NCAPと自動運転をテーマに世界のキーマンたちが語る
NCAP(New Car Assessment Programme:新車アセスメント プログラム)とは、自動車の安全性を衝突実験やシミュレーションなどにより検証し、その結果を公表することでユーザーはクルマを購入するときの安全性の指標とし、メーカーはより安全な自動車の開発を目指すという目的で生まれた消費者団体だ。
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インド製のクルマも数年前から安全装備は急速に進んでいると語る、グローバルNCAPとラテンNCAP事務局長のA.フラス氏。
1979年にアメリカで始まり、ヨーロッパ(ユーロNCAP)や日本(JNCAP)をはじめ、現在では各国にNCAPがあるが、今回のフォーラムはユーロNCAPによって行われている。
ユーロNCAPの主要メンバーたちが来日し、日本メーカーの技術者に向けてユーロNCAPや各国のNCAPの現状や今後の展開などを語ってくれるものだが、2019年で第6回目を迎えた。
ユーロNCAPが車両をテストし、その評価を発表してきたことで、クルマの安全基準は日進月歩で進化してきた。
現在、安全評価の基準(レーティングシステム)は、大人の乗員保護、子どもの乗員保護、歩行者保護、そして安全運転支援システムの4点でテストを行っている。
そして安全装備が進化して標準装備が増えることなどで、レーティングシステムの配点比率や項目は変わっていくことになる。例えば、シートベルトリマインダーなどは今やほとんどのクルマが標準で装備しており、新たなレーティングシステムでは加点の対象にはならないだろうと言われている。
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ユーロNCAPの現状と将来を詳しく語る、ユーロNCAP レーティングチーフのA.ジーク氏。
現在は「ロードマップ 2020」という名称でレーティングシステムを定めているが、次の段階として「ロードマップ 2025」を定めつつある。もっとも、2025年までの目標を現段階で決めてしまうのではなく、まずは2021年くらいまでのレーティングシステムを決め、あらためて2023年以降のものを考えていくという。
これは、安全運転支援システムなどの進化・実用化の様子を見ながら決めていくということだろう。
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サイドクラッシュでは、乗員同士の衝突による被害なども考慮しなければならない。
例えば、オフセット衝突実験では、現在では衝突させるバリアは固定式だが、次の段階では動く(対象車に向かってくる)ものに変える予定だ。サイドインパクトテストも速度を変更するとか、ファーサイド(運転席側から衝突した場合の助手席側)への影響も測るとか、乗員保護のアイテムとして救護のためのシステムが備わっているかなど、予定されている変更点はここでは書き切れないほど多岐に渡る。
また、トラックなどの大型車両やオートバイなども、将来的にはテストしてレーティングシステムを作っていきたいとも考えている。
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交差点での歩行者保護も、クルマと同一方向に歩いている保護者との対応も重視していく必要がある。
そしてユーロNCAPは今やヨーロッパだけのものではなく、インドや南アフリカなど、ヨーロッパにクルマを輸出している国のメーカーも、このレーティングシステムで高得点(多くの星)を獲得するために技術を開発している。もちろん、日本のメーカーも例外ではない。
今回のフォーラムでは、中国やラテンアメリカ、そしてASEAN諸国のNCAP事情や今後の展開なども発表された。
また、自動運転についても話し合われたが、自動運転装置については今までのユーロNCAPの安全運転支援装置などどは異なるレーティングシステムで考えなければならず、今後の課題となっていくだろう。
パネルディスカッションも行われ、まさに今回も「東京から世界のクルマの行方を占う」フォーラムとなっていた。