ユーザーの声に応えてハイラックスが上陸!
思わずニヤリとしてしまうニュースが飛び込んできた。ハイラックスの復活である。筆者は20代前半、アメリカンカルチャーに憧れピックアップトラックを乗っていただけに、ハイラックスは憧れの存在。その現代版に触れられるのだから、胸がワクワクしないわけがない。
新型は約13年のブランクを超えての登場。復活の背景にはマーケットからの声があった。日本にはまだ 9000名のハイラックス保有者がいて、代替え先がないことにオーナーたちが不満の声を上げていたという。主な使用者は、農業、林業、漁業に携わる方々とそれぞれの官公庁。まさに、あのBJジープ時代からのお得意先である。
そこで今回、タイで生産される新型ハイラックスの日本導入に至った。ご覧のダブルキャブ(4ドアのキャビンをこう呼ぶ)である。この他に海外市場では 2ドアのシングルキャブとエクステンドキャブもあるが、今回日本向けにはこいつが選ばれた。ハッキリ言ってスタイリングはキャビンが小さい方がかっこいいが、実用性も鑑みればこれも悪くはない。それに思いの外スタイリッシュに仕上がっている。
ボディ構造は、言うまでもなくラダーフレームを採用。フロントは独立懸架式で、リアはリジッドアクスル式のサスペンション、いわゆる“板バネ”だ。その理由は、こういったクルマの使われ方が、それを要求しているから。仕事用としてのタフさはラダーフレーム+リジッドアクスルに尽きる。ちなみに、この形式はトヨタにとってマイナーではない。彼らは大きく分けて4種類のラダーフレームを使っている。ランクル200/タンドラ/セコイヤ用、プラド/フォーランナー/タコマ用、ランクル70用、そしてこのハイラックス用といったように、仕向地と用途によってここまで作り分けている。
仕事での使用が前提の足まわりと機動性は?
ただ、今回のハイラックスを実際に走らせると、乗り心地は決して良くない。リアのリーフスプリングが強く、ヒョコヒョコとピッチングが気になる。フロントシートでそうなのだからリアはもっと厳しいだろう。長距離は疲れそうだ。
開発担当者にその辺を告げると、今回はワークユースが前提で、リアに積載物を載せた状態に合わせていると言う。確かにベッド(荷台)に荷重が掛かれば跳ねは収まる。となると、今後レジャー用は別設定が必要になるであろう。対策としてはリーフを一本抜くかベッドにキャノピーをかぶせる手もあるが…。
エンジンは、2.4L直4のディーゼルターボエンジンでコモンレールを装備した直噴式となる。つまり、日本の排出ガス規制を正面からクリアしたトヨタの自信作だ。DPRも尿素SCRも付いている。このユニットは一時期話題になったプラド用の2.8ℓユニットがベース。仕向け地の都合に合わせ、ダウンサイズが図られたと考えられる。とはいえ、1600回転から発生する400Nmのトルクとファイナルギアを別設定したことで、力強さはイメージ以上。赤信号後のスタートでももたつきはなく、この大きなボディが乗用車感覚でスッと前へ出る。感覚的には4気筒よりもマルチシリンダーに近い。それにガラガラ音もかなり消されていた。
4WDシステムはシンプルな機構が搭載された。ギアをニュートラルにしダイヤルを「4H」にするだけのパートタイム式。一輪が空転するとブレーキをかけ他の車輪にトラクションを分けるタイプだ。脱出用にはリアデフのロック機構が備わる。インテリアは、いわゆるユニバーサルデザインで現代的。トラック然とはしていないのでとっつきやすい。
といった新型ハイラックス。ネガティブポイントは5300mm超の全長と1ナンバーといったあたり。とはいえ、他にはない魅力たっぷり。高級 SUVの逆張りで、こいつでグランピングなんて相当かっこいいと思わない?
ハイラックス Z 主要諸元
●全長×全幅×全高:5335×1855×1800mm
●ホイールベース:3085mm
●車両重量:2080kg
●最小回転半径:6.4m
●エンジン型式・レイアウト:2GD-FTV・直4ディーゼルターボ
●総排気量:2393cc
●最高出力:110kW[150ps]/3400rpm
●最大トルク:400Nm[40.8kgm]/1600〜2000rpm
●駆動方式:パートタイム4WD
●JC08モード燃費:11.8km/ℓ
●燃料・タンク容量:軽油・80ℓ
●タイヤサイズ:265/65R17
●価格:374万2200円(税込)
文:九島辰也/写真:森山俊一