文:木村好宏/写真:Kimura Office
ゴルフ ブルーモーションは無駄なくスムーズな走り。〝エコ〟はかなり気持ちいい
一般道路の平坦な直線路に入り、およそ100km/hくらいでアクセルペダルをわずかに緩めてみた。すると、レヴカウンターの針がストンとゼロに落ち込んでエンジンが停止。そしてそのまま、まさに風に乗るかのように、長いコースティングが始まった。速度はあくまでごくゆっくりと下降していくので、後続車から邪魔者扱いされることもない。
あらためてこのブルーモーションモデルに関連するすべてのメカニズムが、いかに無駄なくスムーズに働いているかがよくわかる。しかも走行状況に応じて、まずはシリンダー休止システムが働いて2気筒状態で走り、やがて必要があれば4気筒に自動的に切り換わる。必要なパワーに応じて、エンジンが気筒数を適切に制御してくれるのだ。
その結果、燃費は暫定数値だが100kmあたり4.6L、日本の表記に単純換算すると21km/Lとなる。またこれも最終的な数値ではないが0→100km/h加速は9秒、最高速度は205km/hに達する。つまり実用性に関しては、ドイツのアウトバーンを走る時でも、まったく問題はない。
課題らしい課題といえば、エンジンが完全に停止した時に、補機類を働かせるために必要なエネルギー供給をどう確保するか、ということだろう。このゴルフ ブルーモーションの場合は、通常の12V 59Ah鉛バッテリーのほかに、同じく12Vながら6Ahのリチウムイオンバッテリーを、ドライバーズシートの下に積んで対応している。
ドイツ市場を皮切りに、各国で販売が開始される予定。ただし、日本への輸出に関しては、この時点でまだ決まっていない。
高価でレアな各種資源を使って「水素、水素」と先走っている日本の自動車メーカーは、48Vのマイルドハイブリッドでさえ「無視」している状況にある。ともすれば、このプロトタイプのような12V+12Vソリューション、すなわちマイクロハイブリッドなどは鼻先で笑い飛ばされてしまうかもしれない。しかし現在、入手できる資源/技術をベースに、地道にCO2排出量を減少させることの方がどれだけ大切かを、今回の試乗を通じて改めて実感したのだった。
日本の自動車メーカーが先を急ぐばかりに、東芝などの大手家電メーカーのような「末路」を迎える状態を見たくない、と思っているのは、けっして私だけではないと思う。