44年の歴史をもつ“ロイヤルサルーン”
トヨタクラウンと言えば、1955年デビューと日本で最も長い歴史を持つ伝統と格式にあふれたフォーマルカーである。その15代目となる新型が6月末に発売開始となるが、そこには“ロイヤルサルーン”というグレードがない。
ロイヤルサルーンは1974年デビューの5代目で初登場したグレードで、以後、クラウンと言えばロイヤルサルーンが定番となった。そこに変化が見られたのは1999年の11代目で、パーソナルユースを想定したスポーティな“アスリート”が新たに登場した。これ以降はロイヤルサルーンとアスリートがクラウンの二枚看板となった。
その看板がなくなってしまった。ロイヤルサルーンとともにアスリートも消滅、さらに格上のマジェスタも15代目には存在しないという。クラウンにいったい何が起こったのか。ここにはトヨタのどんな意図があるのだろうか。
そこにはユーザーの若返りに向けたトヨタのなみなみならぬ決意がある。実はクラウンユーザーの高齢化はことのほか急激に進んでいた。かつてクラウンユーザーの平均年齢が60歳を超えたと聞いたのは10年ほど前のことだっただろうか。
現在もそのくらいなのかと漠然と思っていたが、実はそれが66歳になっているのだという。さらにロイヤル系に限って言えば、なんとそのユーザー平均年齢は70歳だそうだ。
トヨタにしてみれば、60歳くらいで安定していればよいのだろうが、それが時の経過と共にどんどん上がっていくということであれば、抜本的な対策を講じなければならない。なぜならこのまま平均年齢が上がっていけば、いずれユーザーがいなくなってしまうことになりかねないからだ。
そこで従来のクラウンの概念を一掃すべく、まず伝統的なグレードを廃止したということだ。そしてそれはもちろん名前だけの問題ではなく、内容的な革新をともなうことになる。
スタイリングで言えば6ライト(リアドアの後ろ部分に窓がある)を採用したが、フォーマルなイメージを強調していた従来では考えられなかったことであるし、また詳細はまだ明らかではないが、最新の“コネクティッド”技術も投入されている。
そして、トヨタとしてはメインとなるユーザー層を40歳代半ばから50歳代半ばにしたいということのようだ。こうしたトヨタの目論見は成功するのか。以後、数回にわたって様々な側面から「新型クラウンの秘密」を見ていきたい。