タイヤのデグラデーションに苦しんでいたがそれでも勝てるはずだった
オーストリアGPのシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、決勝71周の69周めまではほぼ完璧だった。この週末、金曜日のフリー走行2回目、3回目でトップタイムをマークすると、その好調ぶりを予選でも見せつけ、予選Q2をソフトタイヤでトップ通過。予選Q3でもいきなりタイムを出して、最後のアタックで1分03秒003までタイムを縮め、メルセデス勢を突き離して見事にポールポジションを獲得した。
決勝はソフトタイヤでのスタートとなったが、これは計算どおり。メルセデスの2台とフェルスタッペンがミディアムタイヤでQ2をクリアしたが、フェラーリとしてはハードタイヤでのロングランも問題なく、それよりもソフトタイヤでスタートから一気にリードを広げようという作戦だった。
計算外だったのは、チームメイトのセバスチャン・ヴェッテルのマシンにトラブルが発生し、スタートグリッドが9番手と少し離れたくらいだった。
ポールポジションからスタートしたルクレールは、ホールショットを決め、ソフトタイヤのアドバンテージを生かして予定どおりメルセデスの2台を引き離していく。2番グリッドのフェルスタッペンが大きく出遅れたこともルクレールにとっては幸運だった。
21周めに2番手のバルテリ・ボッタスがタイヤ交換を済ませると、ルクレールもピットインしアンダーカットに対応、予定どおりユーズドのハードタイヤに交換してボッタスとのギャップをコントロールしながら順調に周回を重ねていく。
スタートで後退したフェルスタッペンがじわじわと追い上げていたが、まだ大きな問題となってはいなかった。
ところがヴェッテルがオーバーテイクされ、フェルスタッペンがボッタスのすぐ後ろに迫ると事態は風雲急を告げる。ファステストラップを更新する走りで、フェルスタッペンがボッタスをかわしてルクレールの背後に迫ってくる。
ルクレールにとってはユーズドのハードタイヤでトップの座を守り切る作戦で、それは可能なはずだった。しかし、フェルスタッペンとのペースの差は明らかで、68周めのターン3ではなんとか凌ぐことができたが、69周めの攻防でホイール同士が当たりアウトに押し出されると、もうどうしようもなかった。
バーレーンGPに続いて、またしても後わずかのところで初優勝を逃したルクレールのショックはよく理解できるが、ルクレールが大きく失速したわけでなく、この日のフェルスタッペンのパフォーマンスが驚異的だったというしかないだろう。
ルクレールは「全体的にポジティブな週末でしたが、私たちが望んだようには終わりませんでした。最初のスティントのペースはよく、ボッタスがタイヤ交換したのでアンダーカットを防ぐために早くピットインしました。 このため第2スティントが長くなリ、レース終盤、リアタイヤの劣化にかなり苦労しました。2位は我々が望んでいたものではありませんが、この週末我々は大きく進歩することができました」とコメントしている。