これこそが、公道も走れるレーシングカーだ。
1957年、イギリスのウオークレット兄弟が「ジネッタ」と名づけたコンペティション・スポーツカーの販売を始める。何種類もの小型スポーツカーを製作したウオークレット兄弟だが、1989年には会社を売却。その後、紆余曲折を経たが現在も会社は存続し、少数ながらスポーツカーを作り続けている。
![画像: 現代のコンパクトカー、例えばヴィッツなどと比べても明らかにサイズは小さいが、プロポーションはボリューム感がある。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/03/27/3e5d04fbfe1eeb607370a26bceb5b68681e24170_large.jpg#lz:xlarge)
現代のコンパクトカー、例えばヴィッツなどと比べても明らかにサイズは小さいが、プロポーションはボリューム感がある。
ここで紹介するのは、ウオークレット兄弟が会社を売却する直前まで生産していた「G12」だ。オリジナルは1966年に短期少量生産されたコンペティション・スポーツカーだが、'80年代末期に復刻版として再生産された。
オリジナルと同じ治具で作られた復刻版のG12は、シャシの構造もレイアウトもそのままだが、ボディサイズはひとまわり小さくなっていた。
![画像: 190psと21.6kgmを発生するコスワース製YAC型直4DOHC16バルブをミッドシップ搭載。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/03/27/52bca1ab64fc198593050d37691d095a163e4927_large.jpg#lz:xlarge)
190psと21.6kgmを発生するコスワース製YAC型直4DOHC16バルブをミッドシップ搭載。
ミッドシップに搭載されるエンジンは、オリジナルは158psを発生する1.6Lの直4 SOHCだったが、復刻版ではコスワース社製のYAC型2.0Lの直4 DOHC16バルブを搭載。45mm径のウエーバー製キャブレターを2連装し、190psと21.6kgmを発生した。
トランスアクスル式のトランスミッションは、当時のF3などにも使われていたノンシンクロの平歯ギア5速MTだ。
![画像: 1960年代のレーシングカーそのものといったコクピット。5速MTのシフトレバーは右側にある。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/03/27/e86e208d42f66d76dff0e4675e3422991d99c548_large.jpg#lz:xlarge)
1960年代のレーシングカーそのものといったコクピット。5速MTのシフトレバーは右側にある。
ロールケージに囲まれたコクピットは、固定式のバケットシートにウイランス製のフルハーネス、MOMO製の小径ステアリングの向こうにスミス製のメーターやルーカス製のタンブラースイッチが並ぶなど、まさにレーシングカーそのもの。だが、日本でも保安基準を満たしており、ナンバーを取得して公道を走行することは可能だった。
![画像: バケットシートは固定式。キャビン中央にはロールケージのバーが横切っている。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/03/27/00f04ae549bc4196e95005c9b925c548aa9471a0_large.jpg#lz:xlarge)
バケットシートは固定式。キャビン中央にはロールケージのバーが横切っている。
600kgを切る軽い車重に190psだから加速は鋭く、コーナリング速度は十分に速い。平歯ギアのミッションも切れ味良いシフトフィーリングだ。
エキゾーストノートは、コスワース一族のエンジンに共通な澄み切った小気味良い音色だ。リアクオーターウインドーのおかげで後方視界も悪くない。
とはいえ、エアコンは非装着だし、ラゲッジスペースもない。助手席はあるが居住性は悪い。やはりこのクルマは、まぎれもなくレーシングカーなのだった。
![画像: やはり、このクルマにはサーキットがよく似合う。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2019/03/27/b2fe11592f2c6b187f88cb2756dfe56dd81ca744_large.jpg#lz:xlarge)
やはり、このクルマにはサーキットがよく似合う。
ジネッタ G12コスワース(1989年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:3500×1550×1050mm
●ホイールベース:2286mm
●重量:580kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:190ps/6500rpm
●最大トルク:21.6kgm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前195/60R13、後205/60R13
※モーターマガジン社アーカイブからの懐かしく珍しいクルマの紹介は、今回でひとまず終了します。また機会をあらためて、アーカイブから秘蔵のクルマ?を探し出して紹介する予定です。