モチーフは40年前の名車を彩った「BMW Art Cars」

2017年シーズンを戦う、BMW M6 GT3。ドライバーはヨルグ・ミューラーと荒 聖治。
BMW Group Tokyo Bayの特設ステージで公開されたBMW Team StudieのM6 GT3は、直線を組み合わせた幾何学模様で全身が覆い尽くされていた。シンプルなのに力強いデザインが印象的だが、実はインスパイアされた原点ともいうべきクルマが、1976年にデビューしている。それが、「BMW Art Cars」と呼ばれる、特別なBMWの1台だ。

インスパイアされたという、フランク・ステラの「3.0CSL」。実に個性的かつスタイリッシュ。「BMW Art Cars」としては、二代目にあたる。
「BMW Art Cars」はもともと、ドイツ本国のBMW社が時代を代表するような芸術家に自社の最新モデルを「カンバス」として提供し、ペイントしてもらったクルマたちのこと。1975年に米国人彫刻家、アレクサンダー・カルダーがBMW「3.0CSL」をカラーリングしたのが始まりだった。以来、2016年までに19台の「BMW Art Cars」が生み出されている。
面白いのはそのクルマたちが、単なるお飾りのアートではないところだ。実際、カルダーが友人のレーシングドライバーのためにペイントした3.0CSLは、その姿のままでルマン24時間耐久レースに参戦した。その後の歴代「BMW Art Cars」も、ルマン24時間やデイトナ24時間などの有名なレースを戦っている

アレクサンダー・カルダーが1975年にペイントした「BMW 3.0CSL」。これがサーキットを疾走したのかと思うと、ワクワクしてくる。
「速さとアートの融合」で頂点に立つことはできるか!?
カルダーのマシンが実戦投入されたことで、「BMW Art Cars」は速さとアートを融合させた特別な存在として話題を呼んだ。BMW Team StudieのM6 GT3がイメージを受け継いだ1976年型の3.0CSLもまた、ルマンに参戦している。作者はフランク・ステラ。大戦後のアメリカの抽象画界を代表する人物が描いたアートが、今ふたたび日本のサーキットシーンに挑戦する。
40年の時を経て復活した「速さとアートの融合」は、2017年のスーパーGTでどんな活躍を見せてくれるのか。興味津々であるとともに、どうせだったら2018年はアンディ・ウォーホルが手がけた「BMW Art Cars」のカラーリング復活を、期待したくなる。

ウォーホルが、1979年にひとりで仕上げたと言われている「BMW M1 Group 4 Racing Version」。さすがに前衛的すぎるだろうか。

こちらもなかなかスタイリッシュな、ポップアートの巨匠、ロイ・リキテンシュタインの「320i Group 5 Racing Version」。1977年の作品だ。2017年シーズン用カラーリング候補として、いかがだろう。