初代フィット誕生の衝撃が再びコンパクトカー界を席巻する
2019年度のホンダ四輪車の国内新車販売計画は70万5000台とみられている。2018年度比でおよそ5000台の上積みだ。その計画達成の切り札となるのが、2019年夏に全面刷新されるN-WGNと10月に発表予定の新型フィット。なかでもフィットの全面改良車への期待は大きい。すでにその概要の説明を受けたという販売店関係者A氏に話をきいた。
「(N-WGNとフィット)どちらも売れそうで安心しました。ヤングファミリーに的を絞ったN-WGNも期待できますが、やはり新型フィットですね。2000年の暮れの内見会で初めてフィットを見て以来の衝撃。営業所にはっぱをかけてますよ!」と期待をあらわにした。どこがそんなに良かったのだろうか? A氏は「詳細は言えない」と断りつつ、期待感を隠さない。
「まずは国内市場をすごく大事にしていると感じました。あのクラスのクルマもいまや3ナンバーが当たり前になっている時代ですが、あえて5ナンバーサイズを守ってきたのがうれしいですね。それでいて、室内はさらに広くなっている。いや、よくできていましたよ」
ホリデーオート編集部の調べでも、次期フィットが5ナンバーサイズに収まることは確認されている。これは日本のみならず欧州仕様のJAZZでも変わらない。プラットフォームは伝統のセンタータンクレイアウトを踏襲するものの全面刷新され、大幅な軽量化と剛性アップを達成。さらに近い将来のフルEVのラインアップも視野に入れて設計されているという。ドライビングポジションの適正化や、各席の乗降性も向上している。
「年齢・性別を問わず、だれにでも使いやすいクルマになっています。デザインも親しみやすくて可愛らしいです。用途が限定されるクルマと違い、コンパクトカーでは大切な要件ですね。現行型だって決して性能や使い勝手は悪くないのですが、出だしで躓いてしまいましたからねぇ(苦笑)」
ユーザーフレンドリーな5ナンバーパッケージを踏襲
パッケージングに話をもどそう。5ナンバーサイズであることは間違いないようだが、デザインや縦横比などはどうなっているのだろう。欧州で撮影されたテスト車の写真では、やや背が高くなっているように見えたのだが……。
「寸法は言えませんが、キャビンはほんの少し背が高くなっているようですね。もっともデザインが巧みで、カプセルのような感じでした。外から見るだけで居住スペースの広さを感じさせる。ドアの開口面積が大きいから、お年寄りや小さなお子さん乗せる機会の多いお客さんにもオススメですね」
カプセルのようなデザイン…それは2018年秋に初めて目撃されたテストカーを見たときの編集部の第一印象だ。超ショートノーズで、大げさに言えばキャビンが走っているような感じ。ましてやテストカーはフィルムで偽装されているので、なおさらその感が強かった。実車はどうか?
「初代を彷彿とさせる、すっきりとしたものでしたね。面に張りがあると言うか、個人的にはキャラクターラインがバキバキに入った個性的な現行型よりも好みかな。ヘッドライトも丸みがあって、親しみやすい顔でしたね。奇をてらうのではなく、素の出来がいいいというか。車内の広さや乗り降りのしやすさ、一見オーソドオックスではあるけれど飽きのこないデザインなど、クルマとしての潜在能力が高い」
では気になるパワートレーンはどうか。燃費と動力性能はやはり需要である。ホリデーオートがすでに報告したとおり、1L 3気筒ターボと、1.5Lの2モーターハイブリッド(i-MMD)のふたつ。これで間違いはないのだろうか?
「1.5Lのハイブリッドを中心に説明を受けましたね。インサイトも1.5Lのi-MMDですが、モーターが違うようです。コンパクトカー用に設計し直したもので、小型・軽量化されていると言っていました。事前情報を聞いて価格アップを心配していたのですが、トヨタ アクアや日産 ノート(eパワーモデル?)に近く、しかも燃費はクラストップを狙うとのこと。ここ数年、ライバル車には煮え湯を飲まされて来ましたから、今度はこちらが攻撃を仕掛ける番です(笑)」
ちなみに 編集部が改めて調査したところ、欧州はハイブリッドのi-MMDに一本化、日本ではこれにパフォーマンスグレード(RSか?)用に1L 3気筒ターボ、量販グレード用に現行型に搭載される1.3L 4気筒NAの改良型を設定するようだ。
SUVスタイルを採り入れた新グレード追加に現場も期待大
さらに、次期フィットには隠し玉が存在するという。「SUVバージョンがあるようです。いまブームじゃないですか、やっぱりなぁという印象でしたね」。
SUVと言っても、大改造を施されたものではなく、外観やインテリアに若干のモディファイを加えたクロスオーバー風で、あくまで新型フィットのグレードのひとつになるという説明だったようだ。
「大径タイヤとルーフレールが標準装備となり、その結果全高が若干アップするようですね。足回りは変わらないと言ってましたが、当然、チューニングは違うでしょう。あと、フロントマスクも違うようです。専用デザインのグリル、ヘッドランプなど、SUVらしさを演出する細かい変更があるようですね。内装の仕立ても、よりアクティブなユーザーを意識して素材やカラ―、ステッチの入れ方なども変わるでしょう。あと、前後に樹脂製のオーバーフェンダーが付いて、このグレードのみ3ナンバーになるらしいですよ。若者がターゲットのようですが…」
最近、増殖傾向にある“SUV風味の派生モデル”。本格SUVでは少々荷が重いというユーザーも多い。もっと気軽に乗れて、都市部でも気兼ねなく楽しめるクルマのニーズは少なくないし今後も増えるだろう。事実、編集部は2020年発売の次期ヴィッツことヤリスにも「ヤリスクロス(商標出願済み)」が存在することを確認している。
「確か、オデッセイのアブソルートやステップワゴンのスパーダのように、フィット ◯◯◯◯のようなサブネームが付くと言っていました。うーん、何だったっけなぁ…(苦笑)」
インタビューは小一時間続いたが、取材中、A氏は新型フィットに寄せる期待で終始興奮した様子だった。彼をそこまで高揚させた新型フィット、販売店関係者ならずとも期待したくなるではないか。