるのですから、お買い得といえばお買い得、かもしれません。

いまやパガーニのアイデンティティともいえるエルゴノミックミラー。もちろん、空力的な裏付けあってのデザインです。

車内スピーカーの建付けひとつとっても、オラシオのセンスが遺憾なく発揮されています。


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