上質な座り心地のフルバケットシートに新型の変化を感じる
ベース車のシビックより、気持ち着座位置が下げられた専用開発のバケットシートに乗り込む。これがなかなかいい感じ。思えばかつてのシビックタイプRのシートはかなりタイトで、やや厚みのある(?)私の身体には窮屈だった。点で支えられている感じで、身体のあちこちが痛かったものだ。それが先代で大きく改善されて、(タイトなのは相変わらずなのだが)身体を支えるポイントが点から面に、包み込むようなホールド感に変わってきた。今回、さらに洗練されて、これなら長距離ドライブも苦もなくいけそうである。
ウインドー越しに見える景色は独特だ。スポーツカーのようなボディとルーフの隙間から覗くような景色ではなく、かといって実用車然としたアップライトなものでもない。オープンな視界でありながら、スポーティ。こんなところにも量産車ベースであるタイプRらしさを感じる。
第3の走行モード「Comfort」が生み出す絶妙のGT風味
こんどのタイプRの注目点は、走行モードに新たに「Comfort 」が設けられたところだ。従来は「Normal」と「+R」だけだったが、より快適な乗り味を提供する楽ちんモードが新設定された。
まずは、この新モードにスイッチオン。クラッチをつなぐとスルスルと走り出した。確かエンジンの最大トルクは先代と同じはずなので、性能曲線が変わっているはず。これがタイプR? と感じたほど乗りやすい。ステア特性はマイルドになり、電子制御ダンパーの特性も欧州GTカーのようなたっぷりとしたストローク感がある。さらに攻め込んでいったときの挙動まではわからないが、少なくとも公道ドライブの速度域では極めて良く出来たGTカーのような乗り味を提供してくれそうだ。
だからと言って、軟弱になったわけではない。タイトなシフト、剛性感のあるブレーキは紛れもなくタイプRのDNA。ちょっとオーバースピードでコーナーに入っても、ステアリングを切った方向にぐいぐいと回り込んでいく。ロールはやや大きめだが、リアの接地感は先代タイプRを凌ぐ。「Comfort 」でこれだ。新世代シャシのポテンシャルの高さを垣間見た。
「+R」モードが本領を発揮するのはサーキット
お次は「+R」モードにスイッチ。これはもう万歳したくなるほど。サーキットではないので攻め込むというほどの走りを試したわけではないけれど、それでもシャープになったステアリングとガシッと引き締まった足まわり、猛々しいエキゾーストノートで気分はレーサー。フラットなテストコースなので乗り心地までは判断できないが、前後のロールバランスは理想的で相当高いGをかけていってもへこたれないと思わせる剛性の高いサスペンションは、早くサーキットで試してみたいと思わせる。その本領は、公道や狭いテストコースで味わえるレベルではない。
あくまで短時間の試乗であり、テストコースという限定された環境でのインプレッションだけに、今回の報告は新型シビックタイプRのすべてではない。公道やサーキットで試せば、新たな美点や欠点も見えてくるだろう。もっとも今回のちょい乗りで、新型タイプRへの期待値がさらに高まってしまったのは確か。公道で、サーキットで、早く新型シビックタイプRを存分に味わってみたい。