最強のケンメリは排出ガス規制でわずか197台の短命に
日産 スカイラインHT 2000GT-R:昭和48年(1973年)1月発売
初代スカイライン2000GT-Rは、黎明期の国内モータースポーツで勇名を馳せた2000GT-Bの後継モデルとして昭和44年(1969年)2月に発表された。
発売されるやサーキットに姿を現わし、GT-B以上の常勝マシンになっている。翌1970年秋にはホイールベースを詰めたHT2000GT-Rにバトンタッチされ、一段とポテンシャルをアップした。
1972年9月、スカイラインはフルモデルチェンジを行い、GTとしては3代目にあたるGC110型が登場する。このモデルは“ケンとメリーのスカイライン”と呼ばれ、当初はL型エンジン搭載車のみだった。
スカイラインのイメージリーダーカーであるGT-Rが新しい衣を被って復活するのは、2000GTの発売から4カ月後のことだ。
型式名KPGC110を与えられた2代目GT-Rは、2ドアHT(ハードトップ)をベースに作られた。全体のシルエットは2000GTと変わっていないが、ブラックアウトされた精悍なフロントマスクを採用し、4輪にビス止めのオーバーフェンダーを配している。
また、リアエンドには高速域の安定性を高めるためにスポイラーが装備された。当然、ボディサイドに付けられたのは栄光の赤バッジだ。
インテリアも2000GTをベースに、GT-Rのためだけのスパイスを加えたものとなった。ダッシュボードはアルミパネルに変更され、その中にフルスケール240km/h表示のスピードメーターと、10000rpmまで刻んだタコメーターを組み込んだ。シートもサポート性の良い本格的なフルバケットシートを標準装備している。
エンジンは初代GT-R同様に、サーキットで鍛え抜かれたS20型直列6気筒DOHC24バルブを積む。これを12度傾斜させてボンネットに収めているが、初代とはエキゾーストマニホールドやエアインテークの形状などがわずかに変更されている。
ボア82.0×ストローク62.8mmのオーバースクエアで、排気量は1989ccだ。アルミ合金製のヘッドや多球形燃焼室、サイドボルト式のシリンダーブロック、フルトランジスタ・イグナイター、チェーンによるカムシャフト駆動など、基本的な仕様に変わりはない。
仕様は2種あり、プレミアムガソリン仕様は9.5の圧縮比で最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpmを発生。圧縮比を9.0に落としたレギュラーガソリン仕様は155ps/7000rpm、17.6kgm/5600rpmの性能だ。キャブレターは、ソレックス40PHHを3連装する。
トランスミッションは、ブルーバードSSS以来、日産の伝統となっているポルシェタイプ・フルシンクロの5速MTだ。2代目GT-Rではストリートユースを考慮してギア比が高められ、扱いやすさを増している。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット/コイル、リアがセミトレーリングアーム/コイルを踏襲した。リアにスタビライザーを追加し、リミテッドスリップデフも組み込まれている。
ちなみにホイールベースは40mm延長され、2610mmとなった。ブレーキは、フロント/リアともディスクだ。
初代GT-Rはサーキットを席巻するために開発された。だが、2代目GT-Rは最速のストリートバージョンたることをめざして設計されている。
そのため車重は1145kgと重くなっているし、ガソリンタンク容量も2000GTと同じ55Lにとどめられた。ギア比もしかりで、ハイギアード化されている。
マニアの注目を集めた2代目GT-Rは、劇的な幕切れで、その短い生涯を終えた。排出ガス対策を理由に、発売から4カ月にして生産が打ち切られたのである。その間に生産されたのは、市販車195台、試作車2台の197台のみだ。
この生産台数は当時のフェラーリやポルシェといったスポーツカーより、はるかに少ない。まさに幻のGT-Rであり、サーキットに足を踏み入れることなく去っていった、悲劇のスパルタンGTと言えるだろう。
スカイラインHT 2000GT-R 主要諸元
●全長×全幅×全高:4460×1695×1380mm
●ホイールベース:2610mm
●重量:1145kg
●エンジン型式・種類:S20型・直6 DOHC
●排気量:1989cc
●最高出力:160ps/7000rpm(155/7000)
●最大トルク:18.0kgm/5600rpm(17.6/5600)
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175HR14
●価格:162万円
※カッコ内はレギュラー仕様