モンスターエンジンに昂ぶるシリーズ 第17回は、1969年6月、国鉄専用形式でスタートした日野(HINO)の高速バスRA900P。デビューからその後、現在までにどう進化してきたのかを探ってみたい。

自動車業界だけにとらわれず戦闘機や戦艦、鉄道など、陸・海・空をゆく、あらゆるマシンに搭載された超ド級で怪物のようなエンジンたちを紹介する「モンスターエンジンに昂ぶる」。短期集中連載“第二弾”として2018年末-2019年始に掲載していこう!

本格的ハイウエイ時代の到来ともに進化した、日野の高速バスRA900P

本連載の第7回(https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17193888)で、日本の長距離高速バスの黎明期を紹介した。特に水平対向12気筒17.4LのD140型という専用エンジンを搭載した、日野RA900P(1969年)は先進性と性能に優れ、夜行高速バスの先駆車として、1980年代まで国鉄・東名高速バスの主力として活躍した。

その一方で、1973年と1979年のオイルショックにより原油が高騰。また、深刻化する大気汚染が社会問題となり、高速バスにおいても環境対策が急がれる時代になった。特に「国鉄専用形式」という、特殊な高速性能が要求されない一般の高速観光バスでは、省エネ効率や快適性が重視され、大きな進化が始まっていた。

画像: 1977年頃のRSやRVに搭載された、主力エンジンのEF300。14.2L V8で295ps/2400rpmを発生。

1977年頃のRSやRVに搭載された、主力エンジンのEF300。14.2L V8で295ps/2400rpmを発生。

もっとも大きな転機は、1977年に日野が発売した国産初の「スケルトン構造」のバスといえる。

初期のバスのボディは、大型トラックのはしご型フレームに箱型フレームを組み、鉄板や木板をリベットやネジで接合したものだった。

やがて航空機からのフィードバックで、車体全体を細めの骨組みで構成し、そこに強度のある金属板(外殻)をリベットで止める「モノコック構造」が主流となった。シャシとボディを一体化して、必要な強度を持たせた「張殻構造」は、飛行機やバス、電車など多くの輸送機器で採用された。厳密には異なるが、現在も乗用車やレーシングカーもモノコック構造だ。

モノコックボディのバスは、記憶にある読者諸氏も多いだろうが、外板がリベットで止められ、屋根が丸く、窓枠も丸い縁取りの形状だった。利点ははしごフレームより圧倒的に設計自由度が大きく、軽量化できること。重心を下げ、振動も抑えやすく乗り心地が良いことだった。この構造は、1970年代末期まで主力だったといえる。

そして現在の主流「スケルトン構造」は、アルミやFRPボディのレーシングカーでも見られる「バードケージ(鳥かご)構造」の進化型だ。ボディは細めの鋼管を張り巡らして構成し、薄い外板で覆う。外板に強度を求めない骨格構造である。

モノコック構造と違い外板は単なる覆いなので、一層設計の自由度が大きくなり、軽量化できたため、ダブルデッカー(二階建て)やハイデッカーという背の高いバスが容易にデザインできるようになった。外観から見えない箇所でスポット溶接された大きな外板や、ギリギリまで大きくなった窓ガラスで構成されたボディは、滑らかで美しく、室内も広く快適になり、空気抵抗も減少させられた。

画像: バスボディの革命! 1977年にスケルトン構造のRS120P(下)が登場。従来のモノコック構造のRV系(上)と併売された。

バスボディの革命! 1977年にスケルトン構造のRS120P(下)が登場。従来のモノコック構造のRV系(上)と併売された。

パワーはそのまま、ダウンサイジングで超高効率を誇るミニマムモンスター

スケルトンボディが普及するのと同時に、ディーゼルエンジンの排出ガス規制は段階的に厳しさを増してくる。乗用車用ガソリンエンジンの排出ガス規制が一段落し、大型ディーゼル車の黒煙が目立ってきたからだ。

ディーゼルエンジンの排出ガス規制は数年ごとに強化されるが、当初は触媒や、電子制御燃料噴射装置など燃焼効率の最適化でしのいでいた。また、夜行高速バスの増加と、ハイデッカーなど大型化する車体。その快適装備で不足しがちな出力は、排気量の大型化で対処するようになっていた。

出力重視で競合メーカーを意識していたエンジンの大型化は、1990年代の初代セレガシリーズの頃にピークを迎える。初代セレガの主力エンジンはF20C型、19.7L/V8 SOHC 32バルブで370ps(さらに400ps級のF21Cも存在した)。

画像: 国産史上最大級の20Lエンジンを搭載した、1990年登場のセレガ・シリーズと主力エンジンのF20C。この時期をピークに省エネ・排出ガスクリーン化が進む。

国産史上最大級の20Lエンジンを搭載した、1990年登場のセレガ・シリーズと主力エンジンのF20C。この時期をピークに省エネ・排出ガスクリーン化が進む。

2005年に2代目セレガが登場するとすぐ、「黒煙を撒くディーゼル車を禁止する」という規制(2005年)が実施される。加えて国内経済が低迷期に入ると、環境保護と省エネ化が最優先の時代になる。世界的にも強化される排ガス対策と省エネ要求から、新型セレガではA09C型エンジンが主力になった。360psという出力は、初代東名高速バス(1969年)や初代セレガ(1990年)と大差ない。

しかし、排気量は半分以下の8.9L 直6にまでダウンサイジングされている。この超高効率を可能にしたのがターボと燃料噴射装置だ。シングルでありながら無段階可変ノズルターボと、燃料ガスを金属チューブに最高2000気圧という高圧で蓄圧し、最適噴射するコモンレール燃料噴射方式を採用する。

画像: 最新のセレガはA09Cという小排気量・超高効率エンジンを搭載する。

最新のセレガはA09Cという小排気量・超高効率エンジンを搭載する。

一方、黒煙=微粒子物質(PM)は触媒で浄化された排出ガスからフィルターで捕集し、その集塵物を燃焼させるDPRを搭載。PMの浄化後、NOx=窒素酸化物を尿素水ブーストで窒素と水に分解し無害化するSCRを備えている。この結果排出されるNOxは、規制以前(1974年)を100とすると、わずか3。PMは100に対して1以下という数値を達成している。

ダカール・ラリーで活躍するレンジャー(第11回:https://web.motormagazine.co.jp/_ct/17235862)のエンジンも、A09C型であることを追記しておこう。(文&Photo CG:MazKen/ホリデーオート2017年11月号より)

F20C(1990年〜) エンジン諸元

V型8気筒・SOHC 32バルブ
排気量:19688cc
燃料供給方式:電子制御燃料噴射システム
最高出力:370ps/2200rpm
最大トルク:135kgm/1400rpm
参考燃費:3.6km/L

A09C(2005年〜) エンジン諸元

直列6気筒・SOHC 24バルブ 可変ノズルターボ+インタークーラー
排気量:8866cc
燃料供給方式:コモンレール燃料噴射システム
最高出力:360ps/1800rpm
最大トルク:160kgm/1100〜1600rpm
参考燃費 4.95km/L
平成28年排出ガス規制に適合

画像: 最新の排ガス浄化システム。左半分がディーゼル微粒子捕集フィルタ=DPR。右半分が尿素噴射による窒素酸化物分解装置=SCR。

最新の排ガス浄化システム。左半分がディーゼル微粒子捕集フィルタ=DPR。右半分が尿素噴射による窒素酸化物分解装置=SCR。

※排ガス規制年度により仕様は異なる

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