過酷な環境に耐える性能を持つ。でも、デメリットもある
昔からある鉱物油に対して、最近は100%化学合成油が増えている。クルマによっては100%化学合成油の使用を指定しているものもある。いったい100%化学合成油というのはどんなエンジンオイルなのか。
鉱物油は原油から精製されているが、100%化学合成油も元をたどれば原油からつくられている。しかし、その製造方法は石油会社の中でも極秘中の極秘。正確なところはわからないのだ。ただ、原理としては「原油を化学的に分解して、エンジンオイルに適した分子だけを選別・合成する」というもの。この製造の難しさから価格が高くなっているようだ。
ただこの価格差は、エンジンオイル交換の回数が少なくなることで、ある程度相殺できるだろう。その推奨走行距離は、100%化学合成油指定のエンジンが鉱物油指定エンジンよりも長めに設定されている。
鉱物油が主だった時代、3000〜5000kmでの交換を推奨されていたのに、化学合成油を使うことで1万〜1万5000kmというエンジンも増えてきた。走行を重ねてもオイル性能低下を抑えられるからだ。
とくに熱に強いので、高温になる環境下でも劣化しにくい特性を持ち、酸化に強く、オイル自体の蒸発性も低い。鉱物油に比べると不純物が少ないため、潤滑・冷却・洗浄・消音などの性能を維持できるわけだ。
分子の小ささも特徴として挙げられる。つまり、エンジン内部の隙間やシリンダー壁の小さな凹凸などに入り込んで抵抗を小さくし、燃費を向上させることもできる。この抵抗の小ささは始動性向上にも有効だ。
ただ、利点ばかりではない。鉱物油より吸湿性が高いと言われ、エンジン内部の結露を発生しやすい短距離移動ばかりでは、不利に働くこともある。
やはり100%化学合成油は、高性能車に合っているエンジンオイルと言えるだろう。