排出ガス規制に揉まれながらも生き残った2T-G
トヨタ スプリンタークーペ 1600トレノGT:昭和49年(1974年)4月発売
世界のベストセラーカーであるカローラ(KE/TE30系)& スプリンター(KE/TE40系)がベールを脱いだのは、昭和49年(1974年)4月。奇しくも同時期、ドイツでは後のライバルとなるフォルクスワーゲン ゴルフが発表されている。
ボディタイプは多彩で、カローラは2ドアと4ドアのセダン、そしてスタイリッシュな2ドアHT(ハードトップ)を設定。一方、スプリンターは4ドアセダンと2ドアのクーペを設定している。
この3代目では、カローラとスプリンターの差別化が一段と明確になり、まったく異なるボディが与えられていた。
ホッテストバージョンのレビンとトレノも、まったく異なるシルエットに生まれ変わった。カローラの2ドアHTをベースにした、軽快なフィーリングをセールスポイントにするレビンに対し、トレノはロングノーズ&ファストバックのスペシャリティカー的な雰囲気を狙ったクーペボディで、ヘッドライトを後退させてロングノーズを強調するなど、若さがほとばしるルックスとなっている。
型式名はOHVを含め、カローラの1.6L搭載車がT37、スプリンターの1.6L搭載車がTE47で、2T-Gを積むレビンはTE37MQRG、トレノはTE47MQRG(GTはMQZG)となる。
インテリアも先代モデルより格段にグレードアップされた。レビンは8連メーターを独立させたゴージャスなT型ダッシュボードを採用している。
一方、トレノはメーターパネルとセンターコンソールを一体化した逆L型コンソールというスポーティなコクピットとした。とくにトレノGTはセンタークラスターをドライバー側に振るなど、デザイン的にも新しい試みを取り入れて注目されている。
ステアリングはどちらもウレタン製4本スポークで、ベンチレーションもセンターベンチレーションとなり、快適性も向上させた。
エンジンは先代モデルと同じ1588㏄の2T-G型DOHCで、2種類のチューンがある。プレミアムガソリン仕様は最高出力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpmを発生。レギュラーガソリン仕様の最高出力は110ps/6000rpm、最大トルクは14.0kgm/4800rpmと、わずかにパワーダウンされている。
キャブレターは例によってソレックス40PHHキャブを2連装する。トランスミッションは5速MTのみで、3速ATの設定はない。
サスペンションは、フロントがストラット/コイル、リアがリーフスプリングによるリジッドアクスルを踏襲した。タイヤは175/70HR13のラジアルを履く。
このレビン/トレノGTは、排出ガス規制の荒波に揉まれて、1975年11月に惜しまれつつ姿を消してゆく。だが、それから14カ月後にレビン/トレノの名を冠したFRライトウエイトスポーツが復活する。
1977年1月、トヨタはカローラ/スプリンターのマイナーチェンジを行ったが、この時に再びカタログに加えられたのである。
このマイナーチェンジを機に、レビンにはスプリンター トレノをベースにしたクーペボディが与えられ、従来のHTは廃止された。これは1976年1月に登場したカローラLB(リフトバック)のフロントマスクを、スプリンタークーペのボディに組み合わせたものだ。
また、ベーシック仕様とGTの2モデル構成となり、カローラLBにもスポーツワゴンのカローラLB1600GT(スプリンターも同様)が設定された。
搭載されたエンジンは51年規制をクリアするため燃料供給方式を電子制御燃料噴射のEFIにした2T-GEU型DOHCだ。排出ガス規制対策を施しながら、かつての2T-GR型(2T-G型のレギュラー仕様)並みの性能を実現している。
最高出力は110ps/6000rpm、最大トルクは14.5kgm/4800rpmを発生し、0→400m加速も16.5秒を可能にした。これは当時の2Lモデルを上回る実力だ。
排出ガス規制とオイルショックによる影響で、走る楽しみが乏しかった時期、当時の若者に夢を与えてくれたのが、EFIで復活したカローラ レビン&スプリンター トレノだったと言っていいだろう。
スプリンタークーペ 1600トレノGT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4070×1600×1300mm
●ホイールベース:2370mm
●重量:935kg
●エンジン型式・種類:2T-G型<2T-GR>・直4 DOHC
●排気量:1588cc
●最高出力:115ps/6400rpm<110/6000>
●最大トルク:14.2kgm/5200rpm<14.0/4800>
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70HR13
●価格:108万1000円
※< >内はレギュラー仕様