近年販売台数を増やしているディーゼルエンジン搭載モデル。その燃料である軽油が冬季に凍ってしまうことがあるという。対策はあるのだろうか。

日本各地で季節ごとに5種類の軽油が販売されている

外気温の低下によって、本来の性能を発揮できなくなってしまう自動車部品は多くある。前方・後方の視界確保に役立つウインドーウォッシャーや、エンジン冷却水(クーラント)などは凍結しやすいが、その濃度を調整することで凍結を防止することもできる。また、バッテリーの性能も冬季には低下しやすい。

そしてもうひとつ、凍ってしまう可能性があるものがディーゼルエンジンの燃料、すなわち軽油だ。

この「凍る」という現象だが、カチカチの氷になってしまうわけではない。軽油に含まれるワックス分が低温になると分離、ドロっとしたシャーベット状に凝固しだして燃料フィルターや燃料ラインを詰まらせてしまうのだ。

初期症状としては、アイドリングの不安定化やアクセルレスポンスの低下などといったものがあり、最悪の場合エンジンがストップ、再始動しなくなる。

軽油の凍結現象は、非降雪地域から降雪地域への旅行や、ウインタースポーツのため都市部から山間部へ長距離移動したときなどに発生しやすくなる。というのも、気温に合わせて性能を変化させた5種類の軽油【特1号/1号/2号/3号/特3号】が石油会社によって生産され、地域ごとに販売されているからだ。

画像: JISによって定められている、軽油の性能の一部。流動点が凍結温度の目安で、セタン指数は着火のしやすさを示す。

JISによって定められている、軽油の性能の一部。流動点が凍結温度の目安で、セタン指数は着火のしやすさを示す。

その違いは主に、低温での流動性を表す数値で、凝固する直前の温度を示す流動点だ。表のように、軽油の温度+5度以下で凝固する「特1号」から、−30度以下で凝固する「特3号」までがJIS(日本工業規格)によって定められている。また、流動点の低い(凍りにくい)軽油は着火しやすさを示す「セタン指数」も低いので、エンジン出力や燃費性能も低下するというデメリットがある。

軽油5種類をユーザーに使い分けて欲しいと、日本の石油業界団体である石油連盟は「軽油使用ガイドライン」を公開。下の表のとおり、地域ごとに気温の高い夏季に、流動点/セタン指数の高い「特1号」や「1号」を、気温の低い冬季に「2号」や「3号」を、北海道の一部地域で「特3号」を販売・使用するよう呼びかけている。

画像: 過去に石油連盟が公開した軽油使用ガイドライン。

過去に石油連盟が公開した軽油使用ガイドライン。

ここで注意しなくてはならないことは、前述した「より寒い地域」への移動だ。たとえば12月、東海地方の都市部で「1号」を満タン給油して、月の平均気温が氷点下となることの多い中部(山岳)へ旅行に行ったとしよう。すると「1号(流動点−2.5度以下)」は気温の低い夜間に凍り、翌朝ディーゼルエンジンは始動しなくなってしまうことがある。

こうした場合、気温の上昇と軽油の解凍を待つ、もしくはJAFや自動車修理業者のレッカーを呼ぶことになるだろう。

上記のような旅行を計画したのであれば、都市部での給油は片道分だけにして、目的地の寒冷地で気温の高いうちに「3号(流動点−30度以下)」を給油する方法がひとつ挙げられる。これにより、夜間に凍結してしまう危険性はかなり低くなる。フェリーで北海道をはじめとする降雪地域に入るときも同様だ。

肝心なことは、給油する地域だ。まだまだ寒い日は続きそうなのでディーゼル車オーナーは気をつけよう。

画像: 日本の各地で、その地域の気候にあった性能の軽油が販売されている。

日本の各地で、その地域の気候にあった性能の軽油が販売されている。

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