本格派SUVにはいまも採用されているラダーフレーム
50年以上前の乗用車は、トラックと同じように頑丈なフレームの上にボディを被せていた。その下にサスペンションやタイヤなど走行に必要な部品を取り付ける手法だ。これが馬車の時代から採用されている伝統的なフレーム構造である。
その基本は、前後方向に配した2本のレールに鎹(かすがい)のような鋼板を何本か通す、はしご型のラダーフレームである。代替サイクルが長くて頑丈で、耐久性も高い。荒れたオフロードを走るとサスペンションが大きく動き、ボディへの突き上げも激しくなる。強固なフレームでその強大な入力をしっかり受け止めないとボディに大きな負荷がかかり、ねじれ、亀裂が入ってしまうこともある。
フレームと、上屋と呼ばれるボディが独立しているから、ボディデザインの自由度が高く、多くのバリエーションを生み出せるのも魅力だ。
しかし、重量はかさむし乗り心地もあまり良くない。フレームの上に床面を張るから着座位置が高く、居住性の点で不利だ。また、事故の衝撃が後部まで伝わりやすいから、乗員の安全性に不安があった。そのため近年、乗用車では姿を消している。
それでも、トラックやクロスカントリー4WDと呼ばれる本格派SUVは、今もフレーム構造にこだわっている。70系ランドクルーザーやジムニー、ラングラーなどは、ラダーフレームを採用するSUVの代表だ。
現代の乗用車が使っているのは、ボディとフレームを一体化したモノコック構造である。最大の特徴は、軽量化しやすいこと。しかし、1枚の鋼板やアルミ板では強度不足になりやすいため、箱型や筒状にプレス成型したり、折り曲げたり溝を追加するなど強度を高めている。
乗用車のモノコックをベースに、SUVルックのボディを被せたのがクロスオーバーSUVだ。フレーム付きのSUVより軽快なハンドリングを見せ、ボディ全体に入力を分散するから乗り心地もいい。軽量設計だから燃費も良くなる。その反面、ボディがよじれるような過酷な悪路走行は得意じゃない。
そこで両方の長所を併せ持つビルトインフレーム構造が考えられた。ラダーフレームとモノコックボディを溶接し、一体化させたフレームレスボディのことである。優れた耐久性と卓越した走破性、乗用車並みの衝突安全性が自慢だ。パジェロのようなSUVだけでなく、一部の乗用車にも採用例がある。