底知れぬパワーで余裕のクルージング
春がもうすぐそこまで来た感じで、日向はぽかぽかと暖かい今日この頃だが、都内のホテルをベースにしたベントレー試乗会が開催された。試乗車は正統派4ドアセダンのフライングスパー、GTカーのコンチネンタルGT、SUVのベンテイガから選べたが、この天候であればオープンモデルがいいと思い、コンチネンタルGT スピード コンバーチブルを選んだ。
ベントレーのモデル名に“スピード”とつくのはハイパワーエンジンを搭載しているということだが、これは最高出力642psの6L W12DOHCツインターボを積んでいる。従来はフライングスパー スピードと同様の635psエンジンだったが、2017年モデルからコンチネンタルGT スピードはパワーをプラス7ps、トルクはプラス20Nmとした。同じW12エンジンで気筒休止システムを持つものもあるが、このスピードが搭載するものは、走りに徹するという意味合いで敢えてこのシステムは持たない。
2017年モデルではインテリアの細かい部分も変更されているが、それはパドルシフト内側の加工の仕方であったり、文字のフォントであったりと、文字どおり“細かい”ことなのでオーナーでもない限り気がつかないだろう。ただし、超高級車というものはこうした細かい変更を行うことに価値を見出しているのが常で、それは要するにユーザーに対するきめ細かいサービスを提供するという信念に基づいているのだ。
さて、さっそくソフトトップを開けて都内のホテルをスタート。時刻は11時、気温が上がってきてメーターパネルの外気温計は16度だった。サイドウインドウを上げて走ったが、60km/h以下の速度で都内を走っているぶんには風の巻き込みはほとんどなく快適そのものだった。寒くはなく、暑くもない。オープンモデルには最もいい季節、そして時刻なのだと実感した。
その後、首都高速で湾岸地区まで行ったが、最高出力642ps、最大トルク840Nmの走りは余裕に満ちあふれていることは言うまでもない。車両重量は2530kgもあるが、まったくストレスなく、どんな速度領域からでもグイグイと加速する。重量級ボディを大パワーで動かすというのは実はかなり気持ちいい。軽いボディのコンパクトモデルをスイスイと扱うのも愉しく気持ちいいが、その対極の重量級を大パワーで操るというのもフィーリングはもちろん異なるがいいものなのだ。クルマの愉しさというのは奥が深いと改めて思った。
湾岸地区からの帰りはソフトトップを閉じた。するとコクピットの様子はがらりと変わりそこは静寂の世界になった。そもそもこのコンチネンタルGT スピードはエキゾーストノートを聞かせるようになっているが、オープン状態だとダイレクトに伝わってくる。それがほんとんど聞こえなくなるほど、このソフトトップは遮音性に優れている。これであればハードトップである必要はないと思った。コンチネンタルGTは積極的にコンバーチブルを選んだ方がいい。
ベントレーはパーソナルで積極的にドライビングを楽しむ超高級車である。そういう意味で、今回、試乗したコンチネンタルGT スピード コンバーチブルは、もっともベントレーらしい1台といっていいのかも知れない。いやはや、本当に愉しいショートトリップだった。(文:荒川雅之/写真:玉井充)
●主要諸元 ベントレー コンチネンタルGT スピード コンバーチブル
全長×全幅×全高:4820×1945×1390mm
ホイールベース:2745mm
重量:2530kg
エンジン:W12DOHCツインターボ
排気量:5998cc
最高出力:472kW(642ps)/4500rpm
最大トルク:840Nm/2000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:275/35ZR21
価格:2930万円