ディーゼルエンジン+4WDモデルの登場は朗報
これまでティグアンには1.4Lのガソリンエンジンを搭載するFFモデルしかなかった。それでもタウンユースには十分以上の動力性能を持っているが、ロングドライブが多い人や高速道路を頻繁に使う人、アウトドア派などにとっては、ディーゼルエンジン+4WDモデルの登場は朗報だろう。
ライバルブランドからすでに多くのディーゼンエンジン搭載モデルが登場し、大きなトルクや燃費の良さ、ランニングコストの低さなど、メリットが知られているだけに、待ちに待った登場と言える。
ティグアンはゴルフの発展形と呼べるような位置付けで、サイズ的にはゴルフとパサートのちょうど中間くらい。水平基調のフロントグリルやキャラクターラインが特徴的なエクステリアデザインはクリーンで親しみやすい。
テレビCFでは「いつもの街さえ、面白く変える4WDです。」と謳っている。つまり、タウンユースやデイリーユースをメインと想定しつつ、悪天候や悪路での走行にもしっかりと対応するというコンセプト。ワゴンやハッチバックなどと同じような感覚で乗れる一方で、ちょっとアイポイントが高いので視認性が良く、ロードクリアランスがあるので雪道や悪路でも安心感が高い。
シンプルなデザインながら使いやすい上質なインテリア
インテリアはシンプルだが上質なフォルクスワーゲンのクオリティである。最新のデザインや機能が搭載されている。コクピットまわりには整然とスイッチ類が並び、オーソドックスなデザインの中に必要な情報が得やすい工夫が多く見られる。
たとえばスピードメーターは実用域の60km/hまでスケールが大きく、それ以上は小さくなる。また、メーターパネル内に表示されるナビゲーションの画面もとても見やすい。日常の運転が安全で快適にできるよう、細かい配慮が随所に見られるのは、いかにもフォルクスワーゲンらしい。
センターコンソールには9.2インチのモニターを装備。タッチスクリーンにより、オーディオ設定から車両制御の設定まで行える。スマートフォンに似た操作で使いやすいのもポイント。さらに、操作内容によってはジェスチャーコントロールも可能だ。
また、コネクト機能も備えており、「Apple CarPlay」や「Android Auto」「Mirror Link」に対応しているので、操作だけでなく、スマートフォンのアプリそのものを車両のモニターで操作することも可能となっている。
さらに、ドライバーの目線の先にはヘッドアッププディスプレイも備わる(ハイラインとRラインに標準装備)。最近は装備が増えた分、ドライブ中の情報や操作が多くなっているが、重要なもののブライオリティが明確だ。
いつもながらフォルクスワーゲンのハンドルはちょっと径が細めでしっくり手に馴染む。搭載されるディーゼルエンジンは、2L直列4気筒ターボで、最高出力150ps/3500-4000rpm、340Nm/1750-3000rpmのパフォーマンスを誇る。トランスミッションは7速DCT(DSG)を搭載。一般道から高速道路、そしてワインディングロードを走ったが、どのシーンにおいても気持ちのいい加速を味わえた。
しっかりとした走り味と角のない乗り心地を実現
とくにアクセルペダルの踏み始めからレスポンス良く力強く反応するのが好印象。100km/h巡航時の回転数は1600rpm。つまり、常用域はほぼ最大トルクを発揮し続けているような状態なので、いつでも思いどおりの加速が得られる。
試乗車は235/50R19サイズのタイヤを履いていた。これはSUVやクロスオーバー用のサマータイヤで、快適性を重視したティグアンとの相性もぴったりだ。フォルクスワーゲンらしいしっかり感と同時に、角のない乗り心地を実現、快適性とハンドリングのバランスも絶妙だ。
高速走行では緊張を強いることのない高い直進安定性を示し、ワインディングロードでは俊敏で素直な動きを見せる。DCTの変速も滑らかで、不要な存在感を示すことなく快適。その一方で、ドライブモードをスポーツにしてパドルを駆使すれば、ショートストロークの軽い操作性とリンクする小気味良い走りも味わえる。
ディーゼルエンジンとともに採用された4モーションは、ティグアン用にセッティングされたもので、通常走行の負荷が低い時には効率のいいFFで走行し、発進・加速時にはリアへのトルク配分を増やす。さらに、路面状況に応じて、100:0から50:50まで最適な前後トルク配分を行う。
4モーションモデルに装備されるアクティブコントロールは、「オンロード」「スノー」「オフロード」「オフロードカスタム」の走行モードをスイッチでチョイスできるというシステム。オンロードモードにはさらに「スポーツ」「ノーマル」「エコ」「コンフォート」「カスタム」の5つのドライブモードがあり、駆動配分だけでなくパワーを統合的にコントロールする。今回はラフロードを走るチャンスはなかったが、状況に応じた正確な制御は、キャラクターの変化というほど大きなものではなく、最適化という表現が相応しい。
ボディサイズはちょっと大きなCセグメントと言えるが、その大きさの恩恵はリアシートにも感じられる。ニースペースに余裕があり、エアコンの温度調節やUSBソケットなども装備され、ファミリーユースでも満足感が高いだろう。もちろん、ラゲッジスペースもしっかり確保されている。
激戦区のセグメントであるコンパクトSUVマーケットの中にあるティグアンには、フォルクスワーゲンらしい安心感がある。尖ったキャラクターや奇を衒ったところはないが、「定番商品」の心地よさと言えばいいだろうか。
トルクフルで経済性に優れたディーゼルエンジンと4WDによる走破性や快適性、使いやすいインフォテインメントシステム、広く快適なリアシート、安全性など。日本でもファミリーユースにジャストなモデルと言えるだろう。(文:佐藤久実)
▪️主要諸元:フォルクスワーゲン ティグアン TDI 4モーション ハイライン
全長×全幅×全高:4500×1840×1675mm
ホイールベース:2675mm
トレッド 前/後:1575/1565mm
車両重量:1730kg
最小回転半径:5.4m
ラゲッジルーム容量:615/1655L
エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
圧縮比 16.2
最高出力:110kW(150ps)/3500-4000rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1750-3000rpm
燃料・タンク容量:軽油・63L
JC08モード燃費:17.2km/L
駆動方式:4WD
トランスミッション:7速DCT(DSG)
サスペンション:ストラット/4リンク
タイヤサイズ:235/55R18
車両価格:4,940,000円