ホンダのオープンFRスポーツ「S2000」は発売から10年間、フルモデルチェンジをすることなく絶版となってしまって7年が経過した。ここにきて名車として認知されてきたのか、中古車市場での相場は高値を維持しており、その人気は衰えを知らない。そんなS2000にはホンダスポーツの象徴である「タイプR」がなかったのだが、その裏事情とは?
画像: 【裏事情】ホンダS2000にタイプRの称号を与えなかったワケとは

ホンダ創立50周年記念車のS2000。デビューから18年が経過した今も人気

本田技研工業創立50周年記念として1998年に発表され、翌1999年4月に発売されたS2000。ホンダとしてはS800以来となるFRのオープン2シータースポーツモデルということで話題を集めた。一切の妥協を排して開発されたメカニズムは、そこまでやるか(!?)と呆れるほど。

久々の後輪駆動となるシャシやドライブトレーンも専用開発。オープンボディでありながらクローズドボディに匹敵する高い剛性を実現したハイXボーンフレームは、世界中を驚かせ、またその走りはホンダ党を驚喜させた。

新開発された2L直4DOHC VTECエンジン、F20C型の最高許容回転数はなんと9000rpm。当時の高性能エンジンの目安だったリッター100psを大きく超え、最高出力は250psを実現。自然吸気でリッター125psという超高性能を誇っていた。

エンジン開発者は「もうこんなエンジンは二度と作れません」と語り、回すほどに快感を覚えるエンジンに仕上がっていた。しかし、それはラフなクラッチミートをすればエンストを引き起こしてしまうほど低速トルクが不足していたのも事実。実用性より非日常性を重視したクルマとして、スポーツカーファンを魅了してきた。

ただ、本気が過ぎたのか、初期型ではその性能をフルに引き出すには相当なテクニックが必要だった。では、これほどのポテンシャルを秘めているS2000に、ホンダのスポーツモデルに欠かせない「タイプR」がなぜなかったのだろうか。

タイプRの条件はサーキットでの速さ。ではS2000に欠けていたものとはなにか

デビューから1年後、S2000にはクイックなハンドリングを提供する可変ステアリングギアレシオ(VGS)を採用した「タイプV」が追加設定された。その後、2回の小変更を受け、発売から6年後には輸出モデルで先行していた2.2Lエンジンに換装される。最高出力こそ10psダウンの240psとなったものの、低速トルクが太くなって扱いやすさは向上。これと同時に、派手なエアロパーツをまとった「タイプS」を追加設定された。

このタイプS、見た目からすると「タイプR」と名乗っても良かったのでは思うほどスポーティな外観をしていたが、なぜそうしなかったのか? ホリデーオート誌のインタビューで、S2000の開発責任者だった上原繁氏にその当時の話を伺ったときのエピソードを紹介しよう。

上原氏「S2000になぜタイプRが出なかったかって? それは簡単です。タイプRを生み出せるクルマではなかったからです。S2000はオープンを気持ち良く走るためのモデルです。オープンカーでも剛性は高い。ですがタイプRと名乗るならば、サーキットでガンガン走っても負けないクローズドボディでやることになったでしょう。なのでS2000ではタイプSにとどめておいたわけです」

ホンダにとって「タイプR」という称号は、サーキットでパフォーマンスをいかんなく発揮できるモデルにこそ与えられるものだったわけだ。素人考えでは、ノーマルのS2000だってサーキットを結構走れると思うのだが、ホンダ社内ではこのバッヂを与える基準には達していなかったということなのだろう。

画像: タイプRの条件はサーキットでの速さ。ではS2000に欠けていたものとはなにか

たしかにタイプRが設定された歴代モデルを振り返ってみると、NSX タイプR(NA1→NA2)、インテグラ タイプR(DC2→DC5)、シビック タイプR(EK9→EP3→FD2→FN2→FK2→FK8)とすべてがクローズドボディとなっている。ビートやS660にタイプRの設定がないことにもうなずける。

タイプRの印象について「ちょっと足回りはハードすぎるし、ハンドリングもスパルタンすぎる」なんて声も聞かれる。しかし、タイプRはそれでいいのだ。スパルタンなクルマがイヤな人は、ホンダのタイプRを選ばなければいいだけの話。まさにホンダのタイプRに対する思い入れの強さをうかがえるエピソードと言えるだろう。

S2000進化の変遷。「10年間1世代で貫く」

AP1

1999年4月〜 デビュー
新開発のF20C型2L直4DOHC VTEC自然吸気エンジン(250ps/8300rpm)を縦置きしたS800の後継となるFRオープンスポーツとして登場。新骨格のハイXボーンフレーム構造を採用し、クローズドボディと同等の剛性と衝突安全性を確保している。6速MTのみで、新車価格は338万円だった。

2000年7月〜 「タイプV」を追加設定
デビューから1年が経過して、世界初のステアリング機構「VGS(車速応動可変ギアレシオステアリング)」を装備した「タイプV」が追加設定される。VGSによるステアリングレスポンスの向上に加えて、専用シャシセッティングを施し、より操縦安定性を高めている。D型ステアリング採用。

AP2

2005年11月〜 排気量を2.2Lに変更
発売から6年半が経過した2005年11月にビッグマイナーチェンジ実施(型式はAP1からAP2に)。エンジン排気量を200ccアップしたF22C型を搭載したほか、ドライブバイワイヤ化することで、出力制御システムを一新している。外観では17インチアルミホイールを採用している。

2007年10月〜 「タイプS」を追加設定
2007年10月にベースモデルの一部改良を実施。それと同時に専用エアロパーツとサスペンションチューニングを施した「タイプS」を追加設定している。北海道・鷹栖テストコースで鍛え上げたスパルタンな仕様としており、S2000の最終仕様として今なお高い人気を誇る。

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