日本のスーパーカーブーム、その3強といえばフェラーリ、ランボルギーニ、そしてマセラティ。中でもマセラティは戦前から続くスポーツカーの名門と言うこともあり、ライバルに比べやや落ち着いた印象が強かった。そんなマセラティが初めて手掛けたミッドシップ2シーターが「ボーラ(BORA)」だった。(タイトル写真は後期型)

スーパーカー市場に進出した名門のプライド

画像: 優雅で気品を感じさせるデザインは、ジウジアーロが手掛けた。(写真は後期型)

優雅で気品を感じさせるデザインは、ジウジアーロが手掛けた。(写真は後期型)

1919年創業という歴史を誇る名門が初めて製作して、1971年に市販開始したミッドシップカーがボーラだ。その設計はさすがに実績のある一流メーカーだけあり、時流に即した新しい方式を随所に採り入れながらも、手堅くまとめられていた。

基本はモノコックにサブフレームを組み合わせ、その上にエンジン、駆動系などを載せている。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンである。エンジンはギブリ用に開発された総アルミ製V8ユニットをオーソドックスに縦置きしており、当初は310psを発生する4.7Lから始め、のちに北米仕様には4.9Lが加わった。あえてピークパワーを狙わず、フレキシブルなトルク特性を重視したあたりに名門の見識を感じる。

手堅さはそのパッケージングにも表れている。車体は同時代のライバルたちに比べてやや大きく重く、ホイールベースも長めの2600mmだった。もっとも、そのぶん乗員スペースには余裕があり、フロントボンネットの下には大きめの荷室も確保された。

画像: カーペットで覆われたエンジンルームなど遮音性にも配慮されていた。

カーペットで覆われたエンジンルームなど遮音性にも配慮されていた。

エンジン上方はカーペットで覆われたたうえにキャビンとガラスで隔たれ、ミッドシップカーでありながら騒音が低く抑えられていたのもマセラティの面目躍如といったところか。

どことなく威厳を感じさせる雰囲気をとくに印象付けるのが、そのスタイリングだ。イタルデザインを立ち上げて間もないジョルジェット・ジウジアーロが担当した。新進気鋭のジウジアーロは、まだ若かったにもかかわらずすでに多くのスーパーカーの試作車や市販車を手掛けており、それらは切れ味鋭い前衛的なデザインが多かった。

しかし、ボーラでは伝統を前面に押し出した厳かとも言える落ち着いたデザインを行い、大人のスーパーカーを生み出した。もちろん、スーパーカーにお約束の、地を這うようなファストバックボディのシルエットではあったが、あくまで破綻のないバランスの取れたプロポーションが見せ所だったと言える。

画像: 左側のメーターが8000rpmスケールの回転計。右側が300km/hスケールの速度計。中央には油圧計がセットされていた。(写真は後期型)

左側のメーターが8000rpmスケールの回転計。右側が300km/hスケールの速度計。中央には油圧計がセットされていた。(写真は後期型)

戦後のマセラティはセレブリティ御用達であり、ボーラもその顧客実績を活かして最大市場である北米のセレブ市場に向けて輸出されていた。しかし、マセラティ本体の経営状態が悪化し、1978年で生産を終了した。累計生産台数は530台前後と言われている。

スーパーカー図鑑のバックナンバー

マセラティ ボーラ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4335×1768×1134mm
●ホイールベース:2600mm
●重量:1400kg
●エンジン:90度V8 DOHC
●排気量:4719cc
●最高出力:310ps/6000rpm
●最大トルク:47.0kgm/4200rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD

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