数々の日産カスタマイズカーを手掛けるオーテックジャパンが、1996年に創立10周年を記念してワンオフで製作したのが「オーテックA-10」。実際に市販はされなかったが、今も日産ファンに語り継がれる伝説の一台だ。
画像: Aピラーは一見するとラシーンのままのように見えるが、わざわざ3度立ててスクエアなスタイルを強調している。

Aピラーは一見するとラシーンのままのように見えるが、わざわざ3度立ててスクエアなスタイルを強調している。

四駆のラシーンを魔改造。FR化した10周年記念車

のっけから恐縮だが、このクルマは市販されなかった。1996年に、オーテックジャパン創立10周年を記念して社内有志の手によって製作された「世界に一台のコンプリートカー」である。ベースになったのは、ラシーン。B13系のFFサニーをベースに開発されたコンパクトなクロスオーバー・モデルで、こちらは1994年から2000年まで発売されていたので覚えている方も多いはずだ。

このラシーンをベースに、当時シルビアなどに搭載されていた2LのSR20DE型エンジンをタテ置きに搭載してFR化。1960年代の510型ブルーバードやC10型スカイラインをモチーフとして、内外装が大改造されている。

画像: ダッシュボードは本革バックスキン張り、インパネには本木目パネルを採用する。メッキで縁取られたメーター類は、中に刻まれる文字の書体をエーガー調に統一している。

ダッシュボードは本革バックスキン張り、インパネには本木目パネルを採用する。メッキで縁取られたメーター類は、中に刻まれる文字の書体をエーガー調に統一している。

ボディ外板はほとんどがオリジナルデザインのパネルに交換され、原型をとどめているのはリアドアのみ。新たに設けられたトランク部分も、当然ながら手加工で追加されている。クラシカルな雰囲気が濃厚に漂うが、それもそのはず。随所に本物の古いパーツを使っている。

たとえば、三角窓は古いダットラ用、ミラーはクラシックMINIのもの、そしてフロントバンパーは当時すでに貴重品だったSR311型フェアレディのものを加工して装着した。インテリアも、わざわざ古いベンツの機械式メーターを探し出して埋め込んだり、ワンオフの本木目パネルを製作したりと、随所にこだわりの逸品が配されている。

画像: 縦置きされたSR20DEは圧縮比アップ、カムプロフィールの変更、スロットルチャンバー多連化、コレクタ容量アップ、ピストン軽量化…吸排気系も含めてメカチューンの定番メニューが施された。2011年に修復された際に170psから180psにパワーアップしている。

縦置きされたSR20DEは圧縮比アップ、カムプロフィールの変更、スロットルチャンバー多連化、コレクタ容量アップ、ピストン軽量化…吸排気系も含めてメカチューンの定番メニューが施された。2011年に修復された際に170psから180psにパワーアップしている。

圧巻は、やはり前述のとおり、SR20DE型エンジンをタテ置きに搭載してしまったところだろう。S14シルビア用をチューニングして170psに、ミッション、フロントの足回りもS14シルビア用を移植している。もともとFF横置きのラシーンに移植するにあたり、エンジンベイはまるっきり作り替えられている。

発案から完成までわずか6カ月。のべ30人のスタッフが携わって作り上げた。かかった費用はおよそ2000万円だとか。いまや稀少なコンパクトFRセダン。20年以上を経た現在でも、動態保存されてオーテックのイベントに登場している。

画像: ラシーンのオリジナルをパネルはリアドアしか残っていない。ウインドーガラスも合わせガラスで新たに製作された。

ラシーンのオリジナルをパネルはリアドアしか残っていない。ウインドーガラスも合わせガラスで新たに製作された。

あの限定車は凄かったのバックナンバー

オーテックA-10(2011年修復車) 主要諸元

●ボディサイズ:全長4450×全幅1695×全高1430mm
●車両重量:1350kg
●乗車定員:5名
●エンジン型式・形式:SR20DE改・直4 DOHC
●エンジン総排気量:1998cc
●エンジン最高出力:180ps/7200rpm
●エンジン最大トルク:20.0kgm/4400rpm
●駆動方式:FR
●サスペンション形式:前ストラット・後パラレルリンク
●ブレーキ形式:前後Vディスク
●タイヤサイズ:前・後195/65R14

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