トヨタは量販型の燃料電池(FC)バス「SORA」を発売した。すでに都バスには3台が納入され、東京駅-東京ビッグサイト間で運行されている。今回、デモ用にトヨタが所有している車両に試乗(もちろん運転はできないが)する機会を得た。

主要コンポーネントはMIRAIから流用

SORAとは、空(Sky)から降った雨が、大海(Ocean)へと川(River)を下り、空気(Air)に姿を変えて空に帰る。そんな自然の循環を促す水素社会の進展を、空から見下ろす。その想いとメッセージをシンプルで誰にもわかりやすい名前に託したという。

まずはSORAの簡単なプロフィールを紹介しておこう。
全長約10.5×全幅約2.5×全高約3.4m。街中を走っている路線バスとサイズは変わらない。車重は約11トン。普通のディーゼルエンジンのバスより少し重い。
バスなので基本的には箱形のスタイルだが、辺の部分を「面取り」した立体的な造形は、なかなか斬新だ。サイドウインドーも大きく、近未来的な印象を受ける。
ユニバーサルデザインの室内は明るく、広い。乗車定員は座席22+立席56+乗務員1の79人。自動格納機能付きシートや、車いす用のスロープも備えている。

画像: 明るく広い車内。手前左側の座席は自動格納機能付き。

明るく広い車内。手前左側の座席は自動格納機能付き。

パワーユニットは、FC乗用車のMIRAI用の水素タンク10本(MIRAIでは2本)をルーフ前方に、後部にFCスタック(MIRAIと同じもの)を2基備える。モーター(これもMIRAIと同じもの)を2基並列し、後輪を駆動する。
FCスタックの最高出力は114kW(155ps)、モーターのスペックは113kW(154ps)/335Nm(34.2kgm)。いずれも2基あるから数値は2倍になる。駆動用のバッテリーはクラウン ハイブリッド用のニッケル水素電池を4基搭載する。

画像: 運転席まわりの形状は日野のバス「ブルーリボン」とほぼ同じだが、メーターやモニターは専用のもの。

運転席まわりの形状は日野のバス「ブルーリボン」とほぼ同じだが、メーターやモニターは専用のもの。

600L(およそ15分で充填できる)の水素で、都内のバスの一般的な走行モード(最高速はせいぜい70km/h)なら、航続距離は約200km。路線バスの1日あたりの平均走行距離は約150kmというから、1日の運行には十分だろう。もちろん排出ガスはゼロだ。
ちなみに価格は「1億円+α」だそうだが、国や自治体の補助金を受けられるので実質的にはディーゼルエンジンのバスと変わらないという。

画像: フロントウインドー上と車内中央のルーフに設置されたモニター。路線バスでは行き先などを表示する。

フロントウインドー上と車内中央のルーフに設置されたモニター。路線バスでは行き先などを表示する。

車内に乗り込んで以上のような説明を受けたあと、SORAは走り出した。
試乗日は好天で気温も高く、車内のエアコンは強めでコンプレッサーの音が気になるが、走行音は静か。後方の席に乗れば、普通のバスならエンジン音をうるさく感じるが、モーター音はそれほど大きくない。車内で普通に会話しているのが、けっこう離れた席でも聞こえるくらいだ。
乗り心地もいい。モーター走行だから変速ショックはないし、急加速を抑制し緩やかな発進を可能にした加速制御機能により、立っている乗客の安全性にも配慮したという。

今回は霞ヶ関周辺で短時間の試乗だったが、SORAの先進性を垣間見ることができた。近いうちに路線バスでジックリ乗ってみたいものだ。
なお、SORAは大容量の外部電源供給システムも備え、災害時の体育館などの避難所に5日分の電源を供給できる。環境に優しく、いざというとき頼りになるFCバスは、2020東京オリンピックに向けて100台以上の導入が予定されている。
(文:篠原政明)

画像: 車内外に配置した8個のカメラで周囲の歩行者や自転車などを検知する、視界支援カメラシステムも搭載。

車内外に配置した8個のカメラで周囲の歩行者や自転車などを検知する、視界支援カメラシステムも搭載。

トヨタ SORA 主要諸元

全長×全幅×全高:10525×2490×3340mm
FCスタック最高出力:114kW(155ps)×2
高圧水素タンク:60L×10本
モーター最高出力:113kW(154ps)×2
モーター最大トルク:335Nm(34.2kgm)×2
駆動用バッテリー:ニッケル水素電池
乗車定員:79名(座席22+立席56+乗務員1)

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