2世代目のSUV、アルピナXD3
アルピナの1号車、B7ビターボをニコルレーシングジャパンが日本へ輸入したのは1979年のこと。それ以来、実に40年間に約5300台を日本市場へ導入、長きにわたりクルマ好きを魅了し、着実にファンを増やし、今やアルピナというブランドは、すっかり日本で認知されている。そんなアルピナにまた1台、新しいモデルが加わった。XD3である。
もともとアルピナ初のSUVとして初代XD3は、2015年に導入された。これはBMW X3(F25)ベースだが、今回は新型X3(G01)ベースのXD3がデビューしたというわけだ。
搭載するのは、3L直6ディーゼルツインターボエンジンで、それに8速AT“スウィッチトロニック”を組み合わせる。このアルピナの特徴となる高い精度のエンジンは、ドイツバイエルン州ブッフローエにあるアルピナの工場で完璧に組み立てられる。
最高出力は333ps、最大トルクは700Nmを発生し、コモンレール式高圧ダイレクトインジェクションシステムを採用、2基のターボチャージャーは、それぞれが低圧ステージ、高圧ステージに作動し、全域にわたりスムーズな吹け上がりを実現するのである。
駆動システムは、リア寄りとなるアルピナ独自のトルク配分をする4WDシステムを採用している。さらに前後の最適なトルク配分は、数ミリ秒内に行われトラクション性能が最大限に発揮されるようになるなど、走行性能を重視したセッティングである。
ひとつひとつの素材が吟味されて使われる
文句の付けようがないと言ってもいい足まわりには、スポーツサスペンションを採用、優れた動力性能を受け止める専用設計のブレーキシステムは、フロントに4ピストン固定キャリパーと395mm径のディスクブレーキ、リアにはフローティングキャリパーと370mmのディスクブレーキを採用する。エキゾーストシステムも専用チューニングされている。
乗り込むと製造番号を刻印したプロダクションプレート、赤い指針が使われるアルピナブルーのメーターパネル、スポーツステアリングホイールなどアルピナモデルであるという満足度は高い。
アルピナ車に乗ると感じるのだが、実に高級感がある。派手な装飾はないが、ひとつひとつの素材が吟味され贅が尽くされていることが感じられる室内は、なんとも居心地がいい。至福の空間だ。
走り出して感じるのは、すべての機関が饒舌だということ。エンジンの回転フィールは全域で滑らかで、これこそアルピナという印象だ。すべての部品ひとつひとつが完璧に仕事しているのが感じられる。こうしたことにこそアルピナの価値があると改めて思った。
アクセルペダルを踏み込めば、まるでスポーツカーに乗っているように背中を“グイッ”と押される感覚が味わえる。いや、これは正真正銘のスポーツカーなのだ。そしてスポーツカーでありながら快適であるのもアルピナの特徴だ。大きめの段差を乗り越えるときでさえ意識することもない。
さらにコーナーでのロールもしっかりと抑えられているのでとても運転しやすい。ハンドリングはアルピナそのものなのだが、とても気持ちよく曲がる。ドライバーのひとつひとつの操作がまるでクルマと直結しているようである。運転中は、SUVであることを意識することがなかった。もちろん高い視界以外だが。 SUVでサーキットを走りたいと思うクルマはなかなかないが、このパフォーマンスならサーキットに持ち込んでも十分に楽しめるかもしれない、と思ってしまった。そんなことを思うのもアルピナXD3だからこそだ。
ちなみにこの試乗車には、オプションの22インチアルピナクラシックホイール&タイヤセット、ステアリングホイールヒーティング、電動パノラマガラスサンルーフ、ドライビングアシストプラス、TVチューナー、ヘッドアップディスプレイ、harman/Kardonサラウンドサウンドシステムなどが装着され1246万8000円(車両価格の1094万円を含む)の総額となっている。“アルピナマジック”。まさにこのXD3は、その言葉に納得できるクルマであった。(文:千葉知充/写真:村西一海)
アルピナXD3主要諸元
●Engine 最高出力 245kW(333ps)/4000-4600rpm 最大トルク 700Nm/1750-2500rpm ●ディメンジョン&ウェイト:全長×全幅×全高 4720×1895×1675mm、ホイールベース 2865mm、トレッド前/後 1615/1630mm、車両重量 2090kg、ラゲッジルーム容量 550/1600L ●シャシ:駆動方式 4WD、ステアリング形式 ラック&ピニオン、サスペンション形式 前ストラット/後5リンク、ブレーキ 前Vディスク/後Vディスク、タイヤサイズ 285/40R20 ●価格:10,940,000円