ウェットコンディションでスタート順のハンデがなくなる
いつくかのツキに恵まれて、ヌーヴルが連勝を遂げた。ヌーヴルにとって、最初の、そして最大の幸運は本格的な戦いの始まるデイ2金曜日がウェットコンディションだったこと。通常、ドライのグラベル(未舗装路)ラリーでは、スタート順の早いドライバーほど砂利掻き役になるため不利となる。レギュレーションにより金曜日は前戦までの選手権ランキング順にスタートするため、首位のヌーヴルは大きなハンデを覚悟していた。しかし、ウェットコンディションとなったことで、スタート順のハンデは逆にアドバンテージ(後方スタートになるほど轍が深くなるなど、道が荒れるため)となり、マシンの好フィーリングもあってヌーヴルは好タイムを連発。
さらにはオイット・タナック(トヨタ)がトラブルに沈み、オジェがパワステを壊すアクシデントで遅れるなどのライバルの自滅もあって、土曜日までにセーフティリードを築くことになった。
最終日も無事に走りきり2連勝を達成したヌーヴルは、ポイントランキングでオジェに10ポイント差を築くことになった。またミケルセンが2位に入ったことで、ヒュンダイはコンストラクターズポイントでもシトロエンを12点リードしている。
速さを見せるものの波に乗り切れないトヨタ
トヨタはタナックがデイ1木曜日夜のSS1で首位発進、デイ2金曜日のSS2でもクリス・ミークがベストタイムを刻んだほか、SS4終了時には総合順位でミーク、タナック、ヤリ-マティ・ラトバラのオーダーで1-2-3を形成するなど好調にラリーを滑り出したが、デイ2金曜日の午後からトラブルが相次いだ。
SS7で再び首位に立ったタナックは、続くSS7でドライブシャフトトラブルに見舞われてスピンを喫するなどして3番手に後退。デイ3土曜日午前はロングステージで連続ベストを出すなどして首位ヌーヴルと一騎打ちの様相に持ち込んだが、午後に電圧低下でストップしてデイリタイア。デイ4日曜日に再スタートするも9位にとどまった。
ラリー序盤は好調だったミークも、土曜日にブレーキトラブルや2度にわたるパンク、さらにはロードブブック違反による10秒ペナルティなどで5番手まで脱落。最終日にスパートして3番手まで挽回したが、最終ステージで再びパンクを喫して4位に終わった。やはりパンクに見舞われて後退していたラトバラも最終日に5位まで挽回するのがやっとの状況で、3台揃って表彰台を逃してしまった。
ラリー全体では全17SS中最多の7SSでベストタイムをマークするなど相変わらず速さを見せているトヨタだが、それが結果に結びつかないラリーが続いている。
次戦はWRC初開催となるラリー・チリが5月19~21日に開催される。なお、ラリー・アルゼンティーナとラリー・チリは「リンクドラリー」と定義され、ワークスチームはラリー・アルゼンティーナで使ったシャシ、エンジン、サスペンションをそのままラリー・チリで使うことになる。
2019WRC第5戦ラリー・アルゼンティーナ 結果
1位 11 ティエリー・ヌーヴル (ヒュンダイ i20クーペ WRC) 3h20m54.0s
2位 89 アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ i20クーペ WRC) +48.4s
3位 1 セバスチャン・オジェ(シトロエン C3 WRC) +1m04.8s
4位 5 クリス・ミーク (トヨタ ヤリス WRC) +1m06.2s
5位 10 ヤリ-マティ・ラトバラ (トヨタ ヤリス WRC) +1m21.1s
6位 6 ダニ・ソルド (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +1m26.7s
7位 3 テーム・スニネン(フォード フィエスタ WRC) +4m57.3s
8位 8 オィット・タナック (トヨタ ヤリス WRC) +14m24.8s
9位 22 マッズ・オストベルグ(シトロエン C3 R5) +14m28.5s
10位 45 ペドロ・ヘレール (フォード・フィエスタ R5) +20m14.5s
2019WRCドライバーズランキング
1位 ティエリー・ヌーヴル(ヒュンダイ) 110
2位 セバスチャン・オジェ(シトロエン) 100
3位 オィット・タナック (トヨタ) 82
4位 クリス・ミーク (トヨタ) 54
5位 エルフィン・エバンス (Mスポーツ・フォード) 43
2019WRCマニュファクチャラーズランキング
1位 ヒュンダイ 157
2位 トヨタ 120
3位 シトロエン 117
4位 Mスポーツ フォード 78