トルクフルなエンジンに、乗り心地も良い!
軽自動車から超高級車まで、相変わらずSUVブームが続いている。開催されたばかりのジュネーブモーターショーでも、めぼしいコンセプトカーはSUVが大半だ。
ヴェゼルは2013年12月にデビューしたホンダのコンパクトSUV。今までにないクーペライクなスタイルも人気を呼び、トヨタのC-HRをはじめ多くのライバルに影響を与えた。
登場以来5年を経たヴェゼルに新たに加わったのは、1.5LのVTECターボを搭載した「ツーリング」。現行の1.5L、1.5L+モーターのハイブリッドに加えてラインアップを強化し、増えつつあるライバルを迎え撃とうというわけだ。
クロームメッキのフロントグリルやブラック塗装のヘッドライトガーニッシュなどの専用パーツで、外観も他グレードとは差別化されている。全長と全幅もわずかに大きくなっている。
内装もダークグレーとブラウンの専用コンビシートやブラウンのインテリアが上質な雰囲気を醸し出している。
ところで、このツーリングのウリはVTECターボエンジンを搭載しただけじゃない。なんとヨーロッパ仕様と同じ高剛性ボディを採用し、サスペンションも専用セッティング、パフォーマンスダンパーや可変ギアレシオ、アジャイルハンドリングアシスト(コーナリング中に1輪だけにブレーキをかけてライントレース性を高める)まで備えている。
走り出してまず感じたのは、低速からエンジンがトルクフルなこと。意外と野太くスポーティな排気音に似合ったパワーフィールだ。モーターでアシストするハイブリッドの加速もけっこうなものだったが、速さでは負けていない。
ターボエンジンとはいっても「過給してパワーを上げています」というタイプではなく、低回転から自然にターボを効かせるタイプだからターボラグもなく、2L+αのNAエンジンのよう。CVTとの相性も悪くない。
CVTのマニュアルモード7速で高速道路を80km/hクルーズすると、エンジン回転数は約1500rpm。ここからの加速もスムーズで十分速い。しかもこの速度でクルーズしていると、平均燃費は20km/Lをオーバーするほど。
今回、首都高速と市街地をほぼ半々で約70km走行したときの平均燃費は15.2km/L(車載の燃費計表示)。もちろんエアコンは入れっぱなしだし、特にエコランはしていない。ハイブリッドほどではないが、燃費は悪くない。
乗り心地も、いままでのヴェゼルでも悪いものではなかったが、ツーリングはさらに締まったものになった。だがゴツゴツと硬いわけではなく、高速でも市街地でも、そしてちょっと路面の悪い郊外の道でも、ボディのしっかり感が高まったことを感じられ、乗員は快適に過ごすことができる。
ステアリングのフィールも良くなっており、ワインディングでは思ったとおりのラインをトレースできる。このボディや足回りを、ツーリングだけでなく他のモデルにも採用すればいいのに…と思わずにはいられないほど。
ヴェゼルには既に「RS」グレードが存在しているが、パフォーマンスを考えると、このツーリングにRSの名を与えたほうが良かったかもしれない。ただし、ツーリングの駆動方式はFFのみとなる。
スタイルから想像されるよりも広い居住スペースや、ワゴンとしても使える十分に広いラゲッジスペース、リアシート座面はチップアップできるなどの使い勝手の高さは、他のグレードと変わりない。安全運転支援技術のホンダセンシングをはじめ、快適装備も充実している。
SUVでもスポーティに楽しみたいし、都会に住んでいるから4WDじゃなくてもいい。でも、あまり大きなサイズだと扱いにくい。ハイブリッドじゃなくてもいいけれど、燃費は悪くないほうがいい…なんてコンパクトSUV選びで悩んでいる人には、このヴェゼル ツーリングはオススメできる1台だ。(文:篠原政明、写真:井上雅行)