ライバルとは異なる環境対応技術を搭載したノート
「e-POWER」。この聞き慣れないグレードが、ノートに追加された。ノート自体は、スペース効率を最大限に活かしたパッケージングを持つBセグメントカーで、同じ土俵にトヨタ アクア、ホンダ フィット、マツダ デミオなどが上がっている。
ただしこれまでのノートは、燃費に優れるハイブリッドモデルが用意されているわけでもなく、どちらかと言うと真面目一辺倒の目立たない存在だった。しかし、この「e-POWER」」の追加で俄然注目を浴びることになったと言えるだろう。
では、「e-POWER」とは何か。それはニッサンの新しいパワートレーンの呼び名である。ノートe-POWERは、ノートXなどと同じ1.2L直3エンジン(HR12DE型)を搭載している。しかしノートXと大きく違うのは、そのエンジンでは駆動しないことである。
タイヤを回すのはすべてモーター(リーフと同型)が請け負っているのだ。ではエンジンは何をするのか。そう、発電するためだけに搭載されているのだ。プリウスのようなエンジンもモーターも駆動する「パラレルハイブリッド」とは違い、エンジンは発電するだけに使われ駆動はモーターで行う「シリーズハイブリッド」となり、JC08モード燃費値は、34.0~37.2km/Lとすべて30km/L超えとなった。
走りは通常のノートとは大きく差別化されている、まさに“特別なノート”にふさわしいものに仕上がっていると言えるだろう。BMW i3のようなワンペダルドライブが楽しめるのである。これはi3未体験の人にとって、いままでにない特別な運転感覚だろう。実はこの特別感こそ、ノートe-POWERにとって大きな武器になると考えている。これこそ、ライバルにもないものだからだ。
走り出した瞬間から最大トルクを発生するモーターらしい加速力が味わえ、さらにもっとも効率のいいエンジン回転数で発電するというメリットもある。またエンジンの稼働時間は従来型ハイブリッドより少なく、減速時に踏むブレーキペダルの回数は、約7割減り(S / ECOモード)、運転時の疲労軽減にも繋がると開発エンジニアは言う。
このノートe-POWERは、小さな高級車というイメージを出したいと開発陣は考えたようだ。そのため通常のノートと少しエクステリアやインテリアの差別化が図られている。
あえて“少し”と強調したのはノートe-POWERが持つ特別感ほどの差別化が感じられないからだ。そのあたりはもっとあってもいいのでは、と感じたのである。
コンパクトカーに、燃費や低価格だけを求める人をノートe-POWERはメインターゲットとしない。訴求したいのは、“プレミアムな価値のあるコンパクトカー”を求める人たちだろう。
それこそポロやMINI、A1といった欧州ブランドのBセグメントに興味のある人である。ノートe-POWERは、そうした人たちに訴えることのできる価値を備えている。そのため新パワートレーンの採用やデザイン、そして先進の安全性など付加価値として追加し、魅力的なクルマに仕上がっているのだからノートとの差別化は、もう少し明確にした方が、いいのではないかと思う。
最後に「e-POWER」を世に出したのだから、これをほかのモデルに展開しない手はない。そのあたりをエンジニアに訊くと、「それは視野に入っている」とのこと。たぶん、近いうちにほかの日産車でも「e-POWER」搭載車が加わることだろう。その時にはe-POWERの新たな一面が見られるかもしれない。今からそれを楽しみにしている。(文:千葉知充/写真:玉井充)
●主要諸元〈ノート eパワー メダリスト〉
全長×全幅×全高=4100×1695×1520mm
ホイールベース=2600mm
車両重量=1220kg
エンジン=直3DOHC 1198cc
最高出力=58kW(79ps)/5400rpm
最大トルク=103Nm(10.5kgm)/3600-5200rpm
モーター最高出力=80kW(109ps)/3008-10000rpm
モーター最大トルク=254Nm(25.9kgm)/0-3008rpm
駆動方式=FF
JC08モード燃費=34.0km/L
タイヤサイズ185/65R15
車両価格=2,244,240円
※取材車両のボディカラーはギャタクシーゴールド。装着オプション含む総計は2.862,689円。