ワールドデビューの舞台は中国とカナダとドイツ
電気自動車(BEV)というと、国産車ではコンパクトカーの日産リーフや三菱i-MiEVがすぐに思い浮かぶ。輸入車では、テスラ モデルS、SUVのジャガーIペイス、フォルクスワーゲンeゴルフやBMW i3、発表されたばかりでまだ走っていないメルセデスEQC、あたりだろうか。しかしポルシェ タイカンは、そのどれにも似ていない。
誰もが認めるスポーツカーブランドのポルシェ。当然、退屈なBEVは作らない。そしてタイカンも、“エレクトリックスポーツカー”だと、堂々と宣言しているのだ。ポルシェは、やはりBEVを作らせてもスポーツカーメーカーなのである。
歴史と伝統のあるスポーツカーのポルシェ911を作っているメーカーであり、カイエンやマカンといったSUVであっても“スポーツカーである”と謳い、それに相応しいパフォーマンスを見せてくれるのはポルシェの特徴だ。つまりタイカンは、電気自動車でもそれを実現する言っているわけだ。
私は、このタイカンの、中国 福州で9月4日に行われたワールドプレミアを取材した。そしてこのワールドプレミアは同時に、欧州はドイツ ベルリン、北米はカナダのナイヤガラの滝でも行われたのである。では、どうしてこの3カ所をポルシェは、タイカンの世界初公開の場所に選んだのか。
BEVを走らせるには再生可能エネルギーが相応しい
そんな疑問をワールドプレミア前にポルシェAGの研究開発担当役員であるミハエル・シュタイナー氏に聞くと「BEVは再生可能なエネルギーで走らせるのに相応しい。そうした自然エネルギーを象徴する、中国 福建省 福州市から約150km離れたピンタン島のウインドファーム(風力)、ドイツ ベルリン近郊ノイハルデンベルグのソーラーファーム(太陽光)、そして北米ニューヨーク州とカナダのオンタリオ州国境にあるナイヤガラの滝(水力)を選びました」と答えてくれた。納得である。
さて今回発表されたのは、タイカン ターボSとタイカン ターボの2台だ。前者は最高出力761ps、後者は680psを発生する。そして0→100km/hは、前者が2.8秒、後者は3.2秒で、最高速度は両モデルとも260km/hだ。そして航続距離は、ターボSが最大412km、ターボが最大450km(いずれもWLTPモード)と公表されている。
またタイカンは市販車として初めて800Vのシステム電圧を備えている。これにより高出力充電ネットワークを使えば、わずか5分で約100kmの航続距離が可能になるのだという。これは100km走れる燃料を給油する時間よりも短いかもしれない。
エンジンもターボチャージャーもないけど「タイカン ターボ」
ところでタイカンは、2基の高出力電気モーターがフロントとリアに1基ずつ搭載された四輪駆動モデルである。エンジンも積んでいないのになんで「ターボ」や「ターボS」というモデル名なのか、ということも聞いたが、それは「ターボは、ポルシェにとってハイパフォーマンスモデルの証として付けるグレードなのです」とのことだった。その証拠に、タイカンはニュルブルクリンクの北コースを7分42秒で走っている。
実は、今回のワールドプレミアに先立ち、私は、そのすべてを知るため「タイカン テクニカルワークショップ」も取材している。その詳細についてもそのうちレポートしていく予定だが、タイカンのことを知れば知るほど、“これは正真正銘、ポルシェのスポーツカーである”と強く感じられたのだ。
ちなみにこのタイカン、欧州での価格はすでに発表されていてタイカン ターボSが18万5486ユーロ、タイカン ターボが15万2136ユーロである。(文と写真: Motor Magazine編集部 千葉知充)