ボルボとしては最後となる直6エンジンを堪能した
ボルボの直列6気筒エンジンは、XC90やS80といった大型SUVやフラッグシップモデルにも積まれている。なかでも3L直6は、現在でもS80やS/V60に4WDシステムと組み合わせ、T6 AWDという名前で採用されている。
エンジンルーム内に横置きに搭載できるほどコンパクト化され、よどみなく高回転まで一気に回り切るこのハイパフォーマンスエンジンは、ボルボのスポーツイメージを一気に高めたと言ってもいいだろう。事実、その走りは爽快、いや痛快である。
ただし、この3L直6エンジンの生産は終了している。ボルボは今後、新しいモデルに直6エンジンは使わない、すべてのモデルは最大2L直4エンジンまでしか搭載しないという方針を発表したのである。
ボルボが搭載する2L直4エンジンの実力は、すでにさまざまなモデルに採用されているDRIVE-EパワートレーンのT5(2L直4エンジン)で明らかである。今後は出力を変えてこの2L直4が高出力版はT6に、出力を抑えたモデルがT4となる。さらにそれに電気モーターを組み合わせハイブリッド化されたT8なども登場する。2016年にはそんなボルボ車にも実際に乗ることができるはずである。
話は戻り直6。ボルボの最後のB6304T型3L直6エンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルが登場した。つまり最後の直6を搭載したポールスターである。直6ファンならこれは見逃せない。
この16年モデルのS/V 60ポールスター。基本的な部分は15年モデルと同様だが、アルミホイールのカラーリングと価格が変わった。
ここでポールスターのディテールを紹介する。ボルボカージャパンが50台のみ日本に導入したこの特別限定車は、15年(90台)に引き続き2年連続の導入となる。ちなみに世界限定台数750台で、16年モデルを一番多く導入した国はスイス、その数は150台だと聞く。
専用部品が惜しみなく使われているのもポールスターモデルの特徴だ。その数は、なんと240にもなる。たとえば、エクステリアは空力テストなどで計算し尽くされたエアロパーツを装着、ブレンボ製のブレーキキャリパーを採用するなどハイパフォーマンスモデルに相応しいストッピングパワーを備えている。
インテリアに目を移すとそこには走りに集中するための演出が数々施されている。アクセル&ブレーキペダル、ATのセレクター、ステッチ入りのレザーステアリングホイール、さらにダイナミックな走りを支えるスポーツシートなどである。これはすべてポールスター社のレースシーンのノウハウをフィードバックしたものである。ところでポールスター社は、7月からボルボ傘下に入り、今後はさらに密接な協力関係のもと、スポーツ車両の開発に携わっていくはずである。
ちなみにボルボのレース活動といえばやはり“フライングブリック(空飛ぶレンガ)”と言われた80年代の240ターボをまず思い浮かべる人も少なくないだろう。そう、もともとボルボはモータースポーツ活動に積極的なメーカーなのである。そうした土壌を考えてもボルボからポールスターのようなモデルが出るのはなんら不思議なことではない。
走り出して確認できたのは低速域でのコンフォート性能が高いことである。当然、右足に力を込めて速度を乗せていくとスポーカーへと激変する。印象は昨年乗ったときと変わらなく素晴らしいクルマに仕上がっている。駆動システムは、ハルデックスの4WDシステムを採用、駆動力がリアに積極的に配分される。装着タイヤはミシュラン パイロットスーパースポーツ、サイズは前後とも245/35ZR20だ。
価格は昨年より少しアップして、S60ポールスターが829万円、V60ポールスターが849万円。ボディカラーは、テーマカラー「レーベルブルー」のほかに「アイスホワイト」と「オニキスブラックメタリック」も用意されている。
なお、“最後の直6ポールスター”は、前者が10台、後者が40台の販売となる。ちなみに取材時の残りはS60が2台、V60は20台を切っている。つまりS60/V60ポールスターのオーナーになるという幸運はもうあまり残されていないことになる。(写真:永元秀和)
●主要諸元<S60ポールスター>
全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース=2775mm
車両重量=1780kg
エンジン=直6DOHCターボ 2953cc
最高出力=258kW(350ps)/5250rpm
最大トルク=500Nm(51.0kgm)/3000-4750rpm
トランスミッション=6速AT
駆動方式=4WD
タイヤサイズ=245/35ZR20
車両価格=8,290,000円