2020年に水平対向ディーゼル廃止というウワサもあるが
スバルの水平対向ガソリンエンジンとして長年主力を張ってきたEJ型。本体の高い剛性やバランスシャフト不要の軽量性、振動の少なさなど多くの強みを持つパワートレーンとして1989年にデビュー、現在でも一部の車種に採用され続けている。ただ利点ばかりではなく、もちろんデメリットもあった。
そのひとつが、ショートストロークゆえの薄い低速トルクだ。シリンダーが水平方向に伸びることから、あまり広くないエンジンルームのスペースをとってしまうため、ストロークを長くすることができなかったのだ。事実、EJ20型(2L 対4気筒)の基本設計はボア92.0×ストローク75.0mmと、超ショートストローク。低速トルクが薄い反面、高回転までスムースにまわる気持ちのいいエンジンとしても知られ、世界で広く浸透していた。
ただこれも、カンパニー制度がありランニングコストを重要視する傾向にある欧州の諸国民にはあまり通用しなかった。とくにアウトバーンでの低燃費性において、低回転を維持できるディーゼルエンジンの人気は今の時勢でも高い。
そこで1990〜2000年代当時、欧州戦略に苦戦していたスバルが一発逆転を狙って開発したのが、初の自社開発ディーゼルエンジン2L 対4気筒ターボの「EE20型」だ。これが2008年にBP/BL型のレガシィシリーズ(4代目)へはじめて搭載された。
ただ、ディーゼルエンジンの一般的なロングストローク設計ではボンネット内に収まらず、ボア×ストローク86.0×86.0mmというスクエアストロークにせざるをえなかった。さらに、ピストンやシリンダーヘッドのコンパクト化など開発陣の努力も実り、世界に類を見ない水平対向ディーゼルエンジンは完成した。08年の発売後、振動の少ない回転フィールや低燃費性能などが欧州市場で高く評価され、インプレッサやフォレスターなど搭載車種を徐々に増やしていった。
市場からの要望もあって日本にも導入しようとする動きも一時期あったものの、いつの間にか計画は消滅。さらに、厳しくなる排出ガス規制やダウンサイジングターボの台頭、ディーゼルゲート問題のマイナス要素、PHEV・EV開発への注力などいくつもの要素が重なり、2020年までにスバルはディーゼルエンジンを廃止するのではないか、という記事が複数メディアで報道されていた。
さてそんなEE20型ディーゼルエンジン、現在ではドイツやスウェーデンなどでフォレスターに搭載され、2.0Dとして販売されている。最高出力147ps/3600rpm、最大トルク350Nm/1600-2800rpm、燃費約15.9km/L(EU準拠・総合)のスペックで、6速MTかCVTの組み合わせとなる。もちろん4WDで、ヒルディセントコントロール(HDC)のX-MODEを組み合わせた高い悪路走破性も好評だという。
そして、フォレスターは2018年6月下旬にフルモデルチェンジ(国内仕様・ホリデーオート編集部情報)を迎える。次期型ではターボエンジンを採用しないという衝撃的なニュース(http://web.motormagazine.co.jp/_ct/17156428)もあったが、これと同時にディーゼルエンジンも廃止するのではないかという情報も入ってきている。もしこれが本当だとすれば、EE20型の存続は風前の灯だ。2020年に廃止という話も公式発表ではないので早まる可能性も考えられる。
購入には高いハードルもあるが、それでも手に入れたいという人は生産終了前に注文していた方がいいかもしれない。