世の中には市販を検討しながらも、残念ながら量産には至らなかったクルマが存在する。今回ご紹介するマツダのファミリアSPORT-4もそんな一台。当時参戦していたWRCを意識したクルマで、1989年の東京モーターショーに出品された。

7代目のBG型ファミリアが発売されたのは1989年2月のこと。最上級スポーツグレードは、1.8Lの直4ターボを搭載したGT−Xで、当時としてはクラス最高レベルの180psを絞り出していた。駆動方式は4WDで、センターデフにはビスカスLSDを、リアデフには純正でビスカスLSDが装着されていた。前後輪の駆動力配分は前43:後57で、旋回性能を重視した味付け。しかも4輪駆動ながら、4輪ABSも備えるなど先進性も兼ね備えていた。マツダはこのクルマをWRCのグループNに投入。初年度と91年には、ドライバーズ・チャンピオンを獲得している。

画像: 穴だらけのボンネットとバンパー、張り出した前後のフェンダー、そして巨大なリアスポイラー…こんなファミリアが存在したなんて、すっかり忘れていました!

穴だらけのボンネットとバンパー、張り出した前後のフェンダー、そして巨大なリアスポイラー…こんなファミリアが存在したなんて、すっかり忘れていました!

そんなWRCでのイメージを強調するため、ワンオフで製作されたのが、1989年の東京モーターショーに出品された「ファミリアSPORT-4」だ。パワートレーンは1.8ℓ直4ターボの吸排気系を見直し、一挙に220psまでパワーアップ。ウイークポイントと言われていた放熱の問題を解決するため、インタークーラーの位置を変更し、ボンネットやバンパーには冷却用ダクトが追加されている。また、ボディはかつてのグループBマシンを彷彿とさせるワイドフェンダーと巨大なリアフェンダーが装着され、凄みのある外観となっていた。

画像: 室内にはロールケージが張り巡らされ、前席はフルバケットシート。エンジンはベース車の180psから、220psまでパワーアップされていた。

室内にはロールケージが張り巡らされ、前席はフルバケットシート。エンジンはベース車の180psから、220psまでパワーアップされていた。

SPORT−4はワンオフで終わったが、その技術的なノウハウは1991年に限定生産されたコンペティション・ベースグレードのGT-Rに継承され、こちらは210psを発生していた。それにしてもこのSPORT−4は、当時の資料を当たっても詳細な記録は残っておらず、現在の行方も不明。恐らくショー終了後にツブされてしまったと思われるが、もしかしたらマツダの倉庫の片隅で埃を被っているかもしれない…。

画像: はったりではなく、ちゃんと走った。当時参戦していたWRCのノウハウが投入された貴重なワンオフモデルだ。

はったりではなく、ちゃんと走った。当時参戦していたWRCのノウハウが投入された貴重なワンオフモデルだ。

This article is a sponsored article by
''.