ディノの後継車として登場した「ピッコロ フェラーリ」
「FERRARI 308GTB/GTS:フェラーリ 308GTB/GTS」
ディノ246GTの後継車として1975年に誕生した308GTBは、ディノとの血のつながりを強調するかのように、エアインテークにつながるドアのえぐりや丸型2連テールライト、凹型に湾曲したリアウインドーなど、246GTのデザインエレメントを各所に受け継いでいた。
またエンジンルーム後方にラゲッジスペースが備わるのも246との共通点で、308にもカバーをファスナーで留めるラゲッジコンパートメントが設けられている。
ピニンファリーナがデザインしスカリエッティが製作する、いかにも空力の良さそうなボディはメディアにも大絶賛されたが、スタイルだけでなく、フロントリッド以外のボディパネルにFRPを使った最初の生産型フェラーリとなったことでも注目された。
生産性や品質の問題から76年には伝統のプレススチールとアルミに戻されたが、この後多くのモデルのエアロデバイスなどにFRPを採用するきっかけともなった。
ミッドシップに横置きされるエンジンはベルト駆動DOHC機構を備えるバンク角90度V8の2926㏄。これと一体で横置きにマウントされるトランスミッションアッセンブリーがエンジンオイルサンプ下後方に位置するのは、ディノ246GTと同じ手法で、気筒数こそ違うが308が246の進化形であることを裏付ける証でもあった。
欧州仕様は潤滑にドライサンプを採用し、8.8:1の圧縮比とVバンク中央にマウントされるウエーバー40DCNFツインチョークキャブレター4基により255psを発生。最高速度は252km/hを公称している。
この308GTBの派生車として1977年のフランクフルトショーで満を持してデビューしたのが、ここで紹介する、ピニンファリーナと共同開発した308GTSだ。
モデル名の“S”は本来スパイダーを意味する。フェラーリの場合は取り外しできるブラック塗装のFRP製ルーフパネルを持つタルガトップのことを指すのが、ディノ246GTS以来の慣例となっている。取り外したルーフパネルはシート背後に収納でき、手軽にオープンエアモータリングを満喫できたことから、多くのユーザーから好意的に迎えられた。
ルーフを切り取ったために低下した剛性を補完するため、シャシに補強材が組み込まれた結果、約20kgの重量増を招いたが、天井のない開放感と背後で奏でるフェラーリサウンドをじかに味わえるアドバンテージは、絶対性能で勝るGTBの魅力を上回った。
その結果308GTSは、1977~80年の生産期間中に、308GTBより約50%も多い3219台が製作されることになった。
1980年にインジェクション化されて308GTBi/GTSiとなるが、214psにパワーダウンしてしまう。そこで82年にはヘッドを4バルブ化した308GTB/GTS「クワトロバルボーレ」に進化する。ボッシュKジェトロニックとの組み合わせで240psを発生し、本来の走りを取り戻した。
フェラーリ 308GTB 主要諸元
●全長×全幅×全高:4230×1720×1120mm
●ホイールベース:2340mm
●重量:1090kg
●エンジン:V8 DOHC
●排気量:2926cc
●最高出力:255ps/7700rpm
●最大トルク:29.0kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きミッドシップRWD