2020年に100周年を迎えるマツダ。この節目の年に発表されるのでは…、と噂されている次世代ロータリーFRスポーツ、「RX-9」(仮称)だが、未だにその続報は届いてこない。しかし、RX-9情報では独走するホリデーオート編集部スクープ班は、新たに公開されたロータリーエンジンの特許情報をキャッチ! その内容を読み解き、RX-9の核心に迫る!
次世代ロータリーエンジンの開発は着実に進んでいる!
2019年5月9日、マツダは19年3月期決算発表にて24年度までの中期経営計画方針を公表した。その中の新世代商品群には「SKYACTIV-R」と次世代ロータリースポーツカーRX-9(仮称)の名がなかった。
巷では開発が止まってしまったのではないかとの噂もあるが、まったくそんなことはない。ホリデーオート2018年1月号のスクープ記事では、RX-9は「ニュルブルクリンクFR最速を目指す!」とお伝えしていたが、その実現に向けて開発作業は着実に進んでいる。
2016年公開の特許ではマツダ ロータリーエンジン(以下:RE)の歴史を覆す180度逆転レイアウトといったエポックメイキングな形状で世界に衝撃を与えた。さらに2017年公開特許ではターボ効率を上げたシングルターボに、排気エネルギーによる発電機を用いたハイブリッドモデルで高効率化を推し進めた。ご存知のとおり、燃費や環境性能の要求から電動化が進んでいくこれからの時代である。次世代REもその波には逆らえず、ハイブリッド化の道を選んだのか…。
しかし、2019年1月に公開されたRX-9用REの特許では、エンジン形状が「16X」(写真)のようなコンベンショナルでより現実味のあるレイアウトとなっていた。さらにハイブリッド技術の記載が消え、マツダ スカイアクティブテクノロジーらしく、内燃機関としての燃焼効率アップに重点が置かれていた。
下の構成図をパッと見てわかるのが、吸排気ポートの配置やその数だろう。吸気ポートが上部、排気ポートが下部という歴代REと同じレイアウトに戻った。そのサイドポートの配置も改められ、それまでは吸気・排気ポートともにサイドハウジング両側に設置されていたが、それが片側のみとなっている。こうすることでローター側面からポートに吹き抜けるガスをなくし、ローターに装着されるガスシールを減らすことができる。結果、抵抗が減ってフリクションロスを低減する。
吸気ポートは1ローターにつきプライマリーポート、セカンダリーポートの2ステージ、排気ポートはサイドポートにペリフェラルポートも加えた、いわゆるコンビネーションポートになっているのも大きなトピックだ。
エンジンの回転と負荷によって、セカンダリー吸気ポートとペリフェラル排気ポートを開閉することで、エンジン運転状況でもっとも吸入効率が高くなるように制御を行う。
このペリフェラル排気ポートから出た排出ガスは直接ターボを駆動するのではなく、ポンピングロス低減のためEGR(排気再循環)用として使用される。またローターに装着されるアペックスシールへのカーボン付着を減らす効果もあり、気密性を保持し、出力の安定性と耐久性アップにも一役買っている。
ターボチャージャーはREの特性とマッチングの良いツインスクロールシングルターボとなった。1ローターにつき1サイド排気ポートとしたことで、REの高い排気圧力をロスなく排気干渉させずに最短で導き、タービンブレードに当てる。そうすることでタービンの駆動力を高め、低速からターボ過給効率を上げ、ターボラグを少なくできる。REの苦手な低速トルクを太くし、レブリミットまでREらしいフラットなトルク特性も強調されるだろう。
排気ポートを下部にレイアウトしたことで、重量のあるターボチャージャーをできるだけ低くして重心を下げ、排気ポートの位置によってより車両中心に近づけて取り付けられるようになるため、RX-9のハンドリング性能に大きな恩恵を与えることになる。
内燃機関に対する規制も厳しくなり、時期を延ばせば延ばすほど発売が難しくなっていくだろう。マツダは、これから真の正念場を迎える。