レーシングカー R8 LMSのパーツを50%も使用
「新型アウディR8はサーキットで生まれ、これまでよりさらに速く、パワフルになりながら、ストリートでも究極のドライビングを楽しむことができます。それはレーシングカー『R8 LMS』の部品を50%も使用しているからです」とアウディ スポーツのミハエル ユリウス レンツCEOは語る。
フェイスリフトを受けた新型R8は動力性能だけでなく、ディテールなどの品質に力を入れている。たとえばカーボンのボディアプリケーションだが、カーボンの編み目は、どのパーツも同じ方向に向いている。そしてドライバーにとって重要なインターフェイスであるハンドルとセレクトレバーのレザーも高品質な仕上がりだ。
こうした高い品質のディテールに加え、精緻な水平のラインが強調されたフロントマスクとブラックアウトされたハニカムデザインのフロントグリルには、3本のスリットが採用された。これは初代クワトロのオマージュだ。
リアエンドには、ハニカム状のエアアウトレットが車幅いっぱいに広がり、中央のディフューザーを挟んで両端に楕円形の大口径マフラーがレイアウトされている。
一方、インテリアも大きくアップデートされ、ドライバーの正面には12.3インチのバーチャルコックピットが新たに採用され、多彩な情報を表示する。
従来モデルのエンジンから大幅なパワーアップを果たす
リアに搭載する自然吸気の5.2L V10エンジンの最高出力は従来モデルに比べ、30ps増の570ps、最大トルクは20Nm増の560Nm。0→100km/h加速は3.4秒、最高速は324km/hと、さらにパフォーマンスがアップしている。
またパワフルなモデル「V10プラス」は、同じ排気量ながら620ps/580Nmへとそれぞれパワーアップされ、0→100km/h加速は3.1秒、最高速331km/hを実現する。
このハイパフォーマンスモデルのR8 V10プラスの究極性能を確認……というか楽しむには、もはや公道では不可能。ということでスペインのマラガ州ロンダにあるアスカリサーキットで、その性能を試した。
まずは、スタンダードのR8で足慣らしをしたのだが、全体的にセッティングが精緻に研ぎ澄まされているのがわかった。とくにエンジンの吹け上がりがシャープになり、ステアリングフィールはクイックでありながら正確なフィードバックが伝わってくる。
新型R8は様々な装備が追加されたことで、従来モデルより若干車重が重くなったにもかかわらず、ブレーキ性能は明らかに向上しており、100km/hからの停止距離は従来より5mも短縮している。
次はV10プラスで2周ほど走行した。初めはダイナミックステアリングシステムを搭載していないモデルで、続いてハンドル比が速度によって10.5:1〜15.8:1の間で変化するダイナミックステアリングシステム搭載車に試乗した。
これはシチュエーションに合わせて最適なステアリング比を選択してくれので、駐車場での切り返しなどで重宝するシステムだ。ドライブモードの「パフォーマンス」を選択すると14:1に固定され、クイックなハンドリングに変化する。
その後、ESPを“オン”にしたままで走行すると、意外にもオーバーステアが発生したが、ESPによって瞬時に適切なパワーが4輪に伝わり、安定したコーナリングを楽しむことができた。
新しいV10エンジンは、ひとたびアクセルペダルを踏みこめば、どの回転域からでもトルクが湧き上がるが、7速DCTよりもやはり8速、9速のDCTが望ましい。
いつものことながら、あっという間にサーキット走行は終わってしまい、後ろ髪を引かれる思いで新型R8の運転席を後にした。新型R8は2019年初頭から欧州で発売される。日本には2019年度中に導入されるだろう。(文:木村好宏)