ルノー・トゥインゴって?
トゥインゴは全長3.6mと短いAセグメントのボディにリアエンジン/リア駆動(RR)レイアウトを採用。最小回転半径4.3mと、狭いパリの市街路でも運転しやすい小回り性や、6色のボディカラー/3色のインテリアカラーを持ち、さらに往年の名車サンクのアイコンを採り入れた、伝統と革新を絶妙な感覚で融合させたそのデザインも魅力だ。
気になるモデル、ゼンMT
この1月、ベースグレード「ゼン」が追加になった。
そのなかで注目は、カタログモデルとして初めてのマニュアルモデル、「ゼンMT」の登場だ。
今回登場のゼンには、デュアルクラッチ式2ペダル6速EDCモデル(180万円)と5速MTモデル(171万円)の2種類があるが、搭載するエンジンは異なる。EDCモデルは従来のインテンス同様、897ccターボエンジンなのに対し、MTモデルは998ccの自然吸気。0.9Lターボエンジン車が90ps/135Nmなのに対し、こちら1L自然吸気エンジンモデルは71ps/91Nmとスペックは落ちる。
さらに言えば、0.9Lターボエンジン搭載モデルはすべてエコカー減税対象なのに対し、NAエンジンの「ゼンMT」にはそれがない。カタログを見る限りは、“171万円”という、ルノー車として最安の価格だけしか魅力がなさそうな気もしてきてしまう。
フレンチの素材の良さを楽しめるゼンMT
ということで、キーを回しエンジン始動、走り出す。長めのシフトノブを1速、2速、3速。シフトストロークも大きめだが、スッと入る感覚がとても心地いい。
出力は軽自動車プラスアルファ程度だから、決してパワフルではない。だが、上まできちんと回すと、意のままにクルマが前に進む。なんだろう、この気持ち良さ。手のひらの中に収まる身の丈感。
正直に言おう。このクルマ、速いか遅いかと問われれば、遅い。とくに速度とギアが合っていないとき、驚くほどクルマが前に進んでいかない。だから、高いギアに入れっぱなしで・・・というズボラな運転はできない。
そう、適切なギアを選択し、クルマと自分をシンクロさせると、これが驚くほどに気持ちが良いのだ。クルマの持つポテンシャルを、ドライバーが自分の力で100%引き出す面白さ。クルマと一体になる楽しさ。
これは、もう「素」の楽しさということなのだろう。トルクだってたいしたことはないのに、まったく気を遣わずクラッチを繋げられるし、アイドルストップ機構もついている。
シンプル イズ ベスト。こうしたモデルをこんな手軽な価格で味わえるのだから、導入してくれたルノージャポンには、もう「ありがとう」という言葉しかない。
「スポーツモデルでもないのにMT!?」と思う人も確かにいるだろう。でも、フランス車の「素材の良さ」を味わいたいなら、このMTを選ぶべき。ミニバンのカングーだって、MT比率が3割超なのも「フレンチの素材の良さを味わうならMT」というルノーオーナーが多いからだろう。
回して楽しいから、燃費は必然的に良くはない。それでも今回、ドライブコンピュータの燃費で14km/Lを記録したことを最後に報告しておこう。(文:根岸 誠/写真:玉井 充)
主要諸元 トゥインゴ ゼンMT
●サイズ 3620×1650×1545mm
●車重 960kg
●エンジン・排気量 直3DOHC・998cc
●最高出力52kW(71ps)/6000rpm
●最大トルク 91Nm(93kgm)/2850rpm
●車両価格:171万円