スポーツドライビングで知っておくと良いのが摩擦円の概念。タイヤは縦方向と横方向のグリップを持ち、必要なとき十分に引き出して走ることが必要になる。それを表しているのがこれだ。
画像: 【超高速ドラテク講座】第5回「摩擦円」縦と横を足して100%ではない。ベクトルで考えると理解が深まる【ホリデーオート】

摩擦園を自在に操るのが
ドライビングマスターだ

ドライビングテクニックを語る際に、「摩擦円」という言葉が出ることがある。なんとなくタイヤの性能を表すものというイメージを持っている人が多いかもしれない。

摩擦円というのは、タイヤのグリップ力の限界を円で表したものだ。加速・減速方向で働く力とコーナリング方向で働く力をベクトルで表し、その合力は摩擦円を越えることはできない、というのがその考え方。

これを具体的に考えてみると、ブレーキでタイヤのグリップ力を摩擦円の限界(100%)まで使ってしまうと、コーナリングのためのグリップ力は0%になり、ステアリングを切っても反応しないということを意味する。この辺の話は前回書いた。

だが、ブレーキングの終わりとステアリングの切り始めをシンクロさせれば、フロント荷重が残って摩擦円が大きくなっている時にコーナリングのためのグリップ力も使えるので、しっかりと曲がっていくことになる。これがブレーキを残す意味だ。

タイヤのグリップ力の限界まで使ってコーナリングしている時には、外側のタイヤの摩擦円が大きくなって、コーナリング力も摩擦円のぎりぎりを使っている。

この状態でブレーキングをするのは、減速方向のグリップ力を使うことだが、それはすでに残されていない。つまり減速できないのでアンダーステアを出してコースアウト!ということになる。

またハイパワーの後輪駆動車で無理矢理パワーをかければ、前に進むのではなくパワースライドしてスピン!ということにもなりかねない。

摩擦円で勘違いしやすいのが、加減速時の縦方向のグリップ力とコーナリング時の横方向のグリップ力の関係。たとえば「ブレーキングで80%の力を使うと、コーナリングでは20%の力しか使えない」と足し算で考えてしまうことだ。

これは「摩擦円の基本」の図を見てもらえばわかることなのだが、(A)ブレーキ力と(B)コーナリング力の合力が摩擦円の限界となるために、足し算ではない。要するに直角三角形の各辺の長さを求める式となる。

画像1: 摩擦園を自在に操るのが ドライビングマスターだ

図のように(A)ブレーキングで80%の力を使った時の(B)コーナリング力を知る場合、(B)は(C)の二乗から(A)の二乗を引いた値の平方根となり、コーナリング力60%となる。これから見るとブレーキ力を本当にぎりぎりいっぱいまで使っていなければ、意外とステアリングも効くし、コーナーもある程度余裕を残していれば慎重なブレーキングで減速できるということだ。万が一のときにも諦めずにコントロールすればなんとかなる可能性があると言えるだろう。

摩擦円の中の力も、ただやみくもに限界まで出せば上手なドライビングか?と言えば、そういうわけでもない。ドカンとブレーキングをして、ズバッとステアリングを切ったりすると、クルマの姿勢が非常に不安定になって危険でもある。

加速方向、減速方向、コーナリング方向の力の動きはG(重力加速度)の動きと言い換えても良く、前後左右だけでなく、その過渡領域を含めて、その時の摩擦円の限界近くをスムーズにつなげていくのが上手で速いドライビングと言える。

ちなみに、実際には摩擦円は真円ではなく縦長の楕円に近い。つまりタイヤはそれだけ前後方向のグリップを重視して作られているのだ。

クルマの速さというのは、最終的にはタイヤと路面の関係によって決まる。いくら大パワーのクルマでも、しっかり路面をグリップをしなければ、それを活かすことはできない。

またアンダーパワーのクルマでも、ツイスティーなコースで上手なドライバーがタイヤの持てる能力を引き出して使えば、意外な速さを見せることがあるわけだ。こんなことを考えながらドライビングすると、新たな発見もあるかもしれない。

画像2: 摩擦園を自在に操るのが ドライビングマスターだ

■解説:飯嶋洋治/■写真:井上雅行/■イラスト:きむらとしあき

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