広々とした室内と荷室が開発の最重要点
すでにコンパクトクロスオーバーとしてCX-3を用意するマツダが、新たにCX-30を投入した背景には、激戦のこの市場でコアとなるヤングファミリー層にCX-3では訴求しきれていないという現状があった。そこで重視したのは、まず空間設計。大人4人が快適に過ごせる室内空間と海外の大型ベビーカーまで容易に積み込める広い荷室を備えることが、何より最優先とされた。
その上でサイズは、まず全長が4395mmとマツダ3よりコンパクトに。全幅も海外勢よりもナローな1795mmに抑えられ、全高は立体駐車場をカバーできる1540mmに設定。日本でも扱いやすいと評せる大きさである。
それでもデザインを疎かにしないのが最近のマツダ車。下回りとフェンダーアーチを覆うクラッディングパネルが印象的だ。室内高を犠牲にしないようルーフを後方まで引き伸ばしつつ流麗なフォルムに見せるなど、単に美しいだけでなく、それが機能性と高次元で両立しているのが良い。内装もすっきりとまとめられていて、高いクオリティと相まって、居心地の良い空間に仕立てられている。
レベルの高さを感じさせる走行性能
今冬という日本導入に先駆けてドイツで試したCX-30は、まず爽快なフットワークで魅了した。操舵に対して穏やかに、けれど正確に反応して、舵角を足すことも戻すことも求めないハンドリング、そして同様にドライバーの意思を正確に汲み取るアクセル&ブレーキペダルのおかげで、クルマとの強い一体感に浸りながら、自分に合った良いリズムで走らせることができるのだ。マツダ3でも感じたが、新世代のマツダの走り、レベルはきわめて高い。
欧州仕様の2Lガソリン+マイルドハイブリッド、1.8Lディーゼルターボの2種類のパワートレーンは、前者は力感が全体的にイマイチ、後者はトルク感はいいけれど回転フィーリングはやや雑味ありという具合で、そこまで印象は強くない。しかし室内は静粛性が思わず目を見開くほどに高く、快適に過ごすことができた。
パッケージ、デザイン、走りとすべてに一貫性があり、完成度が高く、個性も艶も備える。激戦区で存在感を放つ1台になりそうなニューカマーの登場である。(文:島下泰久)